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■21世紀の社会と都市像 20世紀の反省を踏まえて 伊藤 滋 アーク都市塾塾長/慶應義塾大学教授 |
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伊藤滋塾長は、現在の日本が抱えている都市問題を戦後の歴史を紐解きながら解明するとともに、世界各国が共通して考えなければならない「21世紀の都市像」について示唆した。都心再生と同時に、郊外型住宅地の新たな方向性も世界の都市に共通する課題という。さらに「高齢社会やホームレス問題を解決する社会の仕組みをつくることも、これからの都市計画が果たすべき大きな役割である」と説いた。
●米国文化の功罪 戦後、日本はあらゆる部分に米国文化の影響を受けた。住宅や都市もしかり。諸君の親世代は、米国の映画やテレビドラマをみて、郊外の広い一戸建てを舞台に繰り広げられる米国中産階級のライフスタイルに憧れた世代である。 戦前は都市に住む大半の人が貸家生活を当然のことと思っていた。その価値観が戦後大きく変わっていった。米国式のライフスタイルへの憧れも一因だが、農地解放や財閥解体によって郊外の土地が放出され、曲がりなりにも「郊外の一戸建てに住む」ことが現実にできるようになったこともその背景にある。 むろん、日本人が手に入れた住宅は、憧れを持って眺めた米国の一戸建てと比べれば矮小化されたものだったが、「一国一城の主になる」ことを多くの人が人生最大の幸せと考えた。その結果、約1 億2500万人のうち3000万人が地主という現在の構造ができ上がったのである。 しかし、米国のように広大な国土をベースにした居住形態を、日本の国土にそのまま持ち込んでうまくいくはずがない。それにも関わらず政府は持ち家政策をとり、小宅地優遇の税制を続けたために相続の度に土地は細分化されていった。日本人は土地の所有に執着し、共に街をよくするという意識を失っていった。こうした共有意識の薄い日本人のメンタリティが、現在の貧しい住環境や都市環境を生み出したといっても過言ではない。 21世紀の都市づくりは、そうした20世紀の反省からスタートしなければならない。 ●国を超えた21世紀都市像 以前、OECD(本部・パリ)で「21世紀の都市像」について、先進各国の専門家や政府関係者が集まって議論をした。その際に、理想に近い都市としてパリの既成市街地が挙がった。理由は、省エネやCO 削減、地球温暖化防止の視点から、パリは地球環境への負荷の少ない都市であり、そうした暮らし方を実現しているからだ。 こういうと、日本人はヨーロッパの都市は押し並べて日本より優れていると思いがちだが、実は違う。郊外のニュータウンは欧米より日本のほうがずっと優れている。 郊外の住宅地の問題は、日本のみならず欧米に共通した21世紀の課題である。 現実に郊外ニュータウンができ、そこに独自の文化や生活がある以上、それを無視することはできない。たとえば、高い教育を受けた住民を母体にした新しい産業の育成とか、自立都市としての発展可能性を探るといったように、郊外型住宅地の新たな方向性を模索することも、都心再生と並ぶ各国共通の都市問題である。 ●高齢社会と都市 21世紀は高齢社会である。高齢者にとって住みやすい街とは日常生活が徒歩圏ででき、他の都市に住む子世帯や友人たちとの交流も容易にできるような環境であろう。 日本には幸いにも世界でもトップクラスの鉄道や地下鉄がある。鉄道や地下鉄の駅を核に、住宅や生活利便施設、文化施設、医療施設などが集約されている環境が望ましい。 また、21世紀にはホームレスが増える。農村には脱落した人を救うシステムがあったが、都市にはそれがないからだ。どんなに美しい都市をつくっても、ホームレスがたむろしていては都市は荒廃してしまうだろう。 都市計画はそこに住む人間とその営みを深く考えていく必要がある。ホームレスを生まない社会システム、たとえば高齢者の雇用を創造するような仕組みまで織り込んだ都市計画を考えていかなくてはならない。 第1回必修講義
テーマ/「21世紀の社会と都市像」 |
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