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■先進各国の不動産証券化商品
米国、豪州、独国の集団投資スキームを比較する 岡田 直美 あおぞら銀行投資銀行部 不動産ファイナンスグループ調査役 |
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日本版REIT市場の創設を目指して、投資信託法改正が検討されている。いよいよ日本に「会社型ファンド」が登場するわけだが、この検討過程で当局も参考にした先進各国の不動産証券化について見てみよう。ゲスト講師に日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の岡田直美氏を招き、主に米、豪、独の証券化について、その歴史や概要、特徴をお話しいただいた。講義を通じて各国の不動産証券化が、それぞれの歴史や思想を反映していることが浮き彫りとなった。 ■先進各国の証券化の違い 日本でも日本版REIT市場の創設に向けて投資信託法改正などの準備が進められているが、これに影響を与えた米国、独国、豪州の不動産証券化商品を中心に見てみよう。 各国の証券化商品を「投資家の持ち分価値が何によって決まるか」という切り口で大別すると、市場の需給で決められる米国型REITと、資産価値に連動する独国型のオープン・エンド・ファンドが両極にある。豪州は米国に近いものの、運用の外部経営性という点で日本が目指す不動産投資信託に似た構造を持っているため、多くの関係者が豪州に飛び、情報収集や研究をしている。また、ここでは詳しく触れないが、フランスは米国と独国の中間に位置づけられ、日本の不動産特定事業法に近いスキームをとっている。 このように、ひとくちに不動産証券化といっても、各国の産業構造・法律・歴史的経緯のもとに、それぞれの国に応じた特徴を持つ制度がつくられている。 ■米国REIT発展の経緯 米国では1960年に内国歳入法の改正で現在のREITが誕生したが、その原形は1900年代初めにできたビジネストラストである。 REITの盛衰を辿ると、1968年にFRBによる金利引き上げが実施され、銀行やS&Lの建設・不動産業への貸出しが縮小するなかで、それに代わるデットファイナンス手段としてモーゲージ・リートが拡大した。その後、金融緩和下でもREITは短期資金調達・長期開発プロジェクトへの貸付けで利鞘を得ていたため、1973年の金融引締めと石油ショック不況を契機に破綻。1980年代の建築ブームで回復したものの、経済復興税法(1981年)で税制上のメリットを享受できるリミテッド・パートナーシップ(LP)が台頭した。1986年には税制が改正されてLPの節税効果が消失し、REITへの注目が高まった。また、REITに自己所有不動産の運営管理が解禁され、不動産会社がREITに参入するモチベーションとなった。 さらに1992年には、REITに現物出資した際の譲渡益税の繰り延べができる仕組み(UPREIT)が開発され、1993年には年金基金によるREIT株保有を容易にする措置ができた。これらによってREITは急拡大期を迎えたのである。 上場REITの年別発行額の推移を見ても、1993年から急激に伸びている。1997年に短期売却益制限(総所得の30%未満)も廃止され、REITの発行額はピークを迎えた。 直近の動きとしては、95%以上だった配当要件が90%以上に緩和され、管理子会社による他社受託もできるようになる(2001年から実施)。 ■米国REITの基本スキーム 米国REITとは、米国内国歳入法の一定要件を満たせば会社またはビジネストラストが法人税を免除される制度である。投資家の二重課税を回避できる仕組みを備えた一般的な株式会社と捉えるとわかりやすい。日本の投資法人制度は「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資法人であり、一般株式会社である米国REITとはやや異なる。むしろ日本版REITは、REITに所有不動産の自家運用が認められる1986年以前の米国REITに類似している。 米国REITの投資対象は、1999年6月時点でオフィス・工業31%、ショッピングセンター22%、住宅20%、多角化施設10%、ホテル・リゾート7%のほか、ヘルスケア施設や倉庫など広範囲に及んでいる。 REITの目論見書を見ると、優良物件のみならず、地方や郊外の小さな物件も多く含まれている。安定的に賃料が入るならば立地や規模を問わず、物件を分散することで全体としての収益の安定性やリスク分散を図ることを主眼に置いているようだ。その一方で、現物出資して運用できるようになり、専門性の高いファンドも登場している。他方、ファンドがファンドを吸収して巨大化する動きもある。 米国REITに投資しているのは、三井不動産の調べでは個人49%、ミューチュアルファンド37%、銀行7%、保険4%、年金3%で、圧倒的に個人投資家が多い。 また、REITインデックス年間総合利回りとS&P年間総合利回りの推移を比較すると、REITと株式との関連性が強いことがわかる。REITは株式と不動産現物投資との間に位置づけられるが、どちらかといえば株価に連動して動いている。 ■豪州の証券化の歴史 豪州では1960年代に共同投資事業が始まった。不動産のみならず、金融、農林水産、映画製作など多くの業種で「複数の投資家が出資し、専門家が事業を運用管理して、その運用収益を投資家に配分する」という共同投資の仕組みが用いられている。共同投資事業の規模は約3,500億豪ドルで、不動産を対象にしたものはその約1割である。 