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■e-ビジネス創造の3つのポイント
國領 二郎 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授/ 慶應義塾大学ビジネススクール教授 |
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80年代後半不景気のどん底にあった米国は本業回帰の大きな波の中で、大胆なM&Aを行うという辛いプロセスを通して非常に柔軟な改革し易い企業構造を作りあげ、90年代再び世界経済の主役に躍り出た。一方、バブル崩壊から未だに立ち上がれずにいる日本はIT革命に再生の糸口を求めようとしている。eビジネス時代に日本が生き残るにはどうすればいいのか。eビジネスの本質と日本再生への課題について國領氏にお話しいただいた。 ■ビジネスモデルを創造する eビジネスの意義は新しいビジネスモデルの創造にある。eビジネスで成功している会社は情報技術によって可能になった新しい仕事のやり方を生み出しているところで、今までと同じビジネスモデルに情報技術を取り入れただけでは成功はできない。 ビジネスモデル創造のポイントは以下の3点で、様々なビジネスモデルが出てきた時にこの3点について考えてみると、何が起こっているのかが浮かび上がってくる。 (1)誰のためにどんな価値を提供するのか 今、文具や出張チケットを手配する業界では、法人市場向けに法人顧客のイントラネットに入り込むことが競争の焦点になっている。イントラネットの利用は表面的には紙の発注が電子発注に変わっただけに見えるが、実は導入によって顧客企業側のコストを削減することができる。顧客企業は経費管理のための人員を減らすことができるほか、リアルタイムで経費管理ができ、さらに日当や人件費、支払いなどのシステムとリンクすることによって一括処理ができるようになるからだ。 こうなると、文具や出張チケットを手配する会社は単にモノを売っている会社ではなく、提供する付加価値の大きな部分は顧客企業の間接部門コストを下げるということで、そのオペレーションのアウトソーシングを請け負う会社ということになる。発注方法を変えるだけと思っていたら、実は付ける付加価値が全く違ってくるということにビジネスでは注意する必要がある。 (2)どのように価値の生産と供給を行うか サプライチェーンマネージメント(Supply Chain Management/SCM)と呼ばれる考え方がある。調達、生産、販売から商品の配送までを総合的に管理し、各過程の無駄なコストや時間を排除するという管理手法だ。例えば、デルモデルは見込み生産を注文生産に変えることにより、中間ディーラーを介せず、メーカーが直接お客様に販売・配送をするというシステムを作り上げたSCMの代表的なケースだ。もちろん、デルモデルがどの業界にもうまく当てはまるわけではなく、業界によっては情報化を進めれば進めるほど中間流通が重要になるところもある。だが、このようなサプライチェーンを抱えて、全く違う仕組みで競争を仕掛けると既存の有力な会社はなかなか対抗ができないという強みがある。 (3)レベニューとインセンティブの設計 ネットの世界では今まで有料だったものが無料になってしまうことがよくおこる。そのため、誰からどのようにお金をもらうかをきちんと設計することがネットビジネスでは重要になる。同様にお金を払う場合も、現金だけでなくストックオプションによる場合など様々な報酬付与の方法があり、報酬の与え方についてもきちんとした設計が必要になる。 ■ビジネスモデルの3類型 世の中にあるビジネスモデルを考察すると以下の3つに分類できる。 (1)情報の非対称性構造を変化させるビジネスモデル 売り手と買い手の持っている情報落差が大きい場合にその落差を縮めるところに生まれるビジネスモデルで、情報提供サイトやオークションサイトなどがこれにあたる。例えば、自動車販売サイトの「オートバイテル」の場合、車の基本情報はもちろん、車の陸送価格、ディーラーのリベートなど、価格についての様々な情報を顧客に提供している。このサイトの収益はディーラーからあがっているが、ディーラーは見返りに極めて購買率の高い優良顧客のリストをえることができる。 オークションはeコマースを考える会社にとっては、今や最もポピュラーな手法になっている。その理由はオークションは売り手にとって高く売れる場であるからだ。例えば、モデルチェンジで売れ残ったプリンターは、今までなら店頭で安売りをするか、あるいは現金買取をしてくれるところに安く引き取ってもらうしかなかった。だが、世の中には古いものでも、その型が欲しいという人がいて、その人を見つけ出すことができれば定価で売ることができるわけだ。需要と供給の情報のマッチングはネットの活用によってはじめて低コストでできるようになった。そして、ほとんどすべての業界には迷子になった需要と供給があり、それらをマッチングさせる新しいビジネスのチャンスがある。 (2)認知限界制約を緩和するビジネスモデル 人間の認知能力には限界があり、情報を受け取る側は膨大な情報には対応しきれない。そこでお客様のために、膨大な情報の海の中から欲しい情報をスクリーニングして、提供するということが価値=ビジネスになる。 認知能力を特に大量に消費するのは相手を信じるプロセスである。そのため、お客様のプライバシーを預かりながら欲しい情報を提供すること、また逆にお客様からこれが欲しいとリクエストがあった情報をプライバシーを守りながら川上に対応することの価値はネットでは極めて高い。 (3)情報の非物財的特性を生かすビジネスモデル 情報は追加一単位を供給するコスト(限界費用)が極めて低いという性質を持つ。経済学では価格と限界費用が一致したところで市場が均衡すると言われ、それに照らせば、ネットの情報の価格は限りなくゼロに近くなってしまう。そこで、固定費を回収するためにパッケージソフト販売に代表される疑似物財化モデルや無償ソフトモデルなどのような工夫が必要になる。 無償ソフトモデルはさらに広告型、補完財型、情報収集型、奉仕型などのモデルに分類できるが、中でも注目されるのは情報収集型のモデルである。ネット上のお客様はあまり浮気をしない“スティッキー”な性質を持っている。例えば、ランドセルを買ってくれたお客様にさりげなく学習机を勧めてみると高い購買率がえられたりする。ここでは顧客リストや顧客の販売履歴が重要で、もしこのモデルでビジネスをする のならプライバシー管理には厳重な注意をはらう必要がある。 ■eコマースの本質 eコマースの本質は供給連鎖の再編(Supply Chain Management/SCM)と関係性のマネージメント(Customer Relationship Management/CRM) の2つのキーワードで言い表わすことができる。 SCMは一般的には在庫管理や物流管理の話と理解されているが、まずは一歩下がってSCMの導入によって自分の業界の産業構造がどう変化するのかを踏まえた議論をする必要がある。例えばPC業界の場合、自社のCPU、OS、ソフトで製品を作るという「垂直囲い込み型」の仕組みだったのがここ20年ぐらいの間にCPUならインテル、OSならマイクロソフトという具合に「水平展開型」の仕組みに変わってきている。水平展開化が起こりやすいのは、開発コストは高いが追加生産コストが低く、かつ、いろんな会社の製品を組み合わせるとトータルなシステムになるというモジュール構造を持っている業界だ。 ところで、多数の技術を複合したシステムの設計方法として統合型とモジュール型がという考え方がある。日本は70年代のオイルショックを乗り越えるプロセスにおいて、徹底的にシステムから無駄をなくす統合型がよいとされてきた。しかし、いま日本が学ぶべきはシリコンバレーの強さの源でもあるオープンなモジュール型が生み出す創造性の高さであろう。 eコマースは単にネット上で売ったり買ったりすることと考えられていることが多いが、その本質は単なる受発注の手段ではなく、顧客との「関係」を構築する空間である。ネットをうまく活用している会社を見ると、売り買いの部分よりもカスタマーサポートなどの「After Sale」の部分でネットが活用されていることがわかる。例えば、昨年パソコンを買ってくれた顧客に保証期間がもうすぐ終了する旨のeメールを出すとする。顧客に良いイメージを与えるのはもちろん、顧客からのレスポンスがあれば製品の問題点の収集ができ、今後の製品開発にも役立てることできる。eメールを出すことが次の、そしてすべての商売の最初のきっかけとなるわけだ。このように「After sale」→「Before Sale」→「Point of Sale」がサイクルとして流れ出す関係を顧客と構築する有力なツールがネットなのである。 顧客との間にこのような関係が構築されると生産・消費の構造も変化する。すなわち、売り手からの一方的なコミュニケーションは売り手と顧客の双方向コミュニケーションに変化し、さらに顧客間のインタラクションが発生すると、顧客の情報発信が価値を創造するようになる。 ■日本が生き残るために これまで述べてきたように、ネットワーク経済の本質とは、(1)断片化され、散在していた情報がネットワーク上で巡り会い、編集されて新たな価値を生むということ、(2)ネットワークの価値を活かすオープンアーキテクチャの採用で爆発的なイノベーションの連鎖反応が社会的におこりうるということ、(3)個人が主体的に情報を発信し、社会の進路を決める参加型の社会が構築されるということだ。この3つ性質を理解し、ネットを上手に活用していくことがこれからの重要なポイントであり、ビジネスチャンスにもなる。 日本の強みは、感度が高く、厳しい消費者がいるということ、そして何でも願望を形にすることができる優れた製品開発力と生産ネットワークがあることだ。製造業の情報化、ネットワーク化を進め、消費者の感性を形につなげる部分でデジタルを活用し、シームレスなシステムを作り上げることは日本経済再生の一つの鍵になるだろう。また、物理的にはリーンでソフト的にはオープンなシステムを狙っていくところにも日本の可能性がある。 そして最後に目指すところは、活力があって生活者に優しいオープンアーキテクチャ社会を構築することだ。すなわち、バリアフリーの経済空間を構築し、健常高齢者や身体障害者、高学歴で能力のある子育て中の主婦などもアクセスし、価値生産活動に参加できる空間をまずはネット上に、将来的には物理空間に作り上げることが日本が生き残るための究極の形だと思う。 第2回必修講義
テーマ/「eマーケティング時代のビジネスモデル」 |
| 國領 二郎 講義目録 |
| ■第25期 アカデミーヒルズインタビュー |
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■第25期 '00.11.2 eマーケティング時代のビジネスモデル |
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■第24期 '00.5.11 e-ビジネスのチャンス到来 |
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