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■DCF法適用上の課題を探る 収益還元法(DCF法)の解説 山下 誠之 財団法人日本不動産研究所調査企画部主任鑑定役 |
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近年、日本の不動産鑑定評価に対して「土地重視、建物軽視」や、「取引事例追認、収益軽視」といった批判が多い。海外投資家の参入などによって、「投資家」の視点から不動産を評価する動きが高まり、その中で収益還元法、特にDCF法(Discounted Cash Flow Analysis)が注目を集めている。そこで、今回は(財)日本不動産研究所の主任鑑定役、山下誠之氏を招き、収益還元法とDCF法の基本的な考え方や問題点、日本の不動産市場との整合性などを総合的に解説していただいた。
鑑定評価の手法としては、原価法、取引事例比較法、収益還元法があるが、ここでは収益還元法に絞り、前半は収益還元法の基本的な解説、後半は収益還元法の一種であるDCF法について解説する。 ●収益還元法とは? 収益還元法とは、対象不動産が将来生みだすと期待される純収益の原価の総和を求めるものであり、純収益を還元利回りで還元して不動産の収益価格を求める。 収益還元法の基本構成要素は「純収益」と「還元利回り」である。「純収益」は「総収益−総費用」で求められるが、減価償却費については償却前か償却後か、また、税金についても税引き前か税引き後かに留意する必要がある。最近の話題としては、不動産の価値を高めるためのプロパティマネジメント(PM)フィーや資本的支出をどのように取り扱うかといったことが挙げられよう。 一方、「還元利回り(割引率)」は「最も一般的と思われる投資利回りを標準とし、その投資対象との関連において有する当該不動産の個別性を総合的に比較考慮して求める」とされている。具体的には、理論的に積み上げる演繹的アプローチと、実態から抽出する帰納的アプローチがある。演繹的アプローチには調達サイドと運用サイドから考える方法があり、相互に検証して求めるのが一般的である。 基本的には、 運用サイドからのアプローチ ・無リスク資産の収益率+リスクプレミアム 調達サイドからのアプローチ ・自己資本割合×自己資本収益率 ・借入金割合×借入金利 を加重平均したものとなる。 ●更地評価のための収益還元法 土地建物の鑑定評価の中心的手法は直接還元法で、 Value(価値)=NOI(純収益)/r (利回り)で表される。 また、土地(更地)の鑑定評価の場合は、土地そのものの賃貸を想定するのではなく、そこに賃貸用建物を建てたと想定して、純収益から建物に帰属する純収益を引いて算出する手法(土地残余法) がとられてきた。 この土地残余法では、初年度の土地に帰属する純収益を還元利回りで単純に資本還元していたが、バブル以降、収益還元法の適用方法を精緻にすることにより、比準価格を検証するうえでの有効性を高めようとする動きが出てきた。 そのなかで、初年度の純収益が一定率で変動することを前提とした新手法が導入された。新手法では、建築工事中の未収入期間や建物の建て替えサイクルなどを織り込むなど、賃貸事業のライフサイクルが考慮されている。 ●DCF法の基本構造 収益還元法の一種であるDCF法は、投資期間を想定し、その期間の不動産賃貸から上がる純収益の現価と、期間末の不動産の売却で見込まれる純収益の現価を合計して算出する。これは総収益および総費用の変動を自由に設定できる点にも特徴がある。想定投資期間は、他の投資対象との比較や不動産市況のサイクル、収支の予測可能性とその精度、さらに賃貸運用のキャッシュフローと将来の売却益のバランスなどの要素で自由に想定できる。 従来の収益還元法は投資家が半永久的に不動産を保有し続けることを暗黙のうちに前提としていたが、DCF 法では、投資家は他の投資対象とリスク・リターンを比較して、投資の意思決定を行うことを前提にしており、不動産を一定期間(有期)保有することを想定している。 ●DCF法の適用方法 DCF 法の手順は次のとおり。
ただし、分析期間中の収支の変動の想定は容易ではない。特に日本では新規賃料と継続賃料の乖離や、借地借家法により長期賃貸借契約ができないこと、一時金の額が大きいことなどから収支の変動を合理的に予測することは難しい。 また、DCF 法では期間末の復帰価格(売却見込額)を、景気や金利、市況動向、建物の経年減価、売却費用などを総合して想定する。現在の価格を知るために、将来の価格を想定しなければならないわけである。現在のように市況の先行きが不透明な場合、復帰価格の想定は実務上最も難しい問題である。 さらに、割引率をどう設定するかという点がある。基本的には運用サイドと調達サイドの両方から論理的アプローチを行い、対象不動産の過去のパフォーマンスや不動産インデックス、投資家調査、取引事例から抽出した投資利回りなどを参考にして適切な割引率を算出することになる。 ●DCF法適用上の課題 DCF 法適用上の課題として、日本の賃貸借慣行や法制度、さらに情報開示の問題が挙げられることが多い。 賃貸借慣行や法制度にかかわる問題点としては、「借地借家法によってテナントの解約が自由なので、確実にキャッシュフローが見込める期間が読めない(特に一括貸しなどの場合はこのリスクが大きい)」(賃貸期間の不確実性)や、「市場賃料が上昇しても継続賃料がそこまで増額できない」、「賃料改定にスライド条項を設けても法的に無効になる可能性がある」(賃料改定の不確実性)などがある。その他にも、キャッシュフローを左右するほど多額な一時金の問題がある。 また、日本では不動産を投資対象として考える意識が薄く、割引率(投資利回り)についての共通認識が形成されていない。 「利回り」という言葉ひとつとっても、ある人は粗利回り(賃貸収入/価格)で話し、ある人は純利回り(ネット収入/価格)で話すなど、共通のスタンスできちんと論議されていない。 さらに日本では物件のヒストリカル・データが未整備なうえ、不動産市場が長く右肩上がりだったため、投資リスクを判断するために必要なデータや情報が入手しにくい。 将来の売却見込価格の査定についても課題は多い。 アプローチとしては、価格動向から見る方法と、還元利回りの動向から見る方法(復帰価格を直接還元法により査定)があるが、いずれにしても、市況の先行きが不透明な時期に将来を見通すことができるのかという疑問は残る。 ●DCF法のまとめ
第5回不動産評価コース
テーマ/「収益還元法(DCF法)の解説」 |
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