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■収益用不動産の評価 〜その論理と実際 奥田 かつ枝 緒方不動産鑑定事務所 不動産鑑定士 小川 兵衛 財団法人日本不動産研究所 調査企画部証券化室 不動産鑑定士 |
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【奥田かつ枝】 「新ビジネス起業のための視点」 <収益還元法の基本的な考え方> 収益用不動産の評価方法には、収益還元法、原価法、取引事例比較法の3手法があるが、ここでは収益還元法に絞って説明する。 収益還元法とは「対象不動産が将来生み出すであろうと期待される収益の総和としての収益価格を求める手法」であり、具体的には、収益を適切な利回り(割引率)で割り戻すことにより、現在価値の総和を求める。 収益還元法には直接還元法とDCF法等がある。直接還元法は期間中の収益(インカムゲイン)を還元利回り(R)で割り戻したものであり、DCF法はインカムゲインとキャピタルゲインを割引率(r)で割り戻して現在価値を求める。 なお、手法と考え方の違いからRとrは必ずしも一致しない。対象不動産の価格上昇が予測される場合はr>R、下落すると予測される場合はr<Rに設定されるのが一般的だ。 ■直接還元法と還元利回り 直接還元法とは、対象不動産の年間収益を還元利回り(キャップレート)で還元する手法で、収益価格を次の基本式で求める。 ![]() 還元利回りは下記の方法等で求める。 ・ 取引事例からの査定 ・ 借入金・自己資本投資一団法 ・ DSCRの活用による方法 ・ 割引率から求める方法 還元利回りを取引事例や市場資料を分析して求める場合、市場資料を十分に収集することが重要である。当たり前のことと思われるかもしれないが、現実には大変難しい。 また、直接還元法は将来の収益や元本の変動予測を織り込むことが難しいので、これらの予測が重視される不動産の査定はDCF法との併用が望ましい。なお、借入金・自己資本投資一団法やDSCRを使う方法は、個別の物件の投資採算価格を求める場合に適している。 ■DCF法と割引率 DCF法とは「対象不動産の各期の収益を、割引率によって割り引くことにより収益価格を求める方法」で、直接還元法よりきめ細かい分析ができる。「割引」とは、現在の収益より将来の収益のほうが不確実であることに着目し、不確実性を反映させて将来収益を現在価値に変換することを指す。 また、割引率とは資本投下する者にとっての投資利回りであり、投下資本に対して不動産投資から得られるすべての収益(インカムゲイン+キャピタルゲイン)の割合を表す。割引率は収益率 (Y)、金利、リスクレート、IRRと表されることもある。たとえば、安定的な投資商品の収益率に不動産のリスクプレミアムとインフレ率を加えて求めることもできる。リスクプレミアムとは将来の収益および元本の変動リスクや非流動性、管理の困難性などだが、日本では取引事例データが少なく、その計量化は研究途中である。 DCF法では収益価格Vは次の式で求められる。式の中の復帰価格とは転売価格から売却費用を引いたもので、転売を想定しない場合は復帰価格と転売価格(元本価格)は一致する。 ![]() 転売価格は保有期間満了後、翌年の純収益を転売時還元利回りで除して求める。転売時還元利回りとは価格時点の還元利回りにリスクプレミアム等を加えたものである。割引率を設定する場合、市場価格を査定するなら取引事例を分析し、市場から得られる割引率を中心として決定するが、個別条件価格の査定は個別投資家の条件に適った収益率を割引率として採用する。 DCF法は、保有期間中の各期の収支予測を行うことから、直接還元法に比べて精度の高い収益価格を求めることができる。また、不動産投資から得られるすべての収益と投資額との分析を行うため、投資家が期待するリターンが把握しやすい。ただし、将来収支の予測や割引率の査定いかんによっては、逆に信頼度を低下させることもあり得る。こうした特徴から、保有期間中の収支予測の精度や割引率の設定が収益価格の精度に多大な影響を与えるため、収支予測の作成と説明が重要な意味を持つ。 駆け足で収益還元法の基本をご説明したが、応用手法などについては資料を参照してほしい。なお、日本ではデータが少ないため、こうした手法が必ずしも有効でないという意見もあるが、他の金融商品と比較するうえでこのようなアプローチは不可欠である。不動産証券化の普及などによって様々なデータが収集されてくれば、実用に堪えうるものになると期待している。 【小川兵衛】 <事例研究/ホテルの価格査定> 奥田氏が収益還元法に対する理論を講義されたので、私は事例を基に実践的な立場からお話ししたい。事業用不動産の評価はすでに収益還元法が主流となっている。不動産の価値を見極めるポイントと、それを価格に置き換える実務上の手法を簡単に説明しよう。 ここではケーススタディとしてホテルを取り上げた。ホテルは単体で収支が完結しているので、工場などに比べれば売り上げと経費が把握しやすいが、一方で各種データから賃料相場が推定しやすいオフィスビルや賃貸住宅に比べると個別性が強い。直接還元法とDCF法にはそれぞれ長所と短所があるので、両者を併用して収益価格を査定する。 ■直接還元法で査定する 直接還元法は、対象ホテルを新たに賃貸すると想定した場合の賃貸総収益から、必要な経費を控除して償却前純収益を求め、総合還元利回りで還元して収益価格を査定する。この場合、収益構造の分析がポイントになる。 賃貸総収益はホテル事業収支を分析して査定した収益賃料と、他のホテルの賃貸事例に基づく比準賃料を比較考量して査定した。収益賃料は評価対象となるホテルの売上高と営業費用を把握し、売上高から不動産関連経費を除く営業費用を控除して金利償却前利益(GOP)を求めたうえで収益賃料(GOPのうち不動産に帰属する部分)の査定を行う。一連の作業は部門別に売り上げと経費を細かく分析することで精度が増す。 一方、比準賃料は近隣または同一需給圏内の類似地域における新規賃貸事例の実質賃料を補修正して対象ホテルの試算賃料を求める。ここでは3つの事例から対象ホテルの賃料を試算した。 問題は総合還元利回りの査定である。総合還元利回りをどう設定するかで結果は大きく変わる。事例はホテルという特殊用途なので、一般の取引市場から標準的な取引利回りを把握することは困難であり、類似の取引利回りを基礎に対象不動産の個別性を考慮して設定した。 具体的には一般的な不動産利回りの上限と下限を押さえ、そこからホテル事業の特性を考量する。さらに対象ホテルの競争力や経営状態、将来の賃料動向を総合的に勘案して総合還元利回りを7%と査定した。 ■DCF法で査定する DCF法による価格査定手順は上にフロー図を示した。対象ホテルの保有・運用期間は10年と設定。売上高を左右する景気動向や売上高の変動率、営業費用の変動率を求め、割引率で価格時点に割り戻している。 割引率は直接還元法における総合還元利回りと同様のアプローチで把握するが、総合還元利回りとの違いは、割引率が特定の時点に発生する純収益を価格時点に割り戻す利回りであることだ。したがって、継続的な成長が見込める場合には、割引率は総合還元利回りに対して成長率相当分だけ高く査定される。このケースでは将来性などを考慮して割引率を7.5%と査定した。 不動産の評価方法にはそれぞれ一長一短があり限界はあるが、数多くの指標を参考にしつつ、対象不動産の売り上げ構造や経費構造を丹念に見極める作業を積み上げることによって概ね的確な収益価格を求めることができる。 不動産投資コース
テーマ/「収益用不動産の評価」 |