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■放射から環状へ、東京大改造 世界に冠たる日本の技術を都市づくりに 菊竹 清訓 建築家/日本建築士会連合会会長 青山 やすし 東京都副知事 |
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「東京はまるで仮死状態」と菊竹氏はいう。江戸時代には世界一素晴らしい都市・江戸をつくった歴史を持ち、世界最高レベルのさまざまな技術を持つ日本人ひとりひとりが本気になれば、再び世界最高の環境をつくることができると熱く語り、塾生に奮起を促した。菊竹氏の問題提起に対して、青山副知事は東京(首都圏)を放射から環状ネットワーク型都市へ改造する施策を示し、主に交通インフラの問題を中心に環状線整備の意義と進捗について語った。
◇菊竹 清訓 ●日本の技術を都市環境に 通勤地獄、慢性的な交通渋滞、地震が来ればひとたまりもない密集市街地を抱えた東京。今こそ、東京を大改造しなくてはならない。久々に国際的なスケールでものが考えられる石原都知事、青山副知事というリーダーを得て、放置され、仮死状態に陥っていた東京を変えるチャンスが来た。 江戸時代、日本は世界一の経済大国であり、経済力と市民の知恵と努力で江戸は世界一文化の高い美しい清潔な都市となった。当時のヨーロッパの諸都市は糞尿処理もできず、ペストが猛威をふるっていたのである。この時代に江戸はすでに上水を引き、糞尿処理やゴミの処理システムを構築していた。日本を訪れた外国人の記録を見ると、江戸の街の素晴らしさに驚き、町人の生活レベルの高さにコンプレックスを抱いた様子が記されている。 「現代建築発展の過程」(図参照)を見てほしい。建築の変革は新素材や新技術によって起こる。産業革命後、ガラス、鉄、セメントの登場によって、建築の構築技術的変革が起こったが、ガラスも鉄もセメントもその生産技術は日本が世界をリードしている。つづいて建築はエレベーターや空調技術、人工照明によって設備技術的変革を遂げる。いま米国と日本が世界最高技術を争っている。 その後、現代建築は情報技術的変革の時代に入った。コンピュータ・エレクトロニクスなどの情報技術によるものだ。この分野では、日本は米国に次ぐ水準だったが、最近は北欧やアジア諸国の追い上げを受けて苦戦している。 ●意識改革からの都市改造 16世紀に世界最高水準の都市・江戸をつくり、建築技術において世界のトップを走ってきた日本人が、なぜ、今の状態に甘んじているのか。なぜ、東京を改造できないのか。さまざまな理由があるが、一番大きいのは我々ひとりひとりが「誰かがやってくれるだろう」と他力本願で考えていることにある。 都市は行政だけでなく、我々ひとりひとりがつくるもの。皆さんには「自分たちで都市を変えていく」という意識をもっていただきたい。土地のある人は土地を、知恵のある人は知恵を、金のある人は金を、それがない人は労働力を出せば都市環境をよくすることができる。日本には、素晴らしい環境の都市を構築できる技術も文化もある。 16世紀から約400年間の都市の変遷と、そこでの営みを展示しているのが、東京・両国につくられた江戸東京博物館だ。有意義な企画だが、不満に思うのは、東京の展示が明治時代に偏っていることだ。明治時代は残念ながら模倣の時代である。英国の模倣でつくられた銀座のレンガ街を展示する意義がどこにあるだろう。レンガ造は関東大震災で脆くも崩れ、その反省から日本は独自の耐震技術を発展させた。展示すべきは模倣技術をのりこえて、日本が世界に先駆けて開発した文化であるべきだ。たとえばH1ロケット、自動交換電話機。江戸時代から、大変精巧なカラクリの技術があった。この技術がもとになって和時計が開発された。当時の世界で日の出から日没を示す時計はなく、時計で正確に生活のリズムをつくっていた国民はない。カラクリの技術はロボットに引き継がれ、センサーやコンピュータと結びついて新しい環境装置へと発展している。 日本人にはこうした歴史的に培われた技術開発の素養がある。私は日本人を惨めにするような展示ではなく、日本人が開発してきた素晴らしい技術をきちんと歴史的に展示し、日本人はもちろん、日本を訪れる外国人にしっかりと伝えてほしいと切に願う。 ●環境をつくる技術と構想 日本らしい、しかも世界に誇れる都市環境をつくる構想や技術の一部を紹介しておこう。 「墨田リバーサイドパーク構想」は隅田川の両側10平方キロを市民が自然や文化に親しめる公園にして、周辺の住民に災害時の避難所を提供するというものだ。米国NYのセントラルパークの3倍の大きさがある。ここに続く道路も拡幅整備して、街を貫くグリーンベルトをつくり出す。 東京改造には、上空や地下、海上に目を向けたい。 上空を利用する方法として、超超高層建築「ハイパービルディング構想」や「ハイパー首都構想」のスタディが行われている。垂直の都市は移動距離も少なく、暮らしやすい。ちまちました集合住宅ではなく、せめて50階、60階にして、都心にたくさんの人が暮らせるようにするべきだ。それも閉鎖的な集合住宅でなく、広い窓や庭のある開放的な超高層建築をつくる。そうした技術もある。 地下を利用した交通網整備も有効である。日本のトンネル工事技術は世界一であるし、地上と違って用地費もかからない。今度できる地下鉄12号線のように、環状道路も地下を利用してはどうか。 また、これからの都心開発あるいは再開発計画は、西新宿のように建物が個々別々に建つような計画をしてはいけない。それぞれをネットワークする総合的な計画が不可欠だ。先日、汐留の計画を見たが、未だに西新宿方式のように単体の建物が集まっただけという印象を受けた。パーキングなども建物個々に整備するのではなく、開発地区を取り巻く地下にリング状に地下道路と共同パーキングをとり、どこからでもビルに入ることができるくらいの大胆な発想がほしい。 