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■スキームを自動化させる検討を 不動産証券化の会計と法務 |
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不動産証券化は新しい事業形態であるために、現行の税制では判断しきれないグレーゾーンが多々あることが幾度となく指摘されている。今回は、国内での債権流動化スキームの作成に携わってきた公認会計士の杉本氏に、流動化スキームをどのようにチェックするかを詳細に解説していただいた。その中で杉本氏は、スキームの開始から終了まで、自動化された精密機械のようにスキームが稼働することが極めて重要である、と強調した。
●手始めはプレーヤーの決定 不動産証券化など債権の流動化スキームをチェックする手始めは、プレイヤーの決定と「なにを流動化するか」だ。流動化したい資産がすでにある場合が大半だが、TOB(公開買い付け)のように資金を集めた後で資産を購入するパターンもある。 プレーヤーについては、オリジネーターの他に、投資銀行(Underwriter)や、私募や縁故募集の場合にはインベスターが必要だ。縁故募集でないとしてもインベスターのマーケティングは重要である。どれくらいの資金が調達できそうか、どんな証券であれば受けそうかを考えなければならない。 次に最終発行証券の種類を考える。エクイティ型かデット型かハイブリッド型か、格付けがあるほうがいいのか、なくてもいいのか、海外の投資家を対象にするのか、などを煮詰める。 最終発行証券の種類が決まれば、SPE(Special Purpose Entity/特別目的事業体)も特定される。任意組合であったり、匿名組合であったりする。信託の受益権の場合は証券になるケースとならないケースがあり、ケースバイケースで使い分ける。 国内のSPEをSPCとして法人型にした場合、業法規制の対象になる。生の不動産をケイマンSPCに売却した場合は、不動産の売買を反復継続して不特定多数に行うなら宅建業免許を取得しなければならない。金銭債権を不特定多数に繰り返して貸し出せば、貸金業法の免許を取らなければいけないかもしれない。ケイマンSPCでも、東京支店で取り扱えば日本国内の業法規制をクリアしなければいけない。 不動産の信託受益権をいくらでSPCに売却するのかも大きな問題だ。証券で集めた資金で売却すればいいのだが、満額を集められることはあまりない。適切な時価で売却するということも重要だ。その時価を算出するためにも譲渡資産のデューデリジェンスが重要になる。 ●重要な「資産の真正譲渡」 「真正譲渡」とは、オリジネーターからSPCへの資産の譲渡が完全な所有権の移転なのか、単なるファイナンスなのかという議論だ。真正譲渡であるか否かは非常に重要かつ複雑な問題であり、法律問題だけでなく税務問題などにも波及する。 SPCの生まれ方は子会社に近いが、証券を発行した段階でのSPCは完全な第三者でなければならない。SPCは理論上誰の子会社でもなく、独立していて、業務はすべて外注しているのだが、観念的な危うい器である。たとえばオリジネーターが倒産したときには、オリジネーターの管財人がSPCの中に入っている資産を取り戻そうとするかもしれない。 そうした問題を避けるには資産の譲渡が真正譲渡でなければいけないし、SPCがオリジネーターに支配されている子会社であってはいけない。 一般的に金銭債権の場合はオリジネーターがサービサーを兼務する。サービサーは、SPCが発行した社債を返済するのに足りる資金を回収する役目を負う。不動産の場合でも、サービサーは不動産の保有者であることが多い。しかし、サービシングにあまり深く関与すると真正譲渡の問題に触れてしまうから注意が必要だ。 信用補完も重要な問題だ。証券化商品はリスクの固まりだと言われるが、SPCは単なる箱だから何かあれば全部のしわ寄せが集まる。そうしたリスクをどう補完し、社債権者に迷惑をかけないかというのが、信用補完ないし流動性補完という手続きである。 オリジネーターのバランスシートから特定の資産をはずす「オフバランス」は、証券化スキームを国内でつくるうえで重要なクライアントニーズだ。具体的にはある資産の売買を譲渡担保として構成する。 連結対象となるか否かを吟味することは、オフバランス要件に似ている。SPCがオリジネーターから独立していないと見なされた場合には、事実上の子会社として連結して決算しなければならなくなるから、これをクリアできるかどうかが大きな問題となる。 ●正否を決める課税問題 証券化に関する資金は、まず社債権者から出て、SPCを経てオリジネーターの手に渡る。一方、社債の返済については、不動産から生まれた賃料や売却収入がサービサーを経てSPCに入り、さらに社債権者に戻る。 一般的に、この流れのなかで1回でも課税されたら、どのストラクチャーも成立しない。そのため、どのスキームもひと回りする間で1回も課税されないように仕組まねばならない。ひとつひとつの取引について課税されないかどうかを検討し、課税されそうであれば仕組みを変える。 しかし、課税されるかどうか分からないケースも多い。日本の税法は、海外を利用するようなスキームを前提としていないために、なんの定めもないことがたくさんあり、経理についてはグレーゾーンがたくさん残っている。 最後に大きな売却益が出たときには、オリジネーターに利益を戻したい。その時課税されないのかどうかも慎重に検証しなければならない。 同様に、オリジネーターや投資家の申告所得への影響をチェックする必要がある。実際のストラクチャーでは投資家の税効果は後の後だが、最終的な税効果への影響を検討しておかなければ売れない。 ●証券化スキームは精密機械 なぜこれほどまで証券化スキームのチェックに手間をかけるかというと、不動産の証券化が普通の事業とは違うからだ。証券化というのは単なる機械であり、すべてが契約書どおりに機能しなければならない。SPCは1回1回のビジネスについて判断しないから、最初から最後まで全部やることが決まっていなければならない。 SPCがビジネスジャッジをすれば事業体になってしまう。SPCはビジネスジャッジをしないから税金を取らないという構成がとられている。特定目的会社においても、業務をすべて外注し、ビジネス上の判断をしないようにつくらなければならない。ビジネスジャッジをしなければならないSPCだと、ジャッジする人によって社債の最終金額が変わってくる。 ジャッジが上手ければ償還金額が大きくなり、下手だったら回収金額が減ってしまう。こういう事業体はコーポレート・ファイナンスであり、マネジメントに対して投資しているということである。 理想論ではあるが、不動産の証券化は不動産の価値に対して投資する、あるいは資金収支に対して投資するのであるから、マネジメントの巧拙によって資金回収額が変わっては困る。だから回収額が変わらないように仕組むのが基本だ。 SPCは精巧にできた時計仕掛けの器である。だからSPCが生まれてから終わるまでのことが、ぜんぶ書類上で判断できるようになっていなければならない。それが目論見書として開示され、目論見書にないものは大蔵省に行けば付属書類として見ることができ、それらを見れば投資家がストラクチャーのすべてが分かるというようにつくらなければいけない。 第9回不動産証券化コース
テーマ/「不動産証券化の会計と法務」 |
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