■不良市場の実態と
 投資市場の基盤整備

デューデリジェンスと
   不動産インデックス


井上 明義 三友システム住宅融資株式会社代表取締役/
株式会社三友システム不動産金融研究所代表取締役

室津 欣哉 森ビル株式会社不動産鑑定担当副参事



室津 欣哉
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前半は、三友システム不動産金融研究所代表取締役の井上明義氏に、二重構造化(正常市場と不良市場)している日本の不動産市場の現状と今後をお話しいただいた。同社では年間約3万件の不動産鑑定および物件調査を手掛けているが、その豊富な実務経験のなかから「日本の地価は今後5年間で半額になる可能性がある」と語った。後半は不動産インデックスの現状と問題点について、室津氏が解説した。

井上明義氏
●不動産の価格とは
モノの価格は通常次の3つで決まる。第1は「取得コスト+利潤」、第2は「投資利回り」、第3は「需給関係」である。
しかし、現在の不動産市場では1と2は機能していない。不動産は仕入れから売却までの期間がケースによって大幅に異なり、コストを価格に反映しにくく、現状では仕入れコストを割って売却するケースも多い。投資利回りも長期利回りが予測しにくく、適正な投資利回りの基準値もない。さらに、換金性や投資期間、税制の違いなどによって、有価証券などの他の投資商品とは単純比較できない。
以上のように、1、2が共に機能しない現状では、不動産価格は需要と供給で決まることになる。

●需給から見た不動産価格
需給関係から見ると、供給を促進する要素だけで需要拡大の要素がない。たとえば、競売物件の増加、一般企業およびゼネコンの土地、不動産の売却増、住宅・都市整備公団(1999年10月より都市基盤整備公団)の値引き販売、外資が取得した不動産の売却増、容積率緩和などによる供給増など、いずれも供給を促す要素である。市場は供給過剰になり、今後5年間に地価は半値になるおそれがある。
この一因は政府にある。
供給促進政策だけで、有効な需要喚起策が打たれていない。税制上の優遇措置でマンション販売は好調であるが、これも需要の前倒しであって、需要そのものを拡大させるものではない。譲渡益課税の減税も不動産の売却を加速させる要素である。


●二重構造の不動産市場
さらに、日本の不動産市場は、需給によって価格が決まる正常な市場と、そうしたメカニズムの働かない不良市場(競売市場)の二重構造になっている。この不良市場を早く処理しないと正常な市場までが混乱してしまう。
東京地方裁判所における競売市場では年間1万2,000〜1万3,000件が開札されているが、落札されるのは4 〜5割。競売の申し立て受理から開札までの期間は平均2年4カ月と非常に長い。批判を受けた裁判所では、手間のかからない案件を先に進める方法をとるようになったが、本当に必要なものを後回しにしているのであって、根本的な解決にはなっていない。
競売では抵当権設定額に対して最低落札価格を決める。この金額で落札したとしても、回収額は10〜12%程度である。
不良債権の総額は大蔵省や日銀も本当のところはつかんでいないようである。100 兆円とも言われているが、実際には200 兆円近いのではないかと思われる。


●デューデリジェンスとは 2〜3年前、外資の不動産買いが話題になった。この際、外国の投資家から「日本ではデューデリジェンスも行われていない」という批判が上がった。「デューデリジェンス」がグローバルスタンダードのように言われているが、世界共通で使われている言葉ではない。直訳すれば「当然、行われるべき適切な調査」。不動産の場合は「不動産の売買等を行うか否かの判断、および価格等の提示に先立って行われるべき適切な調査」と解釈される。

●還元利回りについて
日本では市場データが公開されていないため、還元利回りに関する分析が弱く、現状では適正な還元利回りを出すことは不可能に近い。前述のように他の投資商品との単純比較もできないし、時系列な分析から出すことも難しく、単純な海外比較もできない。加えて時間と費用の制約もある。
まず、不良債権処理による市場の正常化や真の基盤整備が先決であろう。


室津欣哉氏
●不動産インデックスとは
不動産証券化を進めるために、早急に投資市場のインフラ整備をすべきだという声が上がっている。具体的には、不動産インデックスの整備、投資顧問業の育成、情報開示などである。
不動産インデックスとは、不動産投資の平均的な収益性を示す指標で、投資判断の目安となるものである。通常は、単年度インカム収益率と単年度キャピタル収益率の和で総合的な利回りが示される。この算出式で使われる分子の純収益は賃料収入から諸経費を控除して算出できるが、問題は分母のキャピタル価格をどう見るかである。キャピタル価格=収益価格ならば、結局「利回りを何%とするか」に帰結してしまう。
また、「公示価格+建物価格」としているものもあるが、はたしてその価格で現実に取引が行われるのかという疑問がある。


●市場の正常化が先決
「情報開示が進まないからインデックスがつくれない」という声をよく聞くが、そもそも、収益価格で取り引きされる事例がある程度出てこない限りは、参考になるインデックスはつくれないだろう。分母は、実際に取引できる価格であるべきだが、現在は取引市場そのものが麻痺している。井上社長が述べたように、不良債権の処理を早急に進め、正常に機能する市場にすることが先決である。
そのためには、経済の立て直しはもとより、長期的な土地政策の方針を早急に打ち出す必要がある。先行きが読めない限りは、不動産投資や不動産開発も進まず、資産デフレにストップをかけることは出来ないであろう。



第3回不動産評価コース

テーマ/「デューデリジェンスと不動産インデックス」
ゲスト/井上 明義(三友システム住宅融資株式会社代表取締役/
     株式会社三友システム不動産金融研究所代表取締役
コース指導/室津 欣哉(森ビル株式会社不動産鑑定担当副参事)
日時/1999年5月24日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


室津 欣哉 講義目録
■第23期 '99.4.26
 「地価」と「不動産価格」の違い
■第23期 '99.5.24
 不良市場の実態と投資市場の基盤整備
■第23期 '99.7.5
 住居用不動産の価格分析
■第23期 '99.7.12
 オフィスビルの価格分析
■第23期 '99.8.30
 不動産の評価と今後の課題

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