■真の共存共栄を目指したFC展開
ユニバーサルホームの経営理念と戦略

加藤 充 株式会社ユニバーサルホーム代表取締役社長


高品質低価格住宅のフランチャイズシステムによって若年層や低所得者層の市場を開拓し、急成長を遂げたユニバーサルホームの加藤充社長を招き、経営理念と戦略をうかがった。加藤社長は「何も持たず、ノウハウを売る」合理的な本部組織と徹底した加盟店利益重視のFC展開により、飽和状態に見える住宅業界というローテク分野でさまざまなイノベーションを積み重ね、新市場を創造したイノベーターである。


●成長要因は5つ
ユニバーサルホームは、私とアイフルホーム時代の有志26人でスタートした。先ほどの企業分析で、当社の成功要因として「新市場の創出」、「FCシステムによる低コスト実現」、「ブランドの構築」を挙げていただいたが、2つ付け加えたい。  第1は、安定した職を辞して、新会社に参加した人間たちの成功への強いモチベーションである。また、アイフルホーム傘下の加盟工務店150店のうち、取引銀行に反対されながらもユニバーサルホームを選んでくれた約2割の工務店も、同様に成功への意欲に溢れていた。  第2は参入のタイミングである。消費税率引き上げ前の住宅特需に乗れたことが追い風になった。  なお、資本政策を考えるにあたって住友不動産の資本参加を受け入れた。住友不動産が株式の過半数を保有する形にした理由は2つ。第1は住宅事業のリスクは自分たちだけでなく、仮に倒産でもしたらお客様に迷惑がかかること。第2に資本と経営は分離すべきだという信念を持っており、私自身が資本家となるより、経営者として事業を大きくすることに魅力を感じているからである。


●市場は飽和状態に非ず
以前の会社と同じ住宅分野で事業を興した理由は、人材とノウハウがあるため、事業リスクが低いことと、同じ業態の中に競争があるほうが業界全体の認知度を高めることができ、質的向上も図れることなどからだ。  また、皆さんは「住宅市場は飽和状態」と分析されたが、ミクロの視点ではまだまだ未開拓分野が残されている。市場は寡占状態にはなっていない。大手住宅メーカーを合わせても住宅市場に占めるシェアは25%程度にすぎない。マーケットシェアの拡大は十分に可能である。


●商品ラインとチャネル
次に、皆さんの発表で当社の課題として指摘された部分についてお答えする。  第1の課題として「商品ラインの限界」が挙がり、高気密高断熱型の次期主力商品の伸び悩みが指摘されたが、これはある程度予測していたことである。  本来、従来の商品と新商品とはチャネルを分けるべきである。しかし、参加してくれた加盟店の将来展開を考え、あえて分離しなかった。今後、チャネルを分離するか、中間商品を出すかという線で検討している。  なお、新事業展開の際の一般的な注意点として、既存のチャネルに頼らないことを挙げておきたい。チャネルは分離したほうが成功する。当社では新会社設立にあたり、取引先などを一新した。


●本部と加盟店の共存共栄
第2に「事業計画に無理があるのではないか」という指摘があったが、前述のように、住宅市場はミクロ的には開拓の余地があり、エリアによっては当社が7〜8%のシェアをとっている事実からも、事業計画は十分に達成可能と考えている。  また、第3の「優良工務店の奪い合い」については、工務店の絶対数が多いことと、大手メーカーの下請けより、当社のFC加盟店のほうが利益率も高く、経営の面白味もあることから心配していない。  設立当初に比べて加盟店数の伸びが鈍っているのは、参加した加盟店が成功を確信し、事業拡大の余地を残してほしいという希望に配慮してのことである。新規加盟店を増やすより既存成長加盟店の成長を待つほうが成長のスピードは鈍るが、最初から苦労を共にした既存加盟店のメリットを確保することと、現実に既存加盟店が店舗の複数化を図っていることからこうした戦略を選んだ。


