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■ウエアラブルへの挑戦 時代はモバイル&マルチタスクへ 石井 威望 東京大学名誉教授/アカデミーヒルズ研究センター所長 |
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デスクに座るとどっさりメールが届いていてそれを処理するのにかなりの時間を費やす。そんな情報の洪水の中で生活する私たちにとって、歩きながら、あるいは他のことをしながらリアルタイムで情報を処理できれば、どんなに便利だろう。こうした時代の要求に応えてコンピュータはどう進化するのか、ネットジェネレーションの時代に世の中はどう変わるのか、石井先生にお話しいただいた。
●最近のパソコン事情 近頃のパソコンは軽くて、スマートでキレイになった。これまでは“性能はよいが、女性が持つにはちょっと”という感じの製品が多かったが、最近は家電製品的でカラフル、ファッショナブルなi-MacやVaioのような製品が登場し、女性の購買も伸びている。耐久消費財が本格的に伸びるのは製品がファッショナブルになる時だ。 モバイルという観点では、リモコン付きでフタを閉じたまま、あるいはカバンに入れたままでも操作することのできるものなど、移動しながら使用することを前提にした製品も市場に出はじめた。また、パソコンのインターフェースではこれまでのGUI(Graphical User Interface)から、いろんな感覚を駆使してパソコンを操作するPUI(Perceptual User Interface)という概念が登場し、これからの重要なインターフェースだと考えられている。 ●ポストPCの2つの方向 ポストPCには2つの方向性が考えられる。1つはパソコンのコンパクト化がどんどん進み、身につけることができるようになる方向。もう1つは携帯電話がその能力を向上させ、さらにコンパクトになっていく方向だ。 現在のパソコンでは重さ、生活耐久性、発生熱、電源など、まだまだ問題は多いが、身につけることのできるパソコン=ウエアラブルPCを実際に製作する試みはすでに始まっている。文化服装学院では1999年5月にウエアラブルコンピュータのファッションショーを開催。マサチューセッツ工科大学との共同研究も進められている。情報処理学会でさえもウエアラブルファッションのセミナーを開催するようになった。もちろんハードメーカーにとっても、ポストPCを模索する上で、ウエアラブルというキーワードは無視できない存在になっている。 一方、持ち歩きが楽にでき、安価で電子メールが利用できる携帯電話やPHSも注目を集めている。PHS、携帯電話は日本では5000万台、中国ではすでに3000万台を突破した('99年10月現在)。NTT ドコモのiモードは発売1年足らずで300万台を突破している。 また、米国では'98年夏の議会でポストPCに関する聴問会が行われ、次の本格的なニューマーケットとして携帯電話などの“スマートホーン”と呼ばれる分野が大きくクローズアップされている。 ●人は本当にウエアラブルが好きか? あるものが真に世の中に普及するには、人がそれを本能的に受容できなければならない。昨年夏、小学生を対象に行った「マルチメディアキャンプ」でウエアラブルを体験させてみた。子供たちはすでにある程度のメディアリテラシーがあり、極めて高いポテンシャルを持ち、ウエアラブル志向も強かった。何の先入観もない子供たちが示したこの結果は、ウエアラブルに対する人の受容性を表しているものといえよう。 ただ、大人のメディアリテラシーについては憂うべき結果が出ている。'98年のある調査によれば、インターネットを使いこなしている企業トップの割合はカナダで65%、米で64%に対して、日本ではわずかに15%だ。この状況をどう改善していくかは今後真剣に考えなければならないが、翻ってみると日本の15%の企業は極めて優位であることになる。真剣にインターネットに取り組めば、“濡れ手で粟”なのだ。 ●ウエアラブルがすべてを変える 人類は二本足歩行で両手が使えるようになったときに文明が生まれた。同様にウエアラブルで手と足の両方が解放されるとき、世の中は大きな質的変化をとげる。 違う世界に入るときには着るものが変わる。ウエアラブルのファッションが新しく生まれ、服自体が機能し、人の動作から脳の動きまで人のすべてをキャプチャーできるようになるかもしれない。そうなるとオフィスはもちろん、あらゆる場所の通信環境や形態が変わるだろう。同時に人の行動パターンも変わっていく。21世紀を担うネットジェネレーションはマルチの可能性を持つとともに、複数のジョブを同時にこなしていく、そんな精神構造に変化していくだろう。 第3回必修講義
テーマ/「ウェアラブルへの挑戦」 |
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