| ■蓄積ノウハウを業務スタイルに反映 〜社内組織としてのCM 古川 裕之 株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ コンストラクションマネジメント部長 山田 幸夫 株式会社久米設計 取締役常務執行役員プロジェクト開発本部長 |
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古川裕之 |
| ■川上部分での顧客満足度を向上 NTTファシリティーズは、NTTグループが100%出資する子会社である。社内営繕を担当していた建築部門を独立させ、グループの電力、建築、ビル管理を担当する企業として平成4年12月に設立された。従業員数は平成13年3月末現在で6,600名である。 当社の売り文句に「FM(Facility Management)/CM(Construction Management)サイクル」がある。グランドデザイン、企画、設計、工事監理、保守運用、改善提案と、一連の業務を一貫して行い、また始まりのグランドデザインに戻る。それを「FM/CMサイクル」と呼んでいる。このサイクルを可能にするのが、NTT時代から蓄積したノウハウと社内組織である。 NTT時代に当社が蓄積したノウハウは、NTTグループの社内営繕に関する広範なノウハウであり、組織として備えていたのは、企画から維持・管理までの一貫業務体制である。また、電話の即日開通を目的とした大量建設を確実に実行するために、標準設計や品質の均一化、工期を短縮する方策などに取り組んできた。個々のプロジェクトについてファーストトラックや提案見積もりなどいろいろな契約方式も考えた。そうした広範なノウハウをCMに活かそうと考えている。 ■顧客の不満は川上業務に集中 日本建築学会のシンポジウムで発表されたアンケート調査によると、建築家自身が川上業務において、チーム編成、予算計画、日程計画などの業務を提供していないことを認識している。一方、建築主も、予算計画、コストコントロール、維持保全計画といった川上の部分に不満を感じている。 問題は川上の部分に集まっているのであり、川上部分での施主の不満を満たせれば顧客満足を向上できる。我々は、PMあるいはCMの定義にこだわらず、顧客満足の向上のためにすべきことを考えたい。 顧客満足を高めるためには、プロジェクトの企画段階で参画することがポイントである。コストの8割方は企画段階で決まるのだから、企画段階から参画できれば効果 が大きい。 現実のプロジェクトでは一貫して任せてもらえるわけではなく、部分を手伝うケースもある。それもCMであるが、顧客の利益を考えると、川上から参画した方がより効果 を上げられるだろう。そうした点に対する理解度がまだまだ低いように思う。 ■日本の文化に合ったCMを 今、建築主の意識が変化し、要求レベルが高度化している。独立した専門家がマネジメントするCMが登場することで、徐々に建築業界に新たな展開がもたらされるだろう。 ただし、CMの問題はマネジメント能力を備えたCMrが絶対的に不足していることである。CMに対する共通 認識、業務認識が確立していないことも問題である。 これらの問題を解決するために、CMの普及啓蒙を進めていかなければならない。また、日本の文化にマッチしたCMをつくらなければならない。アメリカのCMをそのまま日本に導入しても、日本の文化には合わないだろう。CMの調査・研究、CMrの育成、CMrの業務標準の策定は必須である。 日本では一式請負が一般的だが、CMにもいくつかの契約形態があるのだし、契約形態はいろいろあっていいと思う。要は、すべての契約形態のメリットとデメリットが整理され、施主が選べる情況が必要なのである。 もちろん、施主の意識改革も必要である。ゼネコンは設計を無料で行い、工事を受注してきた。そのため、施主にはフィーに対する意識が薄く、モノには金を払うが、ソフトには払わない風潮をつくり出してしまった。施主に委任業務に対するしっかりとした認識がなければ、日本でマネジメント業務を形成することは難しいだろう。 CMrは多くの知識が必要であるが、最も重要なものは資質である。いくら知識が豊富であっても、資質がなければCMrに向かない。むしろ多少知識が不足していても、優れた資質があればプロジェクトをまとめていける。特に大切な資質は問題処理能力とトラブルを予知する能力である。 もう1つは組織力である。施主の要求に応じた体制を構築でき、設計者や施工者をコントロールするパワーが必要である。そこでは、コミュニケーションやリーダーシップの力もいる。 要約すると、CMrは専門知識だけでなく、マネジャーとしての対人能力、リーダーシップ、組織力が重要であるということだ。 |
山田幸夫 |
