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■二極分化進むビル市場
東京オフィスビル市場の需給動向を読む 渡部 宗一 森ビル株式会社営業部営業戦略室 上席副参事 |
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地価が収益力で決まる時代を迎え、都心商業地などではオフィスビルなどの建物が稼ぎ出す賃料収益が不動産価値を決定するものとしてクローズアップされている。そこで、今回は「都心のオフィスビル市場が今後どのように推移するか」、また、マスコミが報ずるように「大規模プロジェクトが続々竣工する2003年前後にビル市場が供給過剰に陥るか」などについて、森ビル営業戦略室の渡部氏が供給量調査などを基に分析・解説する。 ■大規模ビル供給量調査から 森ビルでは、1986年から毎年東京23区の大規模オフィスビルの供給量の推移を調査している。調査対象はオフィスビル部分の延べ床面積が1万平方メートルを超える大規模ビルで、賃貸ビルだけでなく自社使用も含めて調べている。 まず、1986年から2005年までの供給量の推移(図1参照、2000年以降は推定値)を見ると、バブル崩壊後の94年に供給量がピークを打ち、減少に転じた。99年にはピークの5分の1まで減少した。2000年はピークの供給量の半分近くまで回復したが、2003年には一気に172万平方メートルの供給が見込まれている。 ちなみに供給のピークだった94年には、バブル全盛期に計画・着工した47棟が竣工し、延べ183万平方メートルが市場に供給された。その影響でオフィス市場は大幅な供給過剰に陥って空室が急増し、賃料も急落した。 2003年の大規模ビル竣工ラッシュを94年の大量供給に当てはめて、「2003年にオフィスビル市況が悪化する」と予測する向きも多いが、はたしてそうだろうか。真偽のほどをデータから検証してみよう。 ■大量供給ではなく大規模供給 当社の供給量調査では2003年には大規模ビル18棟が竣工し、172万平方メートルの新規供給が予測されている。この供給面積はピークの94年に次ぐ高水準であることは確かだが、94年とは内容が異なる。 まず、94年と2003年の供給棟数と供給面積を比較した場合、2003年の1棟当たりの面積は大型化している。たとえば、オフィス部分の延べ床面積が3万平方メートル以上の物件は、94年が123万平方メートル(67.3%)だったのに対し、2003年は167万平方メートル(97.3%)である。実際に、2003年の大規模ビル供給面積の8割がわずか5つの大規模プロジェクトで占められているのだ。このうち3つは旧国鉄跡地の開発(※印)である。 2003年竣工物件の供給面積ベスト5と供給面積全体に占める割合 1.汐留 25.8% ※ 2.品川駅東口 22.7% ※ 3.六本木六丁目 17.0% 4.西新宿六丁目 8.7% 5.飯田橋 5.8% ※ また、94年と2003年の供給物件では立地条件も異なる。 都心3区(千代田、中央、港)の割合は、94年が50万平方メートル(27.1%)だったのに対し、2003年は148万平方メートル(86.4%)。 つまり、2003年は、94年のように山手線外周部や郊外を中心とした供給ではなく、オフィス需要の強い都心の大規模開発が中心となっている。これが2つ目の特徴である。 第三の特徴は自社ビルが多いことだ。これは、バブル崩壊以降の地価と建築費の下落を契機に自社ビル建設あるいは取得を希望する企業が増加したところに、旧国鉄用地の入札などが重なったためである。 ■バブル崩壊以降の供給特性 以上は大規模ビルの供給動向だが、それ以外の中小ビルも含めた全体の傾向はどうだろうか。 次ページの図2は東京都が実施した23区の着工床面積の推移だが、事務所用途の建物の着工は85年頃から急激に増加し、92年を大量着工時代の最後にしてその後は激減している。また、バブル期には中小ビルを含め、都心周辺区や郊外まで続々とビルが着工し、年間400万平方メートルを超す高水準となった。たとえば88年の着工面積485万平方メートルのうち、300万平方メートルは都心3区外である。 しかし、バブル崩壊後は都心3区外の着工は急激に減少、相対的に都心3区の比率が高まっている。また、バブル崩壊以降は中小ビルの着工が激減し、大規模ビルの動向が市況を左右するほどのボリュームを占めるようになった。 着工面積から見て、2003年は大規模ビルの竣工は多いものの中小ビルの供給は依然として低調であり、全体としては大量供給になるとは言いがたい。 ■大規模ビルの需要は堅調 次にオフィスビルの今後の需要を予測してみたい。 オフィスビルの需要は経済情勢などに左右されるため、正確な予測は難しいが、過去における新規需要(吸収量)のパターンと、「1人当たりオフィス面積の動向」からアプローチしてみよう。 「吸収量」とは、86年以降に東京23区に竣工したすべての大規模オフィスビルの稼働床面積の純増面積である。過去5年毎の吸収量の年間平均値を見ると、86年から90年が約80万平方メートル、91年から95年が約109万平方メートル、96年から99年が約99万平方メートルであり、バブル崩壊後も平均すれば年間100万平方メートル前後の新規需要が発生している。