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■PFIは政治目的の事業
スキームの巧緻より、地域にもたらす成果が重要 井熊 均 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター副所長 |
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井熊氏は、埼玉県・SKIPシティープロジェクトをはじめ、三重県東紀州交流拠点事業、北海道西胆振地区広域廃棄物事業など、日本のPFIを代表する事業に携わってきた。 豊富な実務経験を通して、全国でPFIの適用が検討されている案件につい て「PFIのメリットを出せない事業も多い」と疑問を投げかけた。さらに「PFIは逼迫した自治体の財政を改革する最終手段であり、PFIの健全な発展のためにもメリットを出せない事業には適用すべきではない」と指摘した。 ■「問題解決」がPFI事業の前提 東京都の金町浄水場は、PFIで成功した事業だ。同事業ではジェネレーターの建設 コストが40%下がり、これまで公共では使えないと思われていた技術工法が採用され た。 埼玉県のSKIPシティープロジェクトは、公共用施設、NHKの施設、県の映像施設、 民間企業向けのオフィスビルを建設するものだ。当初、すべてにBOT(Build Operate Transfer)を適用する意向もあったが、全体で約300億円という投資を民間で負担すると金利が大きくなり過ぎる。そこで、できるだけ公債を使い、民間資金はオフ ィスビルだけにとどめた。 SKIPシティーも大成功だった。県の施設建設費を280億円から170億円に削減でき、 ソニー、CWC、早稲田大学の誘致にも成功した。 PFIは政策目的で行われる事業だ。重要なのは、純粋なPFIのスキームかどうかではなく、地域開発として何をなし得たかである。SKIPシティーでは、 施設を安く建設でき、ビッグネームを誘致できた。 公共団体が抱える問題をどのように解決するかという概念がPFIの前提でなければならない。でなければ、PFIがひとり歩きを始め、混乱を招く。 ■事業で異なるリスク分担 神奈川県立医療福祉大学のPFIは、起債枠が苦しいために民間資金を導入し、資金を繰り延べて施設を建てるスキームだ。このケースは、民間資金の導入によりコストが上昇するなど、PFIのメリットを出せない。公債を起こし、建設と維持・管理を含めて民間に発注したほうがよかっただろう。民間事業者の役割が施設の維持・管理に限定されているため、ライフサイクルコストの削減も難しい。 三重県東紀州交流拠点事業は、熊野地区にスポーツ施設、健康関連施設、研修施設などを設けるプロジェクトである。立地的な不利もあり、民間企業がすべての事業リスクを負えるPFIではない。 すべてのリスクを民間に負わせたい意向もあったが、事業の採算性が 低い場合、初期投資における公共のシェアを上げなければ民間は参加しない。結果、 かなりの初期投資を公共が負担するスキームになった。 ■一括委託すべき廃棄物処理 北海道の西胆振地区のPFI事業は広域廃棄物処理事業である。この事業は、PFIにお ける補助金事業の取り扱いを考えるうえで非常に重要なケースだった。同事業の建設費の構成比は本来、厚生省の補助金が25、地方交付税の充当が50、地方自治体の投資負担が25である。 廃棄物処理において公共側が望むのは、オペレーションとメンテナンスのリスクを民間が負担することだ。 従来の廃棄物処理事業では、他の企業ではオペレーションできないという理由で、プラントを建設したメーカーと随意契約を繰り返してきた。しかし、その契約は労働派遣契約であり、オペレーションを任せるような内容ではない。トラブルが発生した場合の責任の所在は不明確である。 また、オーバーホールの費用をすべて公共が負担してきたことも問題だ。公共は、 オペレーションを担当する企業が見積もった金額を参考にしてオーバーホール費を予算化するが、企業側は不足しないように余裕のある金額を回答するのが常だ。こうしたプロセスには費用を削減するインセンティブがまったく働かず、オーバーホール費が高くなる傾向がある。 さらに、オーバーホールの費用は自治体によってばらつきが大きい。財政が豊かな自治体では、不必要なオーバーホールによって無駄な費用を支出するケースが見られる。逆に財政が逼迫している自治体はオーバーホールを先延ばしし、危険性が高まるという問題がある。 そうした問題の打開策として西胆振地区廃棄物処理事業では、オーバーホール、メ ンテナンス、オペレーションのすべてを民間に委託することにした。行政の目的は、 安くプラントを建設し、オペレーションのリスクを民間に委譲することに尽きる。 PFIをやることそのものが行政目的ではないことをしっかりと認識する必要がある。 ■PFIでサービスの質が向上 廃棄物処理施設などほとんどの公共施設は、使用可能期間中の最大需要に対して能力を設定するため、必ず能力に余剰が生まれる。その余剰能力をどう活かすかによって公共の負担は大きく違ってくる。 廃棄物処理施設において、余剰能力で収益を上げようとしても、DBO(Design Build Operate)で造った処理施設に産業廃棄物を処理することはできない。民間が施設を所有するBOTは、民間の産廃を持ち込むことは論理的に可能だ。しかし、現実には許されない。地元の住民が、公共が用意した土地に建つ処理施設に地域外の産廃を持ち込むことを許すはずがない。 つまりBOTであれDBOであれ、単に委託された産廃を処理するという意味においてはまったく差がない。