日米がネットでディベート
政財界・学会メンバー、TV会議に集う

日米のオピニオンリーダーや政策担当者がダイレクトに意見交換する機会は意外に少ないという。こうした現状認識から、アカデミーヒルズでは米国ジョージタウン大学国際関係 外交学部とテレビ会議システムで結び、定期的に意見交換をする「アカデミーヒルズ・ジョージタウン大学 森特別講座」を開設した。日米の政策立案者や政策に影響力をもつメンバーが定期的に話し合うことで共通認識を育て、本音で話し合える関係を構築するきっかけになることを期待したい。

米国では日本を研究する人が次第に減っているという。米国は今「ルックチャイナ」。10年前に比べ日米の政策担当者同士のネットワークも弱まっているという指摘も……。一方で「日米の関係は長年連れ添った夫婦のようなもの、相手に対する関心が薄くなるのも信頼しているからだ」と分析する人もいる。
しかし、世界は情報ネットワークで結ばれ、一国の政策の失敗が国内にとどまらず、瞬時に世界の政治・経済に波及する時代を迎えている。政策担当者同士がインフォーマルなネットワークを通じて、リアルタイムに本音で話し合う必要性が増している。日本も「顔の見えない国」、「個の見えない国」から、「個人の顔が見える国」に転換する必要がありそうだ。

人間と人間が本当の友人になるには長い時間がかかる。言葉の端々、表情、行動から相手の気持ちを手探りしながらたくさんの会話を重ねることだろう。
これが国と国であればさらに複雑で難しい。今までの歴史をみても、相手国への理解の欠如や誤解が重なって戦争や紛争が起こっている。公式な外交ルートやビジネスネットワークだけでなく、個人的に他国の友人・知人と本音で話し合えるネットワークができたとき、初めてお互いの国を理解できるようになるのではないだろうか。特に、日本の将来を左右するポジションにいる人々にはそうしたネットワークが不可欠だ。

「アカデミーヒルズ・ジョージタウン大学 森特別講座」の特徴は単発の会議ではなく、定期的に実施することだ。最終的には政策提言まで目指す。これをきっかけに日米の政策担当者同士のインフォーマルネットワークが広がることに期待したい。

同講座のアドバイザーは電通総研研究所所長の福川伸次氏とジョージタウン大学学部長のロバート・ガルーチ氏。研究会のテーマや人選は慶應義塾大学の竹中平蔵教授とジョージタウン大学のマーク・メイソン助教授が軸となって進め、月1回のペースで定期的に開かれている。2月には「日米の金融ビッグバン」、3月「Eコマース」、4月は「アジアの安全保障」をテーマに話し合われる。レギュラーメンバーのほか、東京大学の伊藤元重教授を始め、学会や政財界からもゲストを招いている。
英語でのディベート、しかもテレビ会議ということで最初は緊張感が漂っていたが、次第に参加者も慣れ、ジョークも交えた活発なやりとりが繰り広げられた。英語と日本語の言語プロセスの違いやディベートに対する慣れの違いもあるが、その違いを認識することも相手を理解するうえで不可欠な条件。テレビモニター越しだが、やはり顔を合わせて話ができることは予想以上の効果があったようだ。

「現在はレギュラーメンバーとゲストのみだが、政策に携わる若手や国際政治を勉強中の学生が聴衆として参加できる仕組みも検討していきたい」(事務局)。日米トップクラスの知識人同士のディベートを生で見る機会はまだまだ少ない。国際政治を担う若手にはいい機会になるだろう。さらに、テレビ会議システムというツールの課題や効果を探るという視点からも興味深い。
同講座の予定は2年間。最終的な成果はもちろんだが、インターネットを通じて研究会の模様も近く動画配信するという。テレビ会議システムを利用した民間レベルの定期的な国際学術交流という新しい試みだけに、試行錯誤自体も貴重な記録になるはずだ。