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■居住用不動産の価格分析 ケーススタディと将来価値の考え方(1) 室津 欣哉 森ビル株式会社不動産鑑定担当副参事 |
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不動産評価コースの授業も今回で6回目。中盤はいよいよケーススタディに入る。今まで種々なゲスト講師を迎え、「不動産の価格とは何か」をテーマにお話しいただいたが、講義の前半はそのまとめを行い、後半は居住用不動産に焦点を絞ってその特徴や価格形成要因を探る。ケーススタディとしては、実際の分譲マンションの売値と3手法、DCF法による価格を比較した。
●鑑定評価方式のまとめ 今までの講義で、鑑定評価の手法としては原価法、取引事例比較法、収益還元法の3手法があることが分かったと思う。これらは、それぞれ費用性、市場性、収益性に着目して対象不動産の価格にアプローチしようとするものである。 簡単な事務所ビルの事例で、実際に価格を出してみよう。 まず、原価法についてみると、建物価格は再調達原価と築年数から、価格が出せる。だが、土地については、市街地の場合、素地+造成費というわけにもいかない。そこで、たいがいは、土地の取引事例価格からもってくる。ここでは、仮に公示価格水準を使う。 次に、取引事例比較法であるが、これは本来、同じような事務所ビルの取引価格(床価格)からもってくるべきものである。しかし、米国と違って、参考になる売買がほとんどないのが現状であり、ここでは適用しないこととしておく。 収益還元法は、仮に利回り5%としてみると、原価法と同じような価格が出る。ただ、これは、標準的なモデルケースで、公示価格はこれぐらいの諸条件で算出されている、と言っているのと同じレベルともいえる。実際は、利用状況などによって価格には開きが出る。 同じ事例で、バブル時にはどのような評価がされていたのかを見てみる。積算価格に比べて収益価格は6〜7割程度であるが、当時、収益価格はほとんど参考にもされず、原価法一本で取引当事者も、金融も、鑑定士も価格を考えていた。 日本の鑑定評価手法は、基本的に米国の方式の直訳である。しかし、根本的な違いは、日本人は土地と建物を別個の不動産と捉えてきたことにある。これは、民法・登記法・税務・会計ともにそういう扱いになっていたことによる。 このため、取引自体が土地はいくら、建物はいくらとなりがちであり、また鑑定も、実際の取引がそうだから原価法(実質は取引事例比較法)中心になっていたのである。 ●不動産の評価とは 不動産の鑑定評価とは、不動産の経済価値を判定することであり、求めるべき価格は合理的な市場で形成されるであろう適正な価格とされている。しかし、おおもとの経済学においても、この「合理的な市場」という概念には批判が多い。 現実には、完全に合理的な経済主体などない。また、価格も単純に需給で決まるものではなく、いわゆる均衡には達しない。実際の不動産の取引価格がどう決まるか考えてみると、まず売り主、買い主ともに特定の状況、諸制度の中に置かれており、完全に合理的ではない。 また、将来価値も確実に予測できるものではなく、ある程度主観的にならざるを得ない。結局、売り主・買い主がそれぞれの立場で主観的に価値を見積もり、価格交渉のうえで、取引価格が決まるのである。したがって、価格には当然幅がある。 鑑定評価は、上記のプロセスに何らかの形でかかわるか、その結果を制度上オ−ソライズするもの、というのが本当のところである。したがって、正しい答えが1つだけ出てくるような評価方法は、そもそも存在しない。あくまでも、ケースバイケースで判断すべきものである。 個人的には、単にある時点の価格を正確に求めようとするよりも、実際の価格決定プロセスを動態的、制度的に分析することのほうが重要だと考えている。 ●ケーススタディ・居住用不動産 このような考え方に立って、今回は居住用不動産の価格について考えてみよう。 まず、住宅は、他の財と違って、必需性、耐久性、重要性、多様性、情報の非対称性などの特性を有する。要は、誰もが必要とする財で、動かすことができず、値段も高く、質も多様な、かなりの耐久消費財であるということである。また、価格は、立地や物件の個別性以外に、賃金や雇用の水準、公庫金利や税制などに強く左右される。 私の住んでいる駅周辺の新築、中古マンション、賃貸マンション等の相場を、インターネットで検索してみた。