|
■ウエアラブル万歳! ビジネス、社会はここから変わる 石井 威望 アカデミーヒルズ研究センター所長/東京大学名誉教授 |
![]() 石井 威望 講義一覧▼ |
|
|
|
人がパソコンを身につけ、移動しながら情報通信ができるようになるとどうなるか。ウエアラブルPCで両手が自由になる時、何ができるのか。石井先生の研究室では、パソコン、通信機器、テレビカメラなどを実際に装着して生活する機能テストを行っている。今回はウエアラブルPCの出現が社会に与えるインパクトと、これからの方向性について、機能テストなどの実験的アプローチから見えてきたことを含めてお話しいただいた。
●ウエアラブルへ機は熟した ここ1、2年、通信機器の世界では携帯電話の爆発的な伸びが注目される。現在、携帯電話の加入件数は約4000万件、数年後には加入電話を上回る勢いだ。経済的にも98年東証一部上場のNTTドコモは、株の時価総額が約9兆円でトヨタに次いで3位にランクされ、経常利益では98年上期に1278億円で国内2位を占めた。今、人々の生活は、経済的にもライフスタイルでもモバイルなしでは考えられなくなっている。1人1台の電話を持ち、移動しながらいつでもどこでも発信するという方向へ確実に変化しているのだ。 ウエアラブルを実現する技術面の進化も目覚ましい。パソコンの小型化、処理能力の高速化はここ1年で飛躍的に進んでいる。音声入力ソフトでは、IBM「ViaVoice98」のように、ノイズに弱いという弱点はあるものの、キーボードの2倍以上の速さでの入力を実現しているものもある。またデジタルカメラでは、シャープの「インターネットビューカム」のような、35万画素で重量はわずか148グラム、価格は6万円という低価格製品も出てきた。 ライフスタイルの変化とウエアラブルへの応用ポテンシャルを持った製品が次々と登場してきた。ウエアラブルへ向けてまさに“機は熟した”といえるだろう。 ●新しい情報環境へ適応 人はこれから新しく出現する情報環境や機材にどれくらい適応できるだろうか。毎年夏に子供たちを集めて「Multi Media Camp」という試みが行われている。子供たちは、教えなくても、解説書がなくても、すぐに新しいメディアツールを使いこなす。子供は新しいメディアツールに対して、極めて高いポテンシャルを持っているのだ。 大人の場合はどうだろう。高知県東部に周辺5町村の在宅介護を担う「中芸介護公社」という組織がある。ここで働く女性16人、男性2人のヘルパーたちは平均年齢37歳。新しいものに最も抵抗がありそうな熟年世代の女性もいるが、全員がノートパソコンやモバイルツールを業務の中で使い、スケジュール管理、訪問記録、患者の健康管理、データベースの作成などに利用している。 シンプルで使いやすく、業務にあった、わかりやすいインターフェースをつくり、操作のハードルを低くするなどの工夫によって、大人でも十分に新しい情報環境への対応は可能なのである。 ●ビジネスに新発想を ウエアラブルで両手が自由になると仕事のやり方も変わる。デスクではなく、現場で、ハンズフリーでパソコンを使えれば、複数の業務をオーバーラップして行うことができ、業務の効率化が図れる。特に中小企業では、有効なツールになるだろう。中小企業が大半を占める日本の産業構造において、ウエアラブルPCは経済活性化の重要な鍵となるかもしれない。 小型化、高耐久性など、ウエアラブルを実現するためのハード面での開発もまだまだこれからだが、今後はハードだけでなく、ウエアラブル用のOSやソフトの開発も必要になってくるだろう。 また、ウエアラブルPCの出現は、単に身につけることができるパソコンの登場ということにとどまらない。かつて社会や産業構造が変わり、農業社会の服が工業社会の服に変わったように、情報社会の服が新たに生み出されるはずだ。 ウエアラブルがもたらす変化の全貌はまだ見えない。ウエアラブルの形の“決定版”もまだない。しかし、ここを原点として発想を広げていけば、そこにビジネスチャンスが生まれる。 第2回必修講義
テーマ/「ウエアラブル万歳」 |
![]() |