| ■時代が求めるCM 〜一括請負との間をゆらぎつつ採用増へ 犬飼或男(いぬかい いくお) 株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ取締役 嘉納 成男(かのう なるお) 早稲田大学 理工学部教授 |
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犬飼或男 建設産業の経営環境が一変 |
| ■CMはマネジメントサービス 今、日本の建設産業を取り巻く環境は大きく変化している。10年ほど前から市場開放と規制緩和が叫ばれている。また、プロジェクトが高度化・複雑化するなかで、発注者ニーズが多様化している。特命発注から競争入札へ変わるとともに、発注者は競争原理の活用による透明性確保とコストダウンを強く期待するようになった。そうした状況下でCM(Construction Management)方式が注目され始めた。 CMとは、発注者の要望を実現することを目的に、実績があり訓練を受けた個人または組織が特定のプロジェクトに対して行うマネジメントサービスである。欧米では特徴として3つある。ファーストトラック(工期の短縮)、オープンブックによるコストの透明性の確保、CMr(Construction Manager)が発注者側の立場で工事業者からのクレームを処理する、の3点である。 CMrの業務は、クライアントの立場でマネジメント技術を活用することである。コストの透明性の確保、適正なスケジュール、品質を保証するための管理体制の確立などの仕組みづくりが主な業務である。 CMrはまた、自己の利益を追求しない。なぜならば、工事を請け負うのと異なり、マネジメントそのものがフィービジネスであるからだ。 ■発注者は工事業者と直接契約 CMには、「ピュアCM」と「GMP(Guarantee Maximum Price)付きCM」の2つの方式がある。ピュアCMはエージェントとしての業務を遂行するCMである。日本ではこの形態が多くなるだろうと予想される。 GMP付きCMも、当初はピュアCMとして業務を開始する。しかし、設計のある段階でCMrが工事費を見積もり、最大保証金額を発注者に提示するのが特徴である。 CM方式は発注方法にも特徴がある。発注者は総合建設業者および専門工事業者と直接契約を結ぶことになる。これは、欧米の総合建設業は躯体工事が中心であり、日本のゼネコンのように仕上げまでのすべてを手がけることが少ないからである。 また、欧米では施工と設計が明確に分離されている。設計者と施工者はあくまで分離され、両者がコンソーシアムを組むのが欧米流のDB(Design Build)である。 ■業界の歪み是正策として期待 昭和の初めに完成した丸ビルと三井本館は、実費精算報酬加算式という今で言うCM方式で建設された。昭和の初めにおいては、日本も欧米もやり方に大きな差がなかった。 しかし、日本の建設産業は戦後の高度成長期を経ていい形で変わった一方で、歪みも生まれた。1980年代後半から日米建設協議が始まったことに加え、談合の問題が強く国民から非難されたこともあって、日本建設業団体連合会は刷新検討委員会を設立し、CMの啓蒙を開始した。 1995年の4月には、学識経験者、ゼネコン、発注者側も含めた建設産業委員会が、建設産業政策大綱を策定した。同大綱は、変革と競争の時代の到来と、建設業に対する国民の不信感を指摘しつつ、将来を見据えて建設産業のあり方を提言した。その一環としてCM業務について検討することが大綱に盛り込まれた。 CMに期待されるものは、マネジメント技術である。コストやプロセスに関する透明性を追求し、競争原理を活用する成果としてコストダウンが実現されるのであり、「CM=コストダウン」ではない。 本コースではこのようにCMrに期待される姿を理解していただきたい。CMrはスーパーマンでもなければ、打出の小槌を持っているわけでもない。幅広いネットワークとマネジメント技術によってCMに期待される業務を遂行し、プロジェクトを成功に導く努力がクライアントから信頼を得られることになる。 |