| ■プログラムマネジメントの時代 ここ数年の間に、建設業界の情況、建築事務所を取り巻く環境が大きく変わった。かつては、土地の持ち主が自分の資金で開発を行うのが一般的であり、建築事務所は与えられた条件に沿って、建物を設計すればよかった。 しかし現在は、土地を持っていても開発する資金がなく、開発構想を持ち得ない土地所有者が増えている。一方には、投資意欲はあるものの、投資対象が見つからない投資家がいる。外資などである。さらに、事業意欲はあるが、資金も土地もない人間もいる。 建築事務所は今、このような3者を引き合わせ、結婚させる役割を果たさなければならない。また、結婚に必要な開発プログラムを提案しなければ、開発は動かない。 久米設計の本社は、業務、設計、プロジェクト開発、環境技術、総務の5本部で構成されている。プロジェクト開発本部は、都市開発を含め広域・巨大・面開発を担当する。 同本部内のPMセンターには、社内で育成した12名のプロジェクトマネジャー(PMr)が所属している。この12名のメンバーが、社内のPMr、CMrと してプロジェクトに参加していくのである。 当社はプロジェクトごとにCMrのチームをつくることを基本としている。PMセンターをコアにして、案件ごとに設計部、コストコントロールセンター、PMセンターから人材を出してチームを結成するのである。 ■素早い対応がチームの要点 案件ごとにチームを編成する利点の1つは、人材を効率よく活かせることである。PMあるいはCMには、病院、高度な生産施設、特殊な大学など特殊な知識を要する案件も多い。それらに精通している人材をすべてPMセンターにキープしようとしたら膨大な数になってしまう。それは不可能である。 社内には特殊な建築を得意とする人間がいる。そうした人間を選抜して設計本部内に設計チームを編成する。その一方で、PMおよびCMに精通している人間を中心にCMrのチームを組む。この2人をコアにして、サポートする人間を集めるのが当社の基本である。 チームの機能として最も重要なことは、クイックレスポンスである。施主側から出された課題に素早く回答を出さなければならない時代である。当社がインハウスでCMrのチームを持つ意味は、そこにある。 実際の業務では、内容に応じて臨機応変にCMrのチームのサイズを調節する。これもCMrのチームをインハウスで持つことのメリットである。 Fリゾートクラブは、工期が非常に短く、しかも低予算で高品質を求められた事例である。通常であれば、設計、許認可、工事、オープン準備を合計すると20カ月かかるところを16カ月で仕上げなければならなかった。設計だけでは解決できない施主の要求であったため、CMをスタートさせた。このケースの特徴は、非常に厳しい要求をクリアするために、一種のアットリスク型CMを行ったことである。 建設会社には、当社の設計を基にしてバリュー・エンジニアリング提案およびコストダウン提案を行ってもらい、その内容によって建設会社を決めた。特色は、工事中に設計変更を行い、工事費を削減する旨の協定を建築会社と結んだことである。 ちなみに選んだ建設会社の見積額は68億円であったが、予算は工事費のほかリゾート施設の設備、従業員のトレーニング費用など一切を含めて54億円しかなかった。この差を埋めるべく、走りながら改良を進め、コストダウンを実現しなければならなかった。 このような特殊の方法をとったのは、着工までに建設コストを細かく調整している時間がなかったからである。当社にクイックレスポンスの体制があるからこそ採用できた方法である。 ■顧客に「ウォンツ」を提供 PM、CMは現在、実践による淘汰の段階である。また、ジャパナイゼーションの最中であり、定着するまでには数年かかるだろう。 今や設計だけでは顧客満足を得られないプロジェクトが急増し、設計の業態は大きく変わろうとしている。経済の低迷、事業スキームの多様化、グローバル化、IT化などを背景として、施主は何を建築すればいいかわからない状態である。 施主自身が与条件を持ち得ない情況になっている今、我々は、ニーズではなくウォンツを提供していかなければならない。それは、まさにコンサルタント業務である。 PMにはいろいろな意味があるが、今は「プログラムマネジメント」と考えるべき時代であろう。土地の所有者、資金のある人、事業意欲のある人を組み合わせていくことである。 CMにコストダウンだけを期待されることもあるが、それだけでは効率が悪い。ありとあらゆる戦術を駆使してコストを削っていくのであり、透明性を確保すればいいという問題でもない。CMとは、建築だけをマネジメントするのではなく、ある時はコストマネジメントであり、またある時はクライアントマネジメントも行う必要がある。 |
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テーマ/「社内組織としてのCM 〜その定着と発展〜」 |
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