●大手、異業種の参入少ない
第4の課題として「大手の参入」が挙がったが、大手住宅メーカーは既存システムが災いしてそれほど参入して来ないと見ている。  また、商社など異業種からの参入も難しい分野だ。当社の設立当初は、異業種からも資本参加や共同事業などの申し出が多かったが、この仕組みを取り入れることは難しく、単独で参入したところも今ではほとんど撤退している。  また、第5として「品質管理」における大手との格差が指摘されたが、大手のダブルチェック体制がうまくいっているとは限らない。人数だけでは品質管理のよし悪しは判断できないし、大手の下請け工務店に対するコスト面での締めつけが厳しいという側面も指摘しておきたい。  ただ、指摘のあったように、この分野を強化する必要性は感じている。品質管理のしやすい工程、部材、部品の開発(選択)や、カメラ設置による現場監理など新しい技術を取り入れた方法もあろう。


●成功のビジネスモデル
当初、1年目は3億円の赤字、2年目は2億円の赤字、3年目で単年度黒字化、4年目で累積赤字一掃、5年目で店頭公開という事業計画構想を描いた。経験則からしても、3年間で単年度黒字にならない事業が成功する可能性は低い。  これを達成するために、最初から「ものを持たない経営」を目指した。通常、FC展開は1店舗目が成功してFC化するものだが、当社は最初からFCでいく戦略だった。  FC展開にあたっては、本部と加盟店が互いに利益を出す共存共栄の仕組みづくりが何よりも大切である。  しかし、現実には多くのFCが本部のひとり勝ちになっており、加盟店で株式を店頭公開するようなところはごく少ない。  私は本部も加盟店も店頭公開できるようになってこそ、本当の共存共栄だと思っている。既存加盟店が儲かって店頭公開すれば、こちらから頼まなくても加盟店は増え、本部もスケールメリットによって成長することができる。


●加盟店重視の経営
通常、地方の単独の工務店の粗利益は15〜20%程度だが、当社では加盟店に30%以上の粗利益が出る仕組みをつくった。ちなみに加盟店約30店舗が損益分岐点であり、約50店舗で本部の固定費を賄えるようになる。約100店舗を超すとスケールメリットが出て、本部も成長路線に乗れる。  こうしたネットワークづくりには先行投資が嵩むが、これを恐れていてはグループ全体の活力は失われてしまう。品質を上げ、価格を下げ、加盟店の利益を確保していくことは、トレードオフの関係だが、これを克服して本部と加盟店との真の共存共栄を図ることが当社の生命線であり、最も重視している経営戦略である。


●加藤経営の真髄
私は「経営とは本業を極大化させること」と考えている。本業以外の利益には魅力を感じない。本業以外の利益には永続性がないからだ。ちなみに、本部の利益の源泉はフランチャイズフィーと資材販売から得られるマージンだけである。  加盟店の利益を増やし、それぞれが成功することで最終的に本部も成長できるように、加盟店のそれぞれのステージに応じて日常的なアドバイスのほかにも勉強会などの機会を設けて、ステップアップを支援している。店頭公開の知識や資本政策の助言などもそのひとつである。


●働きやすい環境を提供
経営者として本部組織について重視していることは、社員がのびのびと仕事ができる環境を提供することである。私自身が新しもの好きということもあって、年俸制やフレックスタイム、リフレッシュ休暇、カジュアルフライデーなど、いいと思った制度はその都度、積極的に取り入れている。幸いにも、社員がそうした新しい制度をうまくこなしてくれている。  また、女性の活用も積極的に進めている。もともと私は能力に男女差はないと思っている。しかも住宅は女性の能力を発揮できる分野であるし、現実に女性の生真面目な性格や柔らかな対応はさまざまな面でプラスに働いている。  最後に、これまでの成長は商品力によるところが大きかったが、今後の課題として、マニュアルの整備や教育を通じて営業などの質を上げていきたいと考えている。  ローテク分野でもイノベーションのチャンスは十分にあることがおわかりいただければ幸いである。





経営情報スクール イノベーション企業戦略コース 一橋大学経営フォーラム

テーマ/「ユニバーサルホームの企業戦略と経営理念」
講師/加藤 充(株式会社ユニバーサルホーム代表取締役社長)
アドバイザー/米倉 誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長・教授)
日時/1999年2月25日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



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