■企業の多角化戦略
ルイ・ヴィトンの多角化の可能性を探る

米倉 誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター長・教授


米倉 誠一郎
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LとVを組み合わせたルイ・ヴィトンのロゴマークはあまりにも有名。今回のゼミはパリに本社を置く高級カバン店、ルイ・ヴィトンを例にとり、今後、どんな多角化が考えられるかを塾生と一橋大学大学院の学生がチームになって考えるグループワークが行われた。それぞれの企業が持つ「見えざる資源」をどう活用するか、その際にどんな点に気をつけなければならないかなど、塾生にとって自らの会社や仕事のヒントとなる内容となった。


●ルイ・ヴィトンの戦略
70年代、ルイ・ヴィトンはパリとニースに2店舗の直営店を持つ典型的な老舗経営のファミリービジネスだった。しかし、70年代後半から日本人の大行列が店を取り巻くにいたって、ブランドの潜在力に気づき、大胆な経営革新を行って進化を遂げた。  並行輸入業者が乱立していた日本市場では、すべての商品を直営店または正規契約店でしか販売しない方針をとり、オーソドックスで正統な商売をすることでブランドイメージを維持。高騰していた価格もパリ本店の1.4倍に抑えて販売することで、顧客の満足度を高めるとともに、闇輸入を封じたのである。  ブランドの切り売り商法が横行している中で、『ルイ・ヴィトンはネクタイを売っておりません』という1980年代の新聞広告のコピーはルイ・ヴィトンの経営姿勢を端的に表す画期的なものだ。


●多角化の可能性を探る
ルイ・ヴィトンの次なる進化を、「多角化」という切り口でグループワークを通じて考えてみた。  塾生たちからは「顧客名簿を最大限生かして、リード・ユーザーとなるハイクラスの人々のトータル・ライフ・サポート・カンパニーを目指す」、「マネジメント能力を生かし、強いコア・ブランドを有する企業を買収し、ブランド維持(マネジメント)カンパニーとして巨大ファッション帝国を築く」など、ユニークな提案が出された。  これらの提案のポイントは、多角化を考える上での経営資源をソフトに求めたことである。  ルイ・ヴィトンが130年間に蓄積した顧客リストや、現在の地位を築いた経営能力を利用した多角化に活路を見いだそうとしたことはよい着眼点といえよう。


●多角化の動機と鍵
一般的に、多角化の動機としては 1.市場や技術の変化に対応するため 2.未利用資源を最大に活用するため 3.将来展望や資源蓄積パターンの変 更、さらにリスク分散を図るため といった動機に大別される。  また、多角化の経済的要因としては、1つの商品を扱うより複数の商品を扱うほうが単位コストが低減できるとか、複数の分野で共通利用ができる未利用資源を持っているといったとき、多角化のメリットが生まれる。これは商品や素材、流通チャネル、情報、資金、人的資源を含めての話である。  特に、ルイ・ヴィトンのケースで顧客情報や経営力が重要な経営資源として挙がったように、「見えざる資源」の活用がカギになろう。これは研究開発、ブランドネーム、企業文化、信用・安心・イメージ、それに人間に体現された経営能力などである。


●多角化の落とし穴
ただし、むやみな多角化は失敗を招く。多角化は余剰資産を有効に活用することだが、すべてが余剰資産ではないし、余剰資産だけでは経営はできない。資源的な制約や、需要があるかどうかという市場の制約、さらに内部管理上の制約を熟慮しなくてはならない。





経営情報スクール 第5回イノベーション企業戦略コース

テーマ/「企業の多角化戦略」
講師/米倉 誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
日時/1999年1月14日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



米倉 誠一郎 講義目録
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 企業の多角化戦略

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