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■規制緩和と環境整備が不可欠 不動産証券化の動向と課題 佐藤 一雄 株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長 |
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不動産証券化コースの最終回にあたる今回は、講座の締めくくりとして佐藤氏が、不動産特定共同事業を中心にしつつ不動産証券化の全般にわたって解説した。1995年に不動産特定共同事業法が施行されて以来、事業は着実に伸長し、特に1999年上半期は大幅な伸びを見せた。この間、規制緩和も行われたが、さらに環境を整備していく必要があると佐藤氏は強調した。
●投資を促すインデックス 不動産投資インデックスは、不動産に投資する人のための指標である。現在、いくつかのインデックスが存在するが、つくり方やベースにするデータによって結果は少しずつ異なる。 国土庁が発表する地価調査も不動産価格のインデックスと呼べなくもないが、地価公示はむしろ投資を抑え、地価の高騰を抑えるという政策目的でつくられた。投資の促進とは逆の立場でつくられた指標であり、投資インデックスとして使うには無理がある。 現在ある不動産投資インデックスの中には、不動産価格を求めることが難しいために地価公示に拠っているものがある。しかし、地価公示をベースにすると、いかに加工してもインデックスに歪みが出てしまう。 ●多種のインデックスが併存 海外には多くの投資インデックスがある。イギリスのIPDは、大変に洗練された内容であり、機関投資家の7、8割をカバーしている。IPD社は、投資インデックスを業務とする民間企業であるが、指標づくり自体がビジネスになる見本である。 アメリカの代表的なインデックスはNCREIFである。NCREIFは、不動産に投資している会社や投資を受託している会社などで設立している団体であり、会員からデータを集めてインデックスを出している。 世界にはいろいろなインデックスがあるが、インデックスは1つである必要はない。それぞれつくり手の考え方によって指標が違ってもいい。不動産の価格自体が捉えにくいものであり、将来の価格の予想も人によって大きく異なる。判断が異なるからこそ投資が生まれることを考えてみても、インデックスが1つである必要はない。 ●地価の捉え方が大きな課題 インデックスは基本的に、1年間の賃料から経費を差し引いた純賃料に、年初と年末の不動産価格の差を足し、それを年初の不動産価格で割ったものである。ここで問題になるのは不動産価格である。賃料は明確だが、実際に売買されない不動産価格を求めるのは難しい。 インデックスは本来、不動産投資の利回りを求めるものである。イギリスの場合は、都心部でも実際の取引の件数があるため、比較的容易に事例から不動産価格を推定でき、総合収益率を求めることができる。 一方、日本の不動産鑑定評価における収益還元価格は、物件のタイプに応じて、あらかじめ利回りを5%、6%などと決めている。しかし、現実には利回りは決まっているものではなく、その利回りから求められる不動産価格が実際に妥当か否かも判断できない。 わが国でインデックスを設けるうえでの課題は多いが、一番大きな課題は不動産の時価をどう捉えるかだ。SPCに不動産を入れる場合でも、時価より大幅に低い価格で入れれば、低廉譲渡の問題が生まれてくる。 日本の都心での取引事例は極めて数が少なく、時価を類推することが容易でない。そこで、やむを得ず地価公示をベースとしたインデックスがつくられる。賃料にしても募集賃料に基づいたインデックスとなっている。しかし、募集賃料と契約賃料には差があり、そこから算出される指数の有効性には疑問が残る。 ●インデックスの加工が重要 対象となる不動産の種類、面積、金額の規模に応じてインデックスは変わってくるものだ。歴史があり、データの蓄積も豊富な英国・IPD社は、多種多様なインデックスを出している。それを基にクライアントの投資効率の評価まで行っている。 たとえばA年金基金が都市部の不動産に投資すると、IPD社は都市部に範囲を限定したインデックスで投資効率を評価して、その結果をクライアントの年金基金にフィードバックしている。つまりインデックスの指数は、その指数をクライアント向けに再加工して使うことが大変に大事である。 事実、IPD社では、ポートフォリオ分析が収益の80%を占める主要業務である。データを提供している250のファンドに対して、インデックスを基にした投資効率の評価を行うことで大きな利益を上げている。 ●成長を遂げた特定事業 1999年上半期に入って、不動産特定共同事業は大きく成長するとともに、種々な変化も見られた。特に1999年に入って顕著なのは、個人投資家向けの商品が増えたこと、匿名組合によるスキームが主流になったこと、不動産特定共同事業でも優先・劣後型が登場したこと、などである。対象物件も、開発物件のほかに、既存賃貸物件を対象とした証券化の増加が目立ち、不動産の種類も多様化した。不動産の数は単数から複数へと移行し、販売口数も増加の傾向にある。 こうした変化は事業法の規制緩和によってもたらされた。主な規制緩和としては、複数不動産のパッケージ化が可能になったことのほか、1口当たりの最低出資金が1,000万円から500万円へ引き下げられたこと、第三者への譲渡制限の撤廃、投資ファンド型事業の解禁、などが挙げられる。 ●今後の課題も山積 今後の課題も多い。匿名組合を使って不動産特定共同事業を進める場合、事業者が全体をコントロールしている。投資家の信頼を得るためには、価格の設定などについて第三者のチェックを含んだ情報開示が必要である。 また現状では存在しない二次市場をどう形成するかも重要な課題だ。そのためには、流通価格の考え方、仕組み、税や手数料など流通コストなど、解決しなければならない問題は多い。 不動産特定共同事業法とSPC法に共通した課題も多い。ともに二次市場がないために、不動産特定共同事業では事業者が自ら買い戻して流動性を付与せざるを得ない。SPC法でも、オリジネーター自らが劣後部分を買い取らざるを得ない。その結果、証券化によって資産を売却し、財務体質を強化するという目的が十分に達せられていない。 ●可能性を広げるファンド型 投資ファンド型の不動産特定共同事業が間もなくスタートする。この特徴は、物件を中途で入れ替えられることだ。また、ファンド全体の25%未満を不動産以外のものに投資できる。これは画期的なことで、不動産という枠を超えてもっとも利益が上がりそうなものに投資できるようになる。ようやく世界のファンドの流れに一歩近づいたといえる。 またファンド型の登場により、投資物件としての不動産が、特殊な商品から普通の商品として考えられるようになった意味も大きい。入れ替えができるのであるから、ファンドに入れた不動産のうちで高く売れそうなものがあれば売り、よい物件があれば買うという、投資としてはごく当たり前のことができるようになった。価値が変化する不動産を乗り換えられるという点が重要だ。 ただし、高い利回りを実現するためには、入れ替えを判断するファンドマネージャーの能力がより重要になる。こうした課題はあるものの、ファンド型は不動産特定共同事業の可能性を高めるものと言えるだろう。 第10回不動産証券化コース
テーマ/「不動産証券化の最新動向と課題」 |
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