■マザーズ1号からの教訓
〜IRIに見るベンチャー企業戦略

藤原 洋  株式会社インターネット総合研究所代表取締役所長
米倉 誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター長・教授



米倉 誠一郎
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1999年12月22日、東証の新設市場マザーズに第1号企業として上場を果たした(株)インターネット総合研究所(IRI)。初値では5,300万円をつけ、一時は7,741万円まで高騰した株価も、今年に入り4月には初めて公募価格を割り込んだ。ネット株が軒並み値を下げる中、経営者としてこの状況をどう受け止めているのか、また今後はどのようなビジネスの展開を考えているのか、IRI社長の藤原氏を招きお話しいただいた。

■IRI設立の背景と特徴
 日本のインターネットを支えてきた学術グループ、「WIDEプロジェクト」のメンバーだったインターネット運用関連技術者や、商用ISPの主要メンバー集結してできたのがIRIである。その起業目的は学術界に留まっているインターネット技術やノウハウを産業界に移転すること、日本のインターネットインフラ構築に貢献することだった。
 96年の設立時は資金も少なく、リスクの少ないインターネット運用技術を提供する事業支援型のビジネスとしてスタート。日本テレコムやNTTドコモのコンサルティング、日本初の商用インターネットエクスチェンジ「JPIX」の設立と技術部門の全面受託などの実績を持つ。99年12月にはマザーズ上場を果たし、110億円の資金調達を実現した。
 IRIの特徴は、インターネットにおけるオペレーションとルーターやサーバーの運用に特化した希少な技術者を有していることだ。さらに、アカデミズムとの太いパイプや最先端技術の吸収に有利な環境づくりによって、高い技術を持つエンジニアを獲得している。また、ISPや機器ベンダーと中立な関係を保つことで、大企業との競合も避けている。これらの戦略が他社の追随を許さぬ、極めて高い参入障壁のビジネスモデルをつくり上げている。

■e-コマースを支えるGCJ
 IRIのビジネスモデルは株式上場で調達した資金を使い、インターネットの サービス事業を合弁の形で推進する事業創造型のビジネスフェーズに転換しつつある。その第一弾が データセンター事業のグローバルセンタージャパン(GCJ)で、IRIが11%を出資する。
 初期のインターネットビジネスは接続ビジネスであったが、今やその上にあるe-コマースのビジネスへと昇華している。データセンターは接続ビジネスとe-コマースの境界領域にあるもので、e-コマースが安定運用できる共通プラットホームとして役割が求められている。GCJデータセンターはIX直結型のデータセンターで、あらゆるISPとピアリング交渉ができ、優れた接続性を持つ。ISPと有利な交渉ができる背景には世界最大のe-コマースコンテンツを持つソフトバンクグループや世界最大のビジネスソフトを持つマイクロソフトグループとの提携がある。データセンターの強みはセキュリティーやストレージ、決済、マーケティングなど、いかなるニーズに対しても十分なトラフィックマネージメントができるところにある。

■ASP事業を支援
 データセンター事業に続き、e-コマースやファイナンスサービスを支援する会社として、IRIファイナンス&テクノロジー(IRI F&T)とIRIコマ−ス&テクノロジー(IRIC&T)を設立している。この2社は、将来有望なASP(アプリケーションサービスプロバイダー)の技術支援とデータセンターへの戦略的な誘致がその業務だが、場合によってはASPへの出資による共同事業化も行っている。
 ASPとはアプリケーション機能、ソフトウエア機能、あるいはその機能を利用したサービスを、データセンターから広域ネットワークを通じて提供するサービスを行う事業者のことである。このサービスにより、ユーザーは使いたいアプリケーションが自由に選べ、好きな場所からアクセスができ、アプリケーション管理の煩わしさからも解放される。さらにデータセンター上にあるサーバー機能がアップすれば、2003年には、インターネットのための端末はパソコンではなくなるだろうとも予想されている。
 日本の良さは製造業にある。将来は製造業の効率化を中心にしたASPをやってみたいと考えている。

■ベンチャービジネスの役割
 変化に対応する先導的な役割がベンチャービジネスである。起業にとって重要なのは、時代背景を鑑みて、会社の存在が変化に対応することに意味があることと、企業における人、とりわけ、最高責任者のキャスティングである。
 ベンチャービジネスの役割は投資家に夢を与え、と実績を示すこと。その結果が株価に反映する。重要なのは実績を出すことだと思う。
 東証マザーズ1号の教訓は、他人の目を気にせず、淡々と信念を貫くことだ。マザーズに対しては、レベルが幼稚園から大学院までの混成であるとか、参入障壁が低すぎる、流動性がない等の批判もある。それならベンチャーはどの市場を目指すべきかと言えば、東証マザーズでも、店頭でも、ナスダックジャパンでもどこでもいいと思う。大切なことはどこに行っても信念があることだ。



第5回必修講義

テーマ/「マザーズ1号からの教訓〜IRIに見るベンチャー企業戦略」
講師/藤原 洋(株式会社インターネット総合研究所代表取締役所長)
アドバイザー/ 米倉 誠一郎
      (一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
日時/2000年5月18日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


米倉 誠一郎 講義目録
■第20期 アカデミーヒルズインタビュー
■第25期 '00.12.14
 女性をエンパワーメントさせるメディアを
■第24期 '00.5.18
 マザーズ1号からの教訓
■第23期 '00.1.20
 イノベーションと企業家精神
 〜日本最大のインターネットモール「楽天市場」の挑戦〜
■第22期 '99.7.15
 イノベーションと企業家精神
 〜創造型ナビゲーター、デジキューブびコンビニエンス戦略
■第21期 '98.11.26
 メガコンベンションと日本の課題
■第21期 '98.12.10
 企業家能力とは何か
■第21期 '98.12.17
 組織構造と経営戦略の相関性
■第21期 '99.1.14
 企業の多角化戦略

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