■動き始めた
 一般投資家向け商品

不動産証券化商品の具体例(その1)

佐藤 一雄 株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長
加藤 和政 東京建物株式会社 投資サービス部長



佐藤 一雄
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今回の講座は次のように進められた。
1.不動産証券化商品の概要を解説(佐藤氏)。
2.国内初のパッケージ型不動産投資商品である「東京建物インベスト・ファンド」のプロモーションビデオ上映(有栖川ヒルズ/ベルセーヌ南生田)。
3.同インベスト・ファンドおよびSPCを活用した商品の補足説明(加藤氏)。
4.受講者によるグループ討議。
5.加藤氏による質疑応答。


佐藤一雄氏

●一般投資家向け商品が登場
不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化商品の累積募集総額は、99年3月段階で800億円弱に達した。従来の商品は機関投資家向けであったが、今年に入って口数の大きい一般投資家向け商品が登場してきた。
その背景には規制緩和がある。複数の不動産を組み込めるようになったこと、金銭出資型商品の1口当たり最低金額が1,000万円から500万円に引き下げられたこと、第三者に譲渡できるようになったことなどである。
特定共同事業の事業者は許可制である。事業者は格付けなどを必要とせず、すべてをアレンジできるのが長所だ。それに対してSPCでの証券化商品は商法上の有価証券だから、公募には格付けが前提となる。また、流動化計画という、いわば商品の設計図を会社設立にあたって明確にしなければならない。
SPCは、出口が有価証券ということもあって仕組みが緻密にできている。その分、事業化のコスト・手間・時間がかかるために、50億〜60億円の資金調達のために利用するのではコストが合わない。一般的にいって、200億円以上の規模でなければ見合わないだろう。それに対して特定共同事業は、50億〜60億円程度でも比較的容易に事業化できる。


●改善の動き強まるSPC
SPCの使い勝手の悪さを改善しようという動きがあり、近々実現するだろう。SPCが米国のREIT的でないという批判があるが、SPCはもともとREITのような法律体系になっていない。SPCは初めに資産があり、それをどう流動化するかという法律だ。REITは、途中で不動産を自由に入れ替えられるだけでなく、不動産以外に現金や政府証券を資産として保有でき、SPCとは本質的にかなり違う。 
特定共同事業にも問題はある。事業者が手の内でいろいろできる半面、事業の内容について第三者のチェックが行われにくい。たとえば、第三者による不動産価格の評価が必要になるかもしれない。
また、万が一、営業者が倒産した場合には、不動産特定事業による証券化商品のほうにも債務が遡及する可能性があり、証券化商品を債務から独立させる仕組みも導入しなければならない。不動産特定共同事業を普及させるためには、そうした点の改良が不可欠だ。


加藤和政氏

●国内初のパッケージ型商品
東京建物が平成11年3月に募集を開始した「東京建物インベスト・ファンド」は、国内初のパッケージ型不動産投資商品である。
外国人向け超高級賃貸マンション「有栖川ヒルズ」と新築永住型賃貸マンション「ベルセーヌ南生田」を組み合わせ、1口500万円で700口を募集した。両物件は希少性が高く、高い稼働率が望める優良物件であり、安定した収益配分と換金性の高さを目指す不動産証券化商品である。
主な特長は次の4点である。
1.1口500万円という少額の資金から優良な不動産に投資できる。
2.年2回の安定した収益分配。
3.不動産取得税、登録免許税、印紙代など不動産取得時の諸費用が不要。
4.出資持ち分を第三者か東京建物に売却できる。

スキームは匿名組合方式の不動産特定共同事業であり、出資者は東京建物と匿名組合契約を結び出資する。初年度の分配率は年約3.6%(税引き前)を予想している。
換金性の確保については、出資持ち分を売却する場合は、東京建物プロパティ・マネージメントの媒介により、第三者に譲渡するか、営業者である東京建物に譲渡するかのいずれかの方法で出資金を清算する形をとる。


