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■都市は人間の総合芸術 知恵と感性と技術のコラボレーション 森 稔 アカデミーヒルズ理事長 森ビル株式会社代表取締役社長 |
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「経済戦略会議」や東京都の「都市の問題を考える懇談会」などを通じ、独自の都市再生論を展開している森稔氏。一企業の範囲を超えてその都市再生論が世の中に浸透しつつある。森氏の強みは理論を実践してきたことだろう。氏の展開するアーバンニューディール政策の都市モデルともいうべき六本木六丁目再開発の着工を前に、「文化都心」、「アート」という概念を新しい都市の核に据えた意味と、21世紀の可能性を開く都市の形について聞く。 ----- 六本木六丁目再開発がもうすぐ着工します。「文化都心」というコンセプトを掲げ、先日はその象徴として「森アートセンター」を開設する、と発表されました。まず最初に、都市の象徴に「アート」を冠した理由をうかがいたい。 森 ----- 「アート」の語源はラテン語の「技」。「アート」は単に美術や芸術だけでなく、人間の知恵や感性によって生み出されたすべての技を示す言葉として捉えています。学術、技術、科学、デザイン、ファッション、建築、現在でいえば、金融技術やITも含まれるでしょう。 ルネッサンス期の偉大なアーティスト、レオナルド・ダ・ビンチが科学者であり、医学にも通じていたように、さまざまな領域に広がり、専門分化している技や知恵をひとつに融合させ、交流させる場という意味から、「アート」を都市の象徴に冠したのです。 また、この都市自体が人間の知恵や技の「総合芸術」であり、ここでの人間の営みが生み出す「総合芸術」を世界に発信し、世界と交流していく場にしたいというふうに考えています。 神が創り出した総合芸術が自然ならば、都市は人間が創り出した総合芸術といえるのではないでしょうか。 ---- そうした意味からすると、アカデミーヒルズやアーク都市塾の活動も、また「アート」として捉えられる? 森 -----ええ。産業と学問の垣根はどんどん低くなっている。官と民の垣根も低くなっている。アカデミーヒルズやアーク都市塾は、まさにそれらを具現化する場と時間を共有できるところといえるでしょう。2003年に六本木六丁目再開発が完成したら、アカデミーヒルズやアーク都市塾もこの街の中に移し、文化都心の一翼を担うことになります。 ----- これからは、いろいろなものが融合とか、交流の方向に向かうような気がします。 森 -----そうです。職・住・遊・憩といった人間の営みも、分離から融合へ向かうでしょうね。たとえば、工業社会では工場の操業時間に人間の生活時間を合わせてきました。用途純化主義によって工場と住まいも分離されてきた。実際、こうした仕事は、就業時間が終われば身も心も仕事を忘れてよかったわけです。いわば、工業社会では人間の営みが時間的、空間的、精神的に分離していたわけです。 しかし、これからの第三次産業、第四次産業のライフスタイルはまったく違うものになるでしょう。頭脳や感性を使って「価値」を創造するビジネスに携わる人々にとって、仕事や家庭、遊び、休息の切れ目が曖昧になっています。これらは時間的にも空間的にも近いほうが都合がいい。こうしたシームレスな働き方を可能にした背景には情報通信技術の発達もあるでしょうね。 ----- クリエイティブな仕事は、9時から5時まで机に向かっていれば成果が上がるというものではないですね。また、グローバルな展開をする仕事では24時間、ネットワークで世界と繋がるし……。 森 -----人と話をしている中で、あるいは遊びやくつろぎの時間にたいへん素晴らしいアイディアが生まれることもあるでしょう?。仕事と家庭、遊びといった区切りはなくなってきているのです。企業も、忠誠心よりクリエイティビティを重視するように変わっています。 また、人々の価値観も大きく変わってきています。大企業に就職することが必ずしもベストではない。自らのやりたいことをどう実現するかが大切なのであって、企業に就職しなくても、独立して夢に挑戦している人も出てきました。昔は組織に所属しないと落伍者のようにいわれたものですが、今は違う。働き方ももっと自由になっていくでしょう。 私は都市開発という仕事を通じて、こうしたライフスタイルを自由に選べる社会や環境を実現したいと思っているのですよ。 ----- 具体的にはどのような都市なのですか。 森 -----まず、自由時間を創出できる都市。時間は非常に貴重な資源です。一日を26時間にすることはできませんが、都市構造を変えて時間をもっと有意義に使えるような時間創出型都市をつくりたい。 残念ながら現在の都市構造はそうなっていません。都心が有効に利用されていないので、住宅地がだらだらと郊外に広がって住まいと職場が離れ、通勤に時間とコストとエネルギーを吸い取られています。アフターファイブや休日にコンサートやショッピングを楽しんだり、学校や人との交流を通じて新しいことを学びたくてもなかなかできないというのが実情でしょう。こうした環境からは新しい挑戦や新しい発想は生まれない。 しかし、ウォーキングディスタンス(徒歩圏)に職・住・遊・医・学・食・憩・文化などの都市機能を集めたコンパクトシティを都心の要所要所に創り出し、人々を都心に呼び戻せば生活は一変する。長距離通勤の時間を家族のためやボランティアに使ってもいいし、新しい挑戦に備えてもう一度勉強してもいい。消費や娯楽に回してもいい。 ひとりひとりの自由時間が増えればさまざまな活動が増える。そのパワーと需要が次の時代の日本経済をリードするエンターテイメント産業や教育文化産業、サービス産業、情報産業といった都市型産業の興隆を支えます。同時に個人にとっても新しい挑戦の機会が広がるでしょう。プラスの相乗効果が期待できます。 ----- お話をうかがいながら、森社長のライフスタイルと重ね合わせていました。アークヒルズに住まいを移し職住近接を実践されるようになって、経済戦略会議をはじめ社会的な活動が随分多くなられましたね。 森 -----ええ。こうした発想のベースには自分自身の生活実感も多分に入っています。