嘉納成男 発注者側の意識も変化 ■見直される「生産体制」 従来の一括請負方式が悪かったわけではない。時代の求めに応じた、それなりに良いシステムであった。しかし、時代の変化とともにCMの採用が求められている。 現在の日本のCMはどこか怪しげである。ゼネコンに依存しているし、発注者のリスクがないがごとく口約束をしている。ただし、何事も初めは怪しげなものである。怪しげだから「日本のCMはおかしい」というのは当を得ていない。これから徐々に良くなっていくと考えたい。 建設生産には「生産体制」「技術」「建築物」「顧客・社会」という4つの軸がある。この中で戦後間もない時期に重視されたのは「生産体制」である。多少怪しげな建設業者であっても、建てられれば良しとする時代だった。 組織的基盤ができてゆとりが生まれると、次に技術面が重視された。技術面が飽和状態になると、建築物の質が意識され、さらに1990年代に入ると、単に質的に良いものを建てるだけでなく、顧客が満足するものを建てることが重視されるようになった。 この流れは循環し、一巡すると元に戻る。つまり、今は「生産体制」を重視する時代に戻りつつある。顧客満足度を追求した結果、生産組織の問題点に気付き始めたのである。顧客満足度を改善するには、建築の産業組織に対して、何らかの手だてを加えなければならないと考えるようになったのである。 ■建設生産に現れる「ゆらぎ」 欧米でCM方式が成功しているからといって、日本で成功するとは限らない。日本でCMを行おうとすれば、携わる人が慎重に考えて、欧米型を踏襲するのではなく“日本型CM”を構築しなければならない。 社会の動きには、大きなトレンドに向けて、積極的な展開から消極的な展開、さらには消極的な展開から積極的な展開を繰り返す「ゆらぎ」がある。また、大きなトレンドとして、ある方向に向けて進んでいく「変化」もある。 CMも「ゆらぎ」の1つであろう。日本型CMができたとしても、CMが発注の大半を占めるようになるとは考え難い。長期的に見れば、CMと一括請負の合い間を振れながら、時代に合った発注方式が採用されていくのであろう。 他に建設生産の仕組みにおける「ゆらぎ」として挙げられるのは、外注の方式が「下請けとしての外注」と「企業連合としての外注」の間で揺れる動きである。同様に、建設生産の目標は「質の向上」と「コストダウン」、建設活動の内容は「新規建設中心」と「改装・保全工事中心」、設計・施工は「設計・施工統合方式」と「設計・施工分離方式」、協力会組織は「専門工事業の技術向上への貢献」と「工事費の低減への障害」の間をそれぞれゆれ動くことになるだろう。 ■CMの理解度は低調 発注側の意識を調査するため、上場企業2,000社を対象に、1992年、1997年、2000年の3回にわたってアンケート調査を行った。同アンケートの眼目の1つは、CM方式に対する意識調査である。 CM方式を採用していたり、採用を検討している企業は回を追うごとに増加している。それとは逆に、「一括請負を続ける」とする企業は回ごとに減少している。一方、「不明点が多く判断できない」と「分からない」を合計した回答は全体の半分近くに達していて、CMに対する理解度がまだ低いことが分かった。 CM方式による発注希望先は、「信用できるCM企業」が第1に挙げられた。以下、「信用できる建設会社」と「信用できる設計事務所」などがほぼ同比率で続いており、建設会社や設計事務所を発注先として選ぶ比率は予想以下であった。 この調査から見えた発注者側の意識をまとめると、まず、1990年代において、発注者の提案プロジェクトに対する考え方に変化が起こっていることが挙げられる。また、コストの透明性や責任の所在の明確化に対するニーズの高さも特徴である。一方、リスクを負担することには消極的である。 CMに対する意識は高いものの、原価精算方式に対する拒否感は強く、一括請負方式に頼る傾向は根強い。VE(バリューエンジニアリング)提案制度の重要性に対する理解は高まっているが、その成果に対する報酬の支払いへの理解は低い。 アメリカでCM方式が普及したのは1970年頃からである。普及した主たる背景としては、「不況に苦しんでいた」「建設会社が一括請負に伴うリスク負担を敬遠するようになった」「過当競争により、コスト競争だけでは正当な利益を生めなくなった」などが挙げられる。 こうした状況は、現在の日本の状況に非常に似ている。日本型CM方式を導入するうえでの障害は多いが、一括請負方式との間をゆれ動きながらも、徐々にCM方式が増えていくことだろう。 |
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コンストラクション・メネジメントコース テーマ/「時代の要請とCM」 |
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