都市創造に臨場する
知的好奇心をくすぐる「六本木ヒルズ・インフォメーションセンター」

 扉を開けた瞬間、目の前に広がる港区全域の1,000分の1模型に、多くの人が思わず息を飲む。展望台から見る眺めがすぐ手の届くところにあるという不思議な感覚は、人を興奮させるものがあるようだ。---ある記者は驚きから覚めると丹念に模型を点検した後、制作方法を聞いてうなり、カメラマンはこの素材を写真として表現する最適なアングルと手法を探して走り回った。これは、2003年のオープンに向けて開発が進む「六本木ヒルズ」隣接地に、森ビルが情報発信や営業活動の拠点として設置した「六本木ヒルズ・インフォメーションセンター」での出来事。残念ながらいまは完全予約制で一般公開されていないが、将来的には一般公開も検討しているという。  5.1メートル×7メートルのなかに忠実に再現された港区全域模型の上部には、可動型のCCDカメラが設置され、ヘリコプターで遊覧しているかのような映像が映し出される仕掛けも---。  また、港区の模型の横には、超高層ビルが林立する米国マンハッタンの同スケールの都市模型が並んでいる。対比して見れば、超高層・高密度都市「マンハッタン」と平面過密・垂直過疎都市「東京」の違いは明らかだ。  驚きはこれだけではない。六本木ヒルズの200分の1模型の迫力に再び絶句。低層部のディテールまで精巧に再現された模型は、六本木ヒルズの昼の表情、夜の表情をライティングで再現。天井に組み込まれたプロジェクターから直接模型に投影されるモニターで様々な情報が映し出される。周囲に設置されたモニターを操作すれば自由に情報検索もできる。  模型から窓へと目を移せば、眼下に“生の”六本木ヒルズの工事現場が広がる。さらに工事現場の全貌を眺めようと思うならばビル屋上の展望コーナーへ。高所恐怖症の方にはおすすめできないが、新都市建設のプロセスを目撃できる。風に吹かれて見入っていた見学者のひとりが、帰り際、「久々にロマンを感じた」とつぶやいた。  都市再生が政策の柱のひとつになったが、都市再生のプロセスを目にする機会は少ない。このブラックボックスをホワイトボックスに変えようと試みたのがこのセンターである。「再開発の工事現場を見せる」という発想は、ベルリンのポツダム広場に設置された情報センター「info box」にヒントを得たという。かつてワイマール文化の中心として栄え、第2次世界大戦後に分断された悲劇の都市・ベルリン。そして、1990年の東西ドイツ統一。急激に変わるベルリンの「今」をこの目で観たいという人々が、世界各地から「info box」を訪れ、観光名所になった。  「六本木ヒルズ・インフォメーションセンター」は、「info box」にヒントを得ながらも、デジタルの技術を駆使した全く新しいプレゼンテーション施設に仕上がっている。ここを訪れた様々な分野の人々が一様に驚き、知的好奇心を満足させて帰る舞台裏には、見学者ひとりひとりの興味に合わせた独自のプレゼンテーション技術とホスピタリティがある。