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■組織構造と経営戦略の相関性 日米の自動車産業をモデルに 米倉 誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター長・教授 |
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企業家精神や能力は後天的に身につけることができるのだろうか。米倉誠一郎氏は「天性や資質はあるが、どこまで高められるか、その方法を探るのが科学である」と説いた。たとえば優れた経営者の話を聴き、自分の中で思考をシミュレートする手法もそのひとつ。米倉氏はダライ・ラマやヨルダンのフセイン国王に謁見した体験談から、「偉大なリーダーのカリスマの陰には人知れずひたむきに努力し、驕らない謙虚さがある」と語った。
●組織構造は戦略に従う 経営の基本戦略は4つある。価格戦略、製品差別化戦略、多角化戦略、非競争戦略だが、重要なのは組織との適合性である。価格戦略は大量生産、大量販売だから成り立つ。これには中央集権的職能的組織がふさわしい。製品差別化戦略は一般に事業制をとる。違う分野を取り扱う多角化戦略はさらに進んで分権的事業部制か分社化をとる。事業部制は間接部門のコストを小さくできるからだ。 また、本社のスタッフ部門が分権的事業部を横断して面倒をみればいいとする米国に対し、日本は各々の自立性を高めるために分社化を進めた。しかし、低成長期を迎えると事業部制ならネガティブな決定も執行しやすいが、分社化ではそうした決断がしにくく、最近では分が悪い。 チャネルをすべて押さえる非競争戦略ではどうか。独占、カルテル、参入障壁、ニッチマーケットを扱う組織は非定型でさまざまである。 経営や経済学に強い影響を与えた米国のアルフレッド・チャンドラー(経営史家)は「Structure follows Strategy(組織構造は戦略に従う)」といって、戦略と組織の強い関連性とその重要性を説いている。 ●20世紀のビジネスモデル 20世紀初頭、ヘンリー・フォードは「いいものはシンプル」という信念を持ち、大衆の時代をつくった技術者出身の偉大な経営者である。彼の創業したFord Motor Companyは一般大衆(米国中西部の農民)に、移送式組立ライン(ベルトコンベアー)による大量生産・大量販売で安くT型フォードを提供した。原材料・部品の生産から製品の販売まで一貫して垂直統合戦略をとり、その組織は複数職能制組織だった。 同じ時期にウイリアム・デュラントが創業したGeneral Motorsは、幾度かの経営危機を乗り越えながら、第1次世界大戦後の好況期にアルフレッド・スローンを経営者として迎え、豊かで多様化した市場に対応した。多様化した市場に対し、多様化した自動車工場で、フルライン(多角化)戦略の複数事業部制組織で取り組んだのである。 「any customer can have a car painted any color that he wants, as long as it's black」というヘンリー・フォードの考え方に対し、スローンは「a car for every purpose and every purse」といってセグメント戦略を進めたのである。 ●日本企業のイノベーション では、トヨタに代表される日本の系列生産は何をイノベイトしたか。 GMとトヨタの生産性の差は組織の差といわれているが、具体的には、トヨタがJust in Time方式をとり、多品種少量生産を同じコストで実現したことである。市場の変化を理解しながら生産できる(売れるものを売れるときにつくれるマーケット管理と、在庫を持たないことで不況に強いといわれる)看板方式は、自動車業界だけでなく、家電、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどに拡がり、イノベーションを起こした。 しかし、Just in Timeのフルライン戦略が功を奏した「いつかはクラウン」の時代は終わった。自動車産業では今後大統合が起こる可能性が大きい。 自動車産業はまさに20世紀のビジネスモデルであり、今日の日本があるのも先人たちのイノベーションのおかげであるが、今や自動車産業をはじめとする日本国内の製造業はGDPの約25%しか国富を生み出すことができない。とすれば、今後、我々はそれ以外の分野で新しいイノベーションを起こしていく必要がある。 経営情報スクール 第4回イノベーション企業戦略コース
テーマ/「組織構造と経営戦略の相関性」 |
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