■不動産投資インデックス
インフラとしての必要性と課題

佐藤 一雄 株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長


佐藤 一雄
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日本の不動産投資市場が成長するためには、インフラとして不可欠な不動産投資インデックスだが、その実現には課題が多い。自らインデックスの試作をも手がけてきた佐藤氏に、解決すべき課題と併せて、不動産証券化の課題も概説していただいた。


●投資の意思決定と評価に活用
不動産インデックスは、機関投資家が不動産に投資するために判断の基準とする指数である。基本的な指数は、投資額に対して年間どれくらいの収益を上げたかを示すものだ。具体的には、年間の賃料収入と年間の不動産値上がり額(または値下がり額)との和を、年初の不動産価格で割って求める。  この指数は2つの局面で使われる。1つは、投資する場合の意思決定に使われる。  2つ目の使い方は、投資結果を評価するためだ。アメリカの不動産インデックスの一つであるNCREIF(The National Council of Real Estate Investment Fiduciaries)は、ファンドマネージャーが集まり、自らの仕事の評価基準が必要だとしてインデックスを開発した。  英国の代表的なインデックスとしてはIPD(Investment Property Databank)がある。こちらは、ルパート・ナバロ氏が当時の荒廃していた都市に投資を呼び込む手段として利用できないかとして数人で考案した。現在では英国の機関投資家が投資する物件のうち、7〜8割のデータがIPDのコンピュータに自動的に入り、投資内容の分析および評価に活用されている。


●情報公開など山積する課題
わが国でも今後、年金基金などが不動産に投資するケースが増加するだろう。その際の不動産投資市場のインフラとして、不動産インデックスは必要である。ただし、不動産インデックスを設けるうえでの問題は多い。  第1の問題は、日本では不動産を大手不動産会社が所有しているために、データを公開する意味がないという点だ。今後はプレーヤーとしての投資家が現れてくれば、データを公開する必要が大きくなる。これは「鶏と卵の関係」である。  また、情報の内容が各社ごとに異なる点も問題である。一言に「収益」と言っても、その実質的な内容は企業ごとに大きく異なる。インデックスの開発には、そうした用語の厳密な定義が必要だ。さらには、データの秘密を守る仕組みや、ユーザーの要求に合ったサービスの構築なども課題である。  


●困難な基礎数値の算出
より具体的な問題としては、算出の基礎となる不動産価格をどう求めるか、という点が指摘される。年間の総合収益率を算出するためには、年間の不動産価格のキャピタルゲインあるいはキャピタルロスに、年間の賃料収入を加えた数字が分子になる。キャピタルゲイン(あるいはロス)は、1月初めの不動産価格と12月末日の価格差であるが、そもそも時価を正確に求めることは非常に難しい。  英国では、他の取引事例を参考に時価を求めているというが、事例が多い場合は可能だろう。しかし、オフィスビルを考えると、売買事例が極めて少ない日本では、事例を参考にすることは難しい。  すでに日本でもいくつかのインデックスが試作されているが、上記の課題は残されている。


●馴染み薄い証券化の仕組み
ここで、不動産証券化の問題を総括してみたい。  不動産の証券化が理解されにくい理由は、証券化に使う仕組みや入れ物に馴染みがないからである。入れ物としては、税金のかからないものを使う。信託であり、匿名あるいは任意組合、ペーパーカンパニーの株式会社であるSPC、会社型投信など実に多彩だ。  株式は400年ほどの歴史があり、その間に法制度や仕組みが洗練されて今日に至っている。それに比較すると、不動産の証券化、あるいは資産を背景とした証券というものは、これまでとはまったく異なる仕組みや入れ物を使うために、難しく感じられるのだろう。  また、昨年から多くの金融再生のための法律ができている。その理由は、民法や商法などの一般法では不良債権の整理がつかないからだ。特別法は一般法では動きにくい部分を補うものであり、SPC法もその一つである。ただし、本格的な不動産証券化を図るには、特定共同事業法もSPC法もまだ使いにくい面があり、改善すべき点は数多くある。


●求められる投資環境の確立
投資家の立場でいえば、銀行に資金を預けて金利を受け取るというのも一つの投資である。生命保険も同様である。しかし、大蔵省に関係する銀行、通産省に関連するリースクレジットや商品ファンド、建設省に関連する不動産特定共同事業など投資商品のスキームはバラバラである。現状ではやむを得ない面もあるが、投資家保護の観点から統一的に整理しなければならない。  そうした施策の一つが、2001年春ごろの成立を目指している金融サービス法だ。同法の課題は、各省別に成立している法律をトータルに吸収できるかどうかだ。また、投資家保護と投資家の自己責任をどのように確立していくかも、大きな問題であろう。  現実には、株式の損失を補償しろという声も多い。日本では、株式の本質が理解されていないのではないかという疑問が起こる。そうした日本の社会で、本当の意味での投資をどう根づかせていくかは大きな課題である。


●慣行を考慮し情報公開へ
不動産業側の問題も考えておきたい。従来は情報を公開する必要がなく、公開することが事業上のデメリットでさえあった。しかし、これから投資市場が拡大する過程では、情報公開の必要性が大きくなる。  ただし、日本には独特の商慣行がある。それとの関係をどう整理するかを考慮しながら前進しなければ、簡単には情報公開ができないという側面もある。  これまでの不動産業のあり方を批判する声は多い。しかし、それは的を外れているのではないだろうか。責められるべき点もあるが、これまでの慣行にはそれなりに合理性があったのである。  また、外国の不動産業のいい点を取り入れろ、という声があるが、それにも疑問を感じる。各国にはその国なりの不動産に関する長い歴史がある。そのいい点だけを日本に取り入れようとしても無理があるだろう。  ただ、確かに日本の商業用不動産は世界に通用する商品になっていない。今後は、不動産インデックスをはじめ、必要なインフラを整備しながら、わが国の歴史を踏まえつつ国際的な投資商品をつくりあげていかなければならない。  





環境デザインスクール不動産証券化講座第6回

テーマ/「不動産投資インデックス」
講師/佐藤 一雄(株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長)
日時/1999年2月9日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



佐藤 一雄 講義目録
■第23期 '99.4.27
いまなぜ証券化なのか
■第23期 '99.5.11
 不動産証券化とはなにか
■第23期 '99.5.18
 不動産価格-このとらえようのないもの
■第23期 '99.6.1
 動き始めた一般投資家向け商品
■第23期 '99.8.31
 規制緩和と環境整備が不可欠
■第21期 '98.11.10
 いまなぜ証券化なのか
■第21期 '98.11.24
 不動産特定共同事業法の活用と課題
■第21期 '99.2.9
 不動産投資インデックス

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