ネットワークという考え方は、東京の改造に不可欠である。既存の緑を繋いでグリーンネットワークをつくったり、楽しく歩ける都心商業ネットワークなどを再整備していくべきである。 また、東京を世界都市にしていくには、首都圏が一体となって集中的に都市づくりに取り組むことだ。先端技術と大胆な発想で、21世紀の日本の技術と文化を象徴するようなダイナミックな都市開発構想を実現したい。また、期待されてもいる。 ◇青山 やすし ●放射から環状の整備へ 我々が目指している東京改造の方向は、都心を頂点とした放射線状の都市構造から、副都心や業務核都市などが緊密に連帯する環状の都市構造への転換である。そのため東京都では地下鉄や道路などの環状ネットワークの整備に注力している。今回は交通ネットワークに絞って、都の施策の一部をご紹介する。 東京の鉄道網はある程度の水準に達しているが、問題は道路と空港である。民間が進めている魅力的なプロジェクトを生かすためにも、我々はそれらを支えるインフラの整備を精力的に進めていきたい。 歴史的にみると、東京(首都圏)の人口が増加するにつれ、市街地はスプロール化して交通網は放射線状に発達してきた。しかし、首都圏の人口はすでに上げ止まっている。ちなみに、1990年に我々は2005年の東京の人口を1230万人と予測したが、最近、これを60万人下方修正し、1170万人と予測している。60万人は鳥取県の人口に匹敵する。 人間の流れも放射方向から環状方向に変化している。南武線や埼京線、武蔵野線といった環状方向の鉄道の混雑率が上がっているのに対して、中央線や総武線といった放射方向の鉄道の混雑率は低下している。 以上のことからも、環状方向の都市間ネットワークを充実させる意義がわかるはずだ。 ●世界に誇る東京の鉄道網 東京都は環状のネットワーク整備を進めているが、地下の山の手線といわれる地下鉄12号線はその代表的なものだ。2000年12月には全線が開業する。28駅のうち21駅で既存の路線と連絡し、交通利便性は飛躍的に向上するものと思う。 これによって、東京は本格的な環状方向の鉄道網を2本持つ世界で初めての都市になる。駅の数も500を超え、ロンドンやパリ、NYをはるかに上回っている。治安と並んで、東京の鉄道網は世界に誇るべき要素である。 ●環状道路整備で渋滞解消 問題は道路である。 都内の道路の渋滞時の平均時速は18キロ、区部にいたっては15キロである。慢性的渋滞を引き起こす原因としては放射方向の道路に比して環状方向の道路の整備が遅れたことが大きい。 歴史を振りかえると、1964年の東京オリンピックに合わせて首都高速道路がつくられた。その後、列島改造論で地方と東京を結ぶ広域高速道路網が整備された。しかし、その間、東京圏の環状道路の整備が遅々として進まなかったために、地方から高速道路を利用して東京に集まってきた車が一般道に流れ込み、渋滞を引き起こした。 都心環状線を利用する車の約6割が通過交通なのである。これを都心に入る前に環状道路(圏央道や外環道)で受け止めれば、都心の通過交通は大幅に減る。 ちなみに、外環道ができたことによって、関越道の練馬インターを下りる車が1日当たり1万2,00台減った。 道路をつくると環境が悪くなるといわれていたが、今は違う。渋滞のネックとなっている部分に道路をつくったり、既存の道路を拡幅することによって環境はむしろよくなるのである。 また、渋滞解消が大きな経済効果をもたらすことも証明されている。そういうわけで、東京都は、今、渋滞のネックとなっている環状道路の拡幅・整備に積極的に取り組んでいる。 ところで、東京の代表的な環状道路である環状6号、7号、8号線が都市計画決定されたのは、なんと70年も前の昭和2年なのである。後藤新平が震災復興計画で広幅員の基幹道路を整備し、それが現在の道路交通を支えているのが実態だ。その後、戦災復興計画で幅員80メートル以上の立派な道路を整備する計画も立案されたが、「敗戦国にそんな立派な道路を整備することはない」という占領国の圧力で実現しなかった。 以来、東京の道路整備はさまざまな原因で進まなかった。こうした歴史を一掃しなければならない。渋滞時には平均時速18キロでしか走れない現状を、環状道路の整備によって時速30キロで走れるように改善したいと考えている。そうすれば多大な経済効果も見込めるし、大気汚染も抑制されて環境も改善する。 道路整備には住民の理解と協力が不可欠である。是非皆さんに応援していただきたい。 ●財源を確保する仕組みを 道路整備を円滑に進めるには、住民の理解と協力に加えて、もう1つ財源確保の問題がある。 現在、税収は国税が3分の2、地方税が3分の1という比率だが、実際の仕事は国が3分の1、地方自治体が3分の2となっている。このアンバランスを国からの地方交付税と補助金で補っている。しかし、地方交付税や補助金をより多く確保するために、地方自治体の優秀な人材を国との交渉に当てているのは非常に問題である。 地方自治体間で税を取り合う「水平調整」ではなく、国と地方の財源配分の見直しを行う「垂直調整」を検討し、地方税を拡大して、都市インフラ整備の財源を確保することが不可欠である。 第5回必修講義
テーマ/「東京の大改造」 |
| 菊竹 清訓 講義目録 |
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■第23期 '99.10.28 放射から環状へ、東京大改造 |
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■第20期 '98.6.17 現代建築の課題と更新システム |
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■第19期 '97.12.3 日本型都市環境 〜その多様性に期待する〜 |
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