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■経済学から見た不動産市場 不動産市場とファイナンスPart 1 山形 浩生 株式会社野村総合研究所リサ−チ・コンサルティング部門 国際プロジェクト研究部研究員 |
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複雑な不動産市場の原理を解明し、将来を予測するような経済モデルはあるのだろうか。今回は、野村総合研究所の山形浩生氏をゲスト講師として招き、経済学から不動産市場と不動産価格を考える思考法を学んだ。不動産という特殊で複雑な財の価値を考えるうえで、新しい視点と考え方のヒントが示された。
●複雑な不動産市場 経済学では不動産市場の研究は緒についたばかりである。不動産市場の原理を解明するうえで、真に有効な経済モデルはまだわずかだが、経済学の考え方の基礎を知っていただくためにいくつかのモデルを紹介する。 不動産市場が複雑な理由は3つある。 異なる思惑をもったプレーヤーがたくさんいること(テナント、家主、投資家、ディベロッパー、ゼネコンなど) 、種々な条件が絡み合うこと(経済状況、ストック量、賃料水準、金利、インフレ率、地価、建築コスト等々)、それに耐久性が高いこと(いわゆる「耐久消費財のジレンマ」)が挙げられる。 ●「4象限モデル」 複雑な不動産市場の原理を解明するために、不動産市場を4つに分類し、それぞれの市場の関連性と市場を動かす原理を統一的に考えたモデルが「4象限モデル」(49ページ参照)である。第1象限はストック量と賃料、第2象限は賃料と物件価格、第3象限が建設市場、第4象限がストック調整を表している。それぞれの象限におけるプレーヤーの行動原理をモデル化することで、不動産市場の複雑なメカニズムがある程度解明できる。 このモデルに外部からの刺激(金利、経済、政策など)を与えると、各象限が刺激に連動して変化していき、全体として新しい均衡へ収斂していく。 現実の不動産市場はもっと動的で、必ずしもモデルのように新しい均衡に達するわけではないが、それぞれのプレーヤーおよび市場の関連を整理するうえで役立つモデルである。 ●不動産の価値を決めるもの 経済学では絶対的に価値を定義する方法はなく、相対的に決めるしかない。 不動産の価格を決める手法としては、市場が決める取引事例比較法や、かかった費用で決める原価(コスト)法、それに収益から導く収益還元法、後に説明するヘドニック・モデル(Hedonic Model)などがある。経済学ではこれらの値は一致すると考えるが、現実には一致しないことはご存じのとおりだ。 ちなみに「米国の不動産鑑定は収益還元法だ」と言われるが、現実は収益還元法だけでなく、原価法も取引事例比較法も使われている。特に住宅や更地では取引事例比較法を重視することが一番多い。収益還元法を使うときも、面倒なDCF(Discounted Cash Flow)ではなく、周辺の取引事例から算出したキャップレートで割り戻していることも少なくない。 理想的には3つの手法を一通り行うことだが、最後にそれらをうまく組み合わせるところで皆苦労しているのが実態だ。日本と違い、取引データがオープンになっているメリットはあるが、米国の鑑定も日本人が考えているほど精緻なものではない。実際、金融関係者からは「ブードゥー・アプレイザル」などと揶揄されている。 ●ヘドニック・モデル 現実によく使われるモデルとしてヘドニック・モデル(Hedonic Model)がある。これは賃料(価格)に影響を与える条件……たとえば最寄り駅から都心までの距離、駅から物件までの距離、構造、築年数、間取りなど……を係数にした方程式をつくり、これに膨大なデータを入れて回帰分析し、それぞれの係数を求め、対象物件の賃料 (価格)を算出するものだ。 ●動的モデルによる市場予測 次に、先の4象限モデルに「時間」の要素を入れた動的な予測モデルを紹介する。 これは各プレーヤーの行動が市場に及ぼす影響を追っていくものだ。たとえば、床需要の増加→賃料上昇→空室率低下→着工面積増加……というように、あるタイムラグをもって各市場が変化する原理をモデル化し、不動産市場のダイナミックな動きを捉えようとしたモデルである。 では、実際に東京23区の市場を対象にしたモデルをつくるという前提で簡単に説明する。 まず、テナントセクターでは、オフィス床需要に影響を与える要素として、ワーカー数(都内総生産)とオフィス賃料、ワーカーの伸び率(都内総生産の伸び率)の指標を使う。 賃料セクターでは、賃料に影響を与える指標として、空室率と床の潜在需要を用いた(床の潜在需要のデータはないため、代替指標として新規占有床面積が床ストックに占める割合を用いている)。 建設セクターでは、着工水準を左右する指標として、賃料水準と賃料変動率、空室率を用いた。 なお、それぞれの方程式では、これらの指標が市場に影響を与えるまでのタイムラグも加味している。 実際にこのモデルに基づいて、東京23区の賃貸オフィスビル(1975 〜1995年) の新規床需要、賃料変化、着工床面積を分析すると、東京についてはかなりよい結果が出ている。 ただ、過去のデータポイントが少ないことや、物件価格の要素が反映されていないという課題は残されている。 ●収益還元地価の限界 地価というものは、直接は定義できない。賃料から物件価格を算出し、物件価格から土地価格を算出するという二重のプロセスが必要になる。 賃料から物件価格を求めるとき使われるのが、キャップレートまたはディスカウントレートである。基本的な考え方は、賃料からネットオペレーティングインカム(NOI)を出して、それをキャップレートで割り戻す。 キャップレートは、 ・Real Return ・Inflation Premium ・Risk Premium ・Recapture Premium から構成される。 Real Return は収益率で、米国の場合は2 〜3%くらいが一般的。Inflation Premium はインフレによる目減り分を見込んだもの。通常、上記2つの和が30年国債のレートに相当する。Risk Premiumは次回、詳しく説明する。Recapture Premium は元本回収分である。これらを足したものがキャップレートだ。 キャップレートを使って割り戻した物件価格から上物価格を引くと理論的には収益還元地価が出る。 ただし、不動産市場の下降局面では必ずしもうまくいかない。たとえば収益還元地価がマイナスになってしまう場合もある。不動産市場の下降局面では、地価の持つオプション価値を考える必要があるかもしれない。この辺はまだまだ解明されていないところだ。 第4回不動産評価コース
テーマ/「不動産市場とファイナンスPart1」 |
| 山形 浩生 講義目録 |
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■第23期 '99.6.7 経済学から見た不動産市場 |
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■第23期 '99.8.23 不動産の割引率をどう決めるか |
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