廃棄物処理施設事業をBOTでやるメリットは薄く、単に金利が高いだけで終わってしまう可能性がある。 廃棄物処理などにPFI的なスキームを適用することで、日本の公共サービスの質は必ず向上するだろう。PFIには、問題が起きたときの対処方法や責任の所在を明確にし、きちんとリスクマネジメントを行えるというメリットがあるからだ。 ■望まれる基幹事業への適用 BOTは、ライフサイクルコストに占める運営費の比率が高い事業に向く。また、運営業務がコモディティー化されていない事業であることも条件だ。誰でもできるビルの管理業務は、PFIで長期の業務委託契約を結ぶ効果が少ない。むしろ短期的な契約 で、その時々でもっとも効率的に運営できる会社に委託すればいい。 日本では今、PFIの適用が検討されている事業が200案件を超える。そのうちでもっ とも多いのが庁舎整備や市民センターといった箱モノであり、事業規模は10億円〜20億円程度だ。この規模の箱モノなら、PFIで事業化するよりも公債で建てた方が効率的だろう。 一方、下水道、廃棄物処理施設、公営病院などの中核的な基幹事業分野への適用が遅れている。オペレーションに費用がかかる基幹事業によって自治体の財政が圧迫され ているケースが多いのだから、財政負担を軽減する方策としてPFIを積極的に適用すべきだ。 情報通信分野への適用がほとんど検討されていないのも大きな問題だ。情報通信は、機器よりもメンテナンスに大きなコストがかかる。公共側は、機器の設置と長期メンテナンスを一括して民間企業に委託すれば、経費を大幅に節減できるはずだ。 今のところPFIが有効に使われているケースは少ない。その理由のひとつとして、 自治体の改革意識の低さが挙げられる。ある県は財政危機を訴える一方で、不要不急と思われる美術館などを建設しようとしている。そうした意識の低さが、本当に効果のある部門へのPFI適用を阻害し、箱モノに適用する結果を生んでいる。 ただし、道路、上下水、廃棄物などの基幹事業に関しては基本法があり、現状でPFIを適用する場合、民間は相応のリスクを覚悟しなければならない。自治体の改革意識を高めると同時に、法制度を手直ししなければ、健全なPFI事業は生まれないだろう。 ■安易なVFMは混乱のもと VFMに関する課題も多い。PFIを適用すれば施設の建設コストが大幅に下がると単純に考えるのは誤りだ。 廃棄物処理などオペレーションに特殊なノウハウが求められる施設の場合、BOTであれば建設コストを大幅に削減できる。建設とオペレーションを一体化させることにより、公共がオペレーションする施設に比べて、安全面等設計を効率化できるし、イン ターフェースなどを簡素化できるからだ。一方、オペレーションに特殊なノウハウがいらない箱モノは、DBとBOTの建設コストの差はほとんどない。 VFMはベストな選択を求めるために出すものだ。ならば、BOTの建設費を比較する対象は、DBなどの導入によって改善された公共事業の建設費でなければならない。原価積み上げ方式による旧来型の公共事業の建設費と比較するのは不当である。 現在コストオーバーランと呼んでいるものの中には、仕様変更によるコストアップであって、純粋のコストオーバーランではないものがある。PFIがこうしたコストオーバーランを改善できるとは限らない。 また、現状ではコストオーバーランについての十分なデータがない。その段階でコストオーバーランを定量化し、VFMに算入すべきではない。 誤ったVFMはPFIを失敗に導く。そうした誤りを続けていけば、PFIのマーケットは縮小するだろう。行き着く先は旧来型の公共事業発注への回帰ではなく、公共投資の削減だ。 PFIは日本の財政改革を実現する最終段階の手法である。PFIが実行できなくなれば、単純に公共投資が削減されるしかない。 民間はPFIのマーケットをつぶさないために、モラルの高い事業を展開しなければならない。市庁舎の建設などに無理に適用することを避け、PFIによって本当のメリットが生まれる事業を手がけるべきだ。 ■総合評価方式に対する誤解 現在の評価方法は、従来型の価格入札、技術提案型競争入札、二段階型入札、いわゆる総合評価方式、コンペ方式の5つがある。 二段階型入札は、民間事業者から提案を受け、ヒアリングなどによって事業条件を修正した後、価格競争を行う方式である。評価方法のうち総合評価方式の適用には注意を要する。価格評価点と性能評価等の点を組み合わせた評価によって民間事業者を選定する方式だが、性能点の評価が難しいケースが多く、一般に性能評価に完璧な合理性を持たせにくい。民間の創意工夫も吸い上げにくい。 総合評価方式によって点数を付けると、その結果が合理的であるように思えてしま うが、それは誤解だ。どんなに精密な式をつくっても、価格と性能という次元の違うものをひとつの次元で評価する無理があることを、十分に認識しておく必要がある。総合評価方式は、あくまで技術提案型競争入札では不都合が生じる場合に限って、採用すべきだ。一定以上の技術レベルをクリアした提案を合格とし、そのなかで価格を競争する技術提案型競争入札は合理的であり、住民の納得を得られる方式である。入札に関して行政訴訟を起こされる危険性が少ない方式でもある。 いずれにせよ日本の法律は、企業の意見を聞いて最終スペックを決めるネゴシエーションを禁じている。これは今後、PFI事業を進めていくうえでの大きな制約になるだろう。 PFI研究コース
テーマ/「日本での公募事例の研究」 |
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