●東建のSPC登録第一号
東京建物は平成10年11月、東京・高輪の外人向けサービスアパートメントを対象としたSPC登録第一号となった(証券発行は平成11年6月)。SPC法を活用した初めての証券化商品である。不良債権処理が目的でなく、稼働中の収益不動産を直接取得して行うスキームである。
対象不動産の「アパートメント33」は、主に外国人短期駐在員向けにつくられた家具付きで、リネン・清掃・ ランドリーなどホテル並みのサービスを受けられる賃貸施設である。事業スキームは証券発行総額が約65億円で投資期間は7年間。5〜7年後に対象不動産を売却する予定である。資産対応証券は、特定社債券(デット型)および優先出資証券(エクイティ型)の2種を組み合わせて発行する予定である。


●Q & A
  パッケージ型商品およびSPC法に基づく商品の解説が終了した後、受講者はSPC法を検討するグループとパッケージ型商品を買うか否かを検討するグループに分かれ、グループ討議に入った。以下は各グループが発表した意見・疑問と加藤氏の回答である。(編集部注)

SPC検討グループ
Q --- どの程度の物件であればSPCによる事業が成立するのか。不良資産化した物件も可能か。
A --- 金額はNOIを割り戻して決定するのだから、対象不動産が不良資産化しているかどうかは問題ではない。ただし、建物やテナントの質により格付けが低いと特定社債の利率が高くなるという問題はある。新耐震基準のクリアは最低条件。都心の優良物件であればNOIベースで5〜5.5、普通で6、少し落ちて8〜12程度だろう。
Q ---証券化にあたって、不動産特定共同事業、SPC、ケイマンSPCのどれを選ぶかの判断基準はあるのか。
A ---ケイマンSPCは、売り主が信託受益権を設定してくれないと普通に取得税や登録税がかかったうえに証券化のコストがかかるので、コスト高になり、割に合わない。税務上の問題点もある。特定共同事業は取得税や登録税はかかるものの、商品化の時に金がかからないというメリットがある。ただし、倒産隔離の問題はある。どのスキームにするかについてはケースバイケースである。

パッケージ型商品検討グループ
Q --- 今後のマーケットの先行きが不明で投資判断が難しいと思う。
A --- 将来の市況や賃料推移は投資家自身が判断しなければならない。
Q ---1口の金額を小さくしたほうが一般投資家に浸透するのではないか。
A --- 1口500万円が妥当だとは思わないが、現行制度ではやむを得ない。ただし、あまり少額になると契約の手間がかかり過ぎてしまうだろう。
Q --- このファンドは東京建物に対する投資というニュアンスが強い。倒産リスクが問題だと思う。
A ---われわれ不動産会社は今後、不動産の証券化をやっていかないと格付けが上がらない。アセットを減らし、借入金リスクも減らして、フィービジネスの比重を高めていこうとしている。
Q ---分配金に減価償却費が含まれているが、最終的に売却する際の出資金は減っているのか。
A ---出資者は不動産全体の700分の1を所有していることは変わらない。何十年後に出資金がゼロになっても700分の1を所有しているわけだ。対象不動産を売ったときに、簿価と売価との差が譲渡益になる。ちなみに出資金の返還部分には課税されず、最後の譲渡所得に課税される。


第4回不動産証券化コース

テーマ/「不動産証券化商品に具体例(その1)」
ゲスト/加藤 和政(東京建物株式会社投資サービス部長)
コース指導/佐藤 一雄(株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長)
日時/1999年6月1日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


佐藤 一雄 講義目録
■第23期 '99.4.27
いまなぜ証券化なのか
■第23期 '99.5.11
 不動産証券化とはなにか
■第23期 '99.5.18
 不動産価格-このとらえようのないもの
■第23期 '99.6.1
 動き始めた一般投資家向け商品
■第23期 '99.8.31
 規制緩和と環境整備が不可欠
■第21期 '98.11.10
 いまなぜ証券化なのか
■第21期 '98.11.24
 不動産特定共同事業法の活用と課題
■第21期 '99.2.9
 不動産投資インデックス

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