これは市場が拡大しているというよりも、耐震性能や情報関係インフラを求める企業が新築大規模ビルへ移ったためである。 また、大規模ビルへの需要増を支えているもうひとつの要因は、ワーカー1人当たりの床面積の増加である。新規需要の約5分の1が、この要素による増加分と思われる。 当社保有ビルの入居企業にアンケート調査をしたところ、92年の1人当たり床面積は平均13.0平方メートルだったが、98年には15.4平方メートルまで拡大している。99年は同15.2平方メートルとやや縮小したが、これは外資系企業の急激な人員増にオフィスの拡張が追いつかなかったことが主因である。日本企業の1人当たり床面積は、外資系と比べてまだ約3平方メートルも狭く、今後10年から15年程度は拡大傾向が続くものと思われる。 また、オフィス面積や従業員数についても98年と99年を比較したところ、拡張(増員)が縮小(削減)を上回っていることがわかった。 マスコミはリストラなどのマイナス面ばかりを強調するが、片寄った報道である可能性が高い。 ■2003年の供給は吸収可能 上記のような理由から、我々は2003年に大規模な供給が集中しても、極端な景気悪化でもない限り、都心の大規模ビルの需要は堅調に推移すると見ている。特に、今後供給される物件は立地、規模、設備水準において競争力の高いものが多いため、高い稼働率が確保できるだろう。 最近竣工した物件の集客状況を見ても、情報インフラと耐震性能を備えた大規模ビルへの需要は堅調だ。97年から現在までに竣工した大規模ビルのほとんどが95%以上の稼働率となっており、満室稼働しているビルも珍しくない。最近では、竣工前に8割から9割のテナントが内定している。大規模オフィスビルの品薄感は高まっており、今後も続くものと思われる。 生駒CBリチャードエリスの調査では、東京23区の賃貸オフィスビルの平均空室率は99年9月時点で6%だったが、Aグレードの大規模ビルに限れば2.6%と極めて低い。 森グループに寄せられた問い合わせ件数と問い合わせ面積の推移を見ても、97年以降急激に増加傾向を辿っている。ただし、希望予算に見る企業の賃料負担力は91年を100とした場合、未だに50を下回っている。 なお、ビル経営の視点から見た場合、入居テナントの増床希望に応えるためには、ある程度の空室を確保しておく必要がある。当社ではビルの適正空室率を5%程度と考えている。適正空室率という視点で見れば、東京23区の大規模ビルの稼働率はほぼ上限といえるだろう。 ■ビル市場はさらなる二極化へ 2000年以降の東京オフィスビル市場は、「耐震性能」「情報化対応」「快適なオフィス環境」というテナントニーズを満たす「近・新・大」ビルと、その他のビルとの間で、さらなる二極分化が進行するものと思われる。
■賃料は相場から個別要因へ オフィス賃料に対する考え方も変化している。従来は地区相場に準じて賃料が決まっていたが、最近は個々のオフィスビルの性能や管理の良し悪しといった個別要因によって賃料が左右されるようになっている。たとえば、耐震性能、周辺環境、フロアの形状と面積、通信設備などのフレキシビリティとセキュリティ(電源容量、空調容量、OAフロア、テナント専用EPS)、レイアウトの容易性、空調制御方法などが賃料を左右する要素となっている。 こうした要素について、企業のファシリティ・マネジャーが詳細に検討した上で、賃料支払い能力とそのビルに入居した場合の生産性(オフィスの収益寄与度)とのバランスからビルを選定する。すなわち「テナントが賃料を決める時代」に入っているのである。たとえビルオーナーが募集賃料を高く設定しても、それが企業にとって適正でなければ入居しないだろう。募集賃料ではなく、テナントが実際に入居した賃料がそのビルの価値となる。 東京都心部におけるテナント企業の賃料負担力(坪単価)を概念的にざっくり捉えると、一般的には4万5,000円/坪が現在のほぼ上限値といえる。業種でいえば外資系金融機関がもっとも支払い能力が高く、次いで通信・コンピュータソフト関連企業、外資系化学関連企業や人材バンクの賃料負担力が高い。サービス関連企業は3万円強/坪以内、製造業は2万5,000円/坪以内が多い。ただし、これはあくまで目安であり、合致しない企業も多数存在することを申し添えておく。 4万5,000円/坪前後の賃料設定でもテナントが確保できるのは、大手町周辺や港区の一部のハイスペックな大規模新築ビルである。また、完全にIT(情報技術)対応できるようなスペックを備えているビルは、3万円/坪以上の賃料でテナントを確保している。 ただし、すべての企業がハイスペックなオフィスでなければ業務ができないというわけではない。今後はファシリティ・マネジメントなどの経営手法の普及によって、それぞれの企業が自らの企業活動に最も相応しい条件を備え、かつコストパフォーマンスの高いオフィスビルを選択していく時代になるものと思われる。 不動産評価コース
テーマ/「賃貸市場分析とプロジェクト評価」 |
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