日本社会は改革するか!
PFIが開く可能性

何かと批判の多い日本の公共事業。社会資本整備や公共サービスの分野に市場原理と民間資金を導入して効率化を図る動きが本格化している。英国で成果をあげている「PFI(Private Finance Initiative)」の導入を目指して、1999年7月にPFI促進法(※)が成立。いよいよ各地でPFI事業が動き出す。
※PFI促進法/正式名称は「民間資金の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」

長引く不況で企業や個人の懐具合は厳しい。税金の使い方にも厳しい目が向けられるのは当然だ。
「方法はどうであれ、もっと少ない税金で質の高い公共サービスを長期安定的に受けられるように知恵を絞ってほしい」というのが多くの納税者の本音であろう。公共事業にもやっと費用便益分析が導入されたが、もともと金利や時間のコスト意識が乏しいお役所体質がそう簡単に転換するとは思えない。
そこで、もっとダイレクトに、公共事業にも市場原理が働くようにし、民間資金や民間の事業遂行能力を生かそうと導入された仕組みが「PFI」である。PFIの目的は、納税者のために「税の対価としてもっとも価値あるサービスを提供すること」(VFM/Value for Money)にある。

PFI事業にはさまざまなタイプがあるが、ある市が廃棄物処理施設をPFI事業でつくる場合を例にとり、その仕組みを簡単に説明する。
まず、市は住民の意見を聞きながらマスタープランをつくり、それに基づいて民間事業者を集めて廃棄物処理事業の提案協議を行う。事業期間を通じて「コストと質」の両面からもっとも優れた事業プランを提案した民間事業者(グループ)に事業を委ねる。
選ばれた民間事業者は自ら資金を調達して建設から管理運営まで一貫して行い、自治体から公共サービスの対価を受け取って事業資金を回収していくわけである。
一方、市やプロジェクトに融資した金融機関は、それぞれの立場から事業計画どおり効率的に運営されているかを随時チェックしていく。

PFIの理念どおりVFMが達成されれば、納税者は安く質の高いサービスを安定的に受けられ、財政難に苦しむ国や地方自治体も、住民が求める社会基盤や公共サービスを民間資金で実現できる。民間企業にとっては長期安定した公共事業という新しい市場が開かれると同時に、新しい技術やプロセスマネジメントなどさまざまな分野でイノベーションが起こる可能性がある。
ただ、PFI事業における公共、民間企業、住民の関係は基本的には「同床異夢」。利害が対立する場面も多い。利害を調整しながらVFMを達成するにはクリアしなければならないハードルも多い。

2000年1月25日に、アカデミーヒルズで開かれたPFIの公開セミナーでも、さまざまな立場からクリアすべき課題が指摘された。
たとえば、従来型公共事業に比べて、PFI事業には資金調達コストや企業の利潤、税金などが上乗せされる。これらを吸収してVFMを達成することの難しさや、もともとリスク意識が欠落している日本で、公共と民間が適切にリスクを分担するルールをつくることの難しさも指摘された。
また、公共側のマスタープラン立案能力や意識改革への疑念、事業者選択プロセスの明確化やその際の情報公開の問題、VFMの測定方法やチェック機能などへの疑問も挙がっている。

PFIの阻害要因の根底にあるものは、変革を嫌い、責任の所在を曖昧にする日本社会のもたれ合い体質である。たとえば地方自治体は、今、地方交付税と国からの補助金に頼り続けるか、困難であっても自立の道を歩むかの分岐点に立っている。PFIは万能ではないが、少なくとも後者の道の第一歩である。未知への挑戦は常にリスクと困難を伴うものだが、今ほど挑戦する勇気が求められている時代はない。
PFIは公共事業の改革であると同時に、日本人の意識や日本社会の変革の可能性を試すリトマス試験紙ではないだろうか。