職住近接の生活をおくるようになって仕事の生産性も上がったし、社会的な提言活動や趣味に使える時間も増えた。国内外の友人、知人との交流も増えました。気が向けば深夜まで本を読んだり、早朝、ゴルフの素振りをしたり……。 一日が以前の何倍かになったような気がします。 ----- しかし、社員の方は、社長のことを心配していますよ、いったいいつ寝るのだろうと。 森 ----- 確かに都市づくりという仕事は範囲が広くて、どこまでが仕事でどこまでが遊びなのかわからなくなるところはありますがね。しかし、こっそり昼寝もしてますから大丈夫ですよ(笑)。 ---- 睡眠までも巧く組み込んでいる(笑)。 ところで社長の提唱している都市は、高齢社会や少子化社会にもひとつの解決策となりそうです。 森 ----- 都市の上空を利用して、都心の要所に職住近接型のコンパクトな垂直都市をつくれば、歳をとっても社会活動を続けることができますし、女性も子育てや介護をしながら仕事ができる。また、働きながら新しいことを学び、新しい人々と出会う時間もとれますから、年齢や性別に関わらず、新しい人生やビジネスに挑戦するチャンスも増えるでしょう。 ----- ただ、今でも日本人には超高層住宅アレルギーが強いようですが。 森 ----- 嫌になるくらい戦ってきましたよ、いまも続いているけれど(笑)。 明治以降の工業化に伴って、地方から都市に多くの人々が流入しましたが、同時に農村的な価値観、住宅観も持ち込まれました。土地の所有にこだわって皆が持ち家一戸建てを望み、政策や税制もそれを後押しした。その結果、土地は細分化されて「平面過密・垂直過疎」の都市構造になってしまったのです。 加えて、高温多湿で地震の多い日本では、西欧のような石積みの建築より、木造住宅を建て替えていくほうが安全で理に叶っていたという歴史がある。 しかし、気候風土や地震などの制約は、技術によって突破されているのです。先程いいましたように、人々の価値観も産業構造も大きく変わっています。いい超高層都市のモデルができれば、きっとそちらを選択する人々もたくさん出てくるでしょう。 ----- 元麻布一丁目プロジェクトや六本木六丁目再開発などがそれですね。 森 ----- これらを実現することで、土地をまとめて空を利用し、地上に緑を復活させれば、非常にすばらしい環境の中で都市の暮らしを満喫できることを知っていただきたい。すべてを超高層にする気はありませんが、こうした選択もあることをわかっていただきたい。ひとりひとりが小さな城(家)をつくるのではなく、皆で100年も200年も使い回せるような立派な城(街)をつくり、都市機能を共有しながら暮らすほうが、豊かなのだということをね。これからは「家」でなく、「街」に住む時代なのです。 アークヒルズのリニューアルで街のダイニングを充実させましたが、そこからも新しい食文化が生まれている。また、ラフォーレ原宿からは若者文化が生まれた。ヴィーナスフォートでは「美」の文化を創造します。 文化とかアートは遠くから仰ぎ見るものではなくて、人々の生活の中に根づいてこそ本物になる。六本木六丁目では今までのノウハウを生かしながら、アートと人間の距離を縮めていきたいですね。 ----- 文化とかアートというと、なにか近寄りがたい高尚なイメージが強いですが、もともとは知的な、または感覚的な遊びですよね。「楽しい」、「面白い」といった素朴な感情が原点にある。 森 ----- そうですよ。何も鹿爪らしく構える必要はない。六本木六丁目では、子供たちはもちろん大人も遊びたくなるようなパブリックアートを置きたいな、と思っています。ショッピングやダイニング、ホテルや庭などもオリジナルな要素を入れて、とにかく楽しくて面白いカジュアルな街をつくります。昔と違ってオフィスもカジュアルになってきましたからね。クリエイティビティを重視する企業に相応しい環境をつくりますよ。 ----- 「時間」そして「アート」という視点から、都市の形が少しずつ見えてきました。 森 ----- 21世紀の都市の形を考えるとき、もうひとつ重要な視点があります。地球環境の制約です。地球は人間だけのものではない。人間に許される範囲で、人間がよりよく生きることができる都市を考えなければならない。 都市は人間の総合芸術といいましたが、これから私たちは人間が破壊した自然を修復、再生する義務があります。今後の都市開発は人為的に自然を再生するものでなくてはなりません。「垂直の緑園都市」をつくり、そこに人間がコンパクトに集まって住むことによって、消費エネルギーも移動エネルギーも抑制する。こうした形は一方で郊外の自然破壊を防ぐことにもなるのです。 また、地震にも強くて長く持つ建物をつくり、世代を超えて使い回していくことで貴重な資源を無駄遣いしないようにする。それを可能にする技術はすでに開発されているのです。ネックとなっている制度や価値観が変われば、都市は本当に大きく変わる。 日本人は、今、豊かさの意味をもう一度見つめなおす時期に来ているのではないでしょうか。「所有から利用へ」と発想を転換し、皆で豊かに暮らすための都市の生活作法、都市文化といったものを、制度も絡めて再構築していく必要がありますね。 ----- 都市再生には、これからも制度の壁や旧弊な価値観との戦いが続きそうですね。どうかこれからも昼寝で戦いのパワーを充電してください(笑)。 |
| 森 稔 講義目録 |
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■第26期 '01.5.17 都市再生への課題と挑戦 |
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■第25期 '01.1.18 都市インフラとIT革命 |
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■第23期 不動産特集 アカデミーヒルズインタビュー |
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■第23期 '99.1.18 都市再生に向けて舵を切れ |
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