豪州ではかつて投資家の持ち分を買い取る非上場タイプと、持ち分価値が市場で決まる上場タイプが混在していた。しかし、1980年代後半から90年代前半に不動産価格が暴落し、非上場プロパティー・トラストに買い戻しが殺到して経営不振に陥った。こうした歴史を踏まえ、非上場トラストの整理と上場化が進み、1990年代後半から上場プロパティー・トラストは10年間で6倍という急拡大を遂げた。 一方、非上場トラストなどに関わる訴訟の増加で、「運用マネジャーと受託者のどちらが最終責任を持つのか」という問題点がクローズアップされた。1998年、こうした問題を明確にする法律MIA法が施行された。これによって、責任法人(RE)の最終責任が明確化された。また、責任法人にはライセンス制度を導入して投資家保護を図っている。 ■日本版REIT形成に影響 新法制定後の豪州の不動産投資事業は、ライセンスを取得した責任法人が最終責任を負う。責任法人はいずれかの協会に入ることが義務づけられており、投資家の苦情処理に対応できるようにしている。新法では半数以上が外部取締役でない場合は法準拠委員会を置くことが義務づけられ、外部の監視機能も付加している。また、投資家にはマネジャーの解雇権もある。 このように投資家保護を徹底する一方で、投資期間の制限を撤廃したり、物件の情報開示に関する法律上の義務づけを緩和するなど、物件の入れ替えによる最適な運用が図れるような合理的な仕組みも導入している。ライセンスに関する許認可手続きも非常にスピーディーに行われることになっている。 また、米国REITが自己の不動産の運営・管理を認めているのに対し、豪州の上場プロパティー・トラストは資産の運用を運用会社に委託しており、この点で日本が目指す会社型ファンドは豪州型に似ている。 株価と不動産直接投資、上場プロパティー・トラストの収益率の推移を比較すると、上場プロパティー・トラストの収益率は株価との連動性が高く、不動産直接投資の相関率は低い。極論すれば逆に近い動きをしており、経済環境に応じて投資家選択が働いていることが分かる。また、不動産の目を養った裕福な投資家の一部には、より高いリターンを求めて物件特定型のプロパティー・シンジケーションに積極的に投資するなど、棲み分けも進んでいる。 ■ユニークな独国の仕組み 独国は、戦後壊滅的に破壊された都市を復興させるため、国内への投資を奨励する政策をとった。不動産の証券化を推進した背景にも、一般市民の資産形成を支援し、個人の投資によって国の復興を図るという意図がある。 1969年、投資会社法の改正で投資対象に不動産が加えられ、契約型投資信託(オープン・エンド・ファンド)が制度上スタートした。上記の目的から低所得者に対する奨励策が設けられ、オープン・エンド・ファンドもその対象となり、ユニバーサルバンク制度の信用の高さも手伝って広く普及した。 すでにこの前から高額所得者を対象に、節税効果を狙ったクローズド・エンド・ファンドも誕生している。1970年代には配当の高さからクローズド・エンド・ファンドが増加するなど、オープン、クローズド両方のファンドが定着しており、巨大で安定した金融機関の存在を背景にして一般市民層までインフレヘッジとして不動産(ファンド)をポートフォリオに組み込んでいる。 ただ、近年は株式市場の活性政策が打ち出され、個人投資家層の株式投資の割合が徐々に高まっている。今後、オープン・エンド・ファンドから不動産株へ資金が流出する可能性もある。 ■持ち分価値と資産価値の一致 独国のオープン・エンド・ファンドは銀行窓口で手軽に購入でき、いつでも時価で買い戻す仕組みだ。 これが可能なのは、持ち分価値と資産価値を常に一致させているからである。そのために専門家による外部機関がすべての不動産の鑑定評価を常時行っている。これによってファンドの時価総額が出され、新聞紙上などに時価総額を口数で割った買い戻し価格が提示されている。 日本の場合は、不動産評価の客観性・透明性がまだ確立していないというネックがあるため、当面、独国型を採用するのは難しい。しかし、投資家保護を考える上で参考になるスキームとして注目に値する。 ■海外の証券化から学ぶ 米国、豪州、独国の証券化の歴史とポイントを駆け足で見てきたが、ファンド型投資スキームが成立するには、換金性、受託者責任、税制の取り扱いなどがポイントとなると言えよう。 まず、換金性を確保するために、独国型は時価評価を前提とした買い戻し制度を徹底させた。米国では投資家の自己責任を前提とした市場整備を行うなど、方法は異なるもののいずれも高い換金性を確保している。 受託者責任については、米国や豪州では議決権という投資家のガバナンス機能を持たせており、豪州ではライセンス制の導入や法準拠委員会、監査委員会などによって適正な運用を実現している。独国型は議決権はない代わり、すべてのガバナンスを買い戻しによって確保する形をとっており、法制度や約款、外部からの監視制度などで適正な運用を担保している。 課税の取り扱いについては、背景や前提は異なるが、結果的に各国ともビークルと投資家の二重課税を回避している。また、投資家にとってわかりやすい税体系となっており、他の投資商品との比較もしやすい。 その点、これまでの日本では税体系も複雑でわかりにくく、投資商品間での比較も困難であった。 日本版REITを含め不動産証券化を進めていくためには、投資家にとってわかりやすく公平な投資税制の整備が重要課題である。 不動産評価コース
テーマ/「海外の不動産証券化商品」 |
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