これをもとに、住宅はどういう値付けが行われているかを見てみよう。 実際の分譲マンションについて、売り値と3手法による価格を比べてみる。 積算価格は、業者が土地を買って、建物を建てた場合の価格と考えることができる。比準価格は、一般の分譲マンションの相場で、たとえばサラリーマンが自分の収入から考えて買える値段で、気に入れば買ってしまう価格である。マンションの場合は、他の不動産と違って、土地建物一体の床相場が一応ある。収益価格は、賃貸した場合の収益価値で、比準価格よりも安く出る。いずれにせよ、この例の売り値は高すぎることが分かる。 それぞれの価格から、次のことが言える。 まず、分譲業者は、土地・建物の原価に利益をのせて売っている、ということである。これはあたりまえのことであり、そうでなければそもそもマンションをつくらない。また、ファミリー用の場合は、賃貸にしても採算が合わない、というのが収益価格から見てとれる。買い主から見ると、収益価値で考える人は、マンションを買えない、ということになってしまう。なぜならば、売り値で買ってしまう人が現実にいるからである。その場合は、賃貸を選択することになるが、分譲に比べて一般に質がよくない、という問題がある。 また、買う人が勘違いしてはいけないのは、購入価格は資産価値ではない、ということである。買った瞬間に、一部は業者の利益分としてなくなってしまうのである。よく「地価が上がれば自分のマンションの価格も上がる」と思っている人がいるが、これも間違いで、中古マンションは中古マンションとして、経年に応じて価値は下がり続けるものであり、新築可能な土地の値段が上がっても、直接はそれには連動しない。老朽化し、建て替えもできなければ、土地持ち分があっても不動産の価値としてはほとんどゼロである。 では、なぜほとんどの人は住宅を買うのであろうか。 数字から見ると、全く合理的ではないが、前半で見たように、買い手の主観価値があるからである。居住用の場合は、収益性よりも快適性が重視される、ということになっているが、もっと現実的に言えば、持ち家志向、所有欲であったり、ステイタスや、奥さんに言われたり、という理由が大きいのであろう。また、ファミリー向けの場合は、賃貸よりも月々の支払いが当面は楽なので、買わざるを得なくなっているとも言える。 ●住宅政策の問題点 商業地に比べて住宅地の価格が高止まりしているのは第1回目の講義で見たとおりだが、これは、常に景気対策として持ち家優遇政策がとられてきたことによる。このため、特に戸建てにより、土地の細分化が助長され、遠距離通勤による不経済、居住のミスマッチの問題を引き起こしている。 今後、ライフスタイルに応じた買い替え、住み替えを促進するためには、持ち家政策だけではなく、優良な賃貸住宅の供給を促すような、賃貸政策も拡充していかなければならない。しかし、この場合ネックになるのは、バブル時にマイホームを買ってしまった動くに動けない層をどうするかという問題である。現行の制度では、よほど資力がない限り、買い替えは不可能となっている。 これは今後の課題であるが、いずれにせよ、各方式の価格を見ることによって、住宅市場の特殊性や、制度の歪みが分かったと思う。 次回は、事務所ビルやプロジェクトの価格について考える。 第6回不動産評価コース
テーマ/「ケーススタディと将来価値の考え方(1)」 |
| 室津 欣哉 講義目録 |
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■第23期 '99.4.26 「地価」と「不動産価格」の違い |
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■第23期 '99.5.24 不良市場の実態と投資市場の基盤整備 |
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■第23期 '99.7.5 住居用不動産の価格分析 |
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■第23期 '99.7.12 オフィスビルの価格分析 |
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■第23期 '99.8.30 不動産の評価と今後の課題 |
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