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■米国の不動産市場のメカニズム
学ぶことの多い成熟した市場 冨川 秀二 三井不動産投資顧問株式会社取締役法人営業部長 |
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米国は1989〜1991年の不況時に不動産資本市場を大改革し、それまでの資金の流れに代えて、REIT、CMBSという新しい資金の流れをつくり出した。同時に、投資家と融資先を結ぶ流れの間の仲介役として、フィー・ディベロッパー、アセット・マネージャー、不動産投資顧問、サービサーなどのビジネスが成長した。その後を追う日本が今なすべきことは何かを、三井不動産投資顧問株式会社の冨川秀二氏に語っていただいた。
●「ノンリコース」が融資の常識 米国と日本の不動産事業を比較すると、さまざまな相違がある。その一つが不動産取得のために利用するファイナンスである。米国では、取得する不動産の信用と収益によって資金を借りる「ノンリコースファイナンス」が常識だ。このファイナンスでは、融資返済の求償権が、借りた人の他の資産までは及ばない。 それに対してわが国の融資制度は、借りる人の他の資産の信用も含めて融資を実行する「リコースファイナンス」である。融資返済の求償権は他の自己資産に及ぶ。この制度で融資を受けて実行するビジネスの危険性は高く、危険な資金の借り方である。 特に、マーケットが大きく上下する状況では、危険が大き過ぎる。投資家やディベロッパーが引き受けるべきリスクと、銀行が引き受けるべきリスクを分けないとビジネスはできない。求償権が借り手の自己資産に及ばない「ノンリコースファイナンス」を日本にも導入する時期だろう。 ●年金資金はREIT、CMBSへ 米国の投資用不動産市場の規模はおよそ174兆円である。年金基金が長期の投資をして利回りを得ているほか、学校の基金を運用する寄付金財団のようなものもある。これら機関投資家は、資本市場でさまざまな商品に投資しているが、不動産は株や債券と同様に、投資運用先の一つとしてきちんと位置づけられている。 年金基金や寄付金財団から投資用不動産へ資金が流れる途中には、さまざまな仲介役が存在する。ディベロッパー、不動産投資顧問会社、生命保険会社不動産部、投資銀行不動産部などがそれだ。 それらの中で、投資銀行の不動産部はREITとCMBSに力を入れている。この2つを使い、公募市場で年金基金・寄付金財団など機関投資家の資金を吸い上げ、それを不動産事業に投資している。あるいは資金を求めている不動産事業を探し出し、それをREITまたはCMBSという商品にして機関投資家に売っている。 このような成熟した米国の不動産投資市場と比較すると、日本は大きく立ち遅れていると言わざるを得ない。しかし、日本でも年金などの機関投資家の資金が膨らみつつあり、それにつれて運用先の選択が重要になってきている。 ●80年代末からの市場改革 1970年代から今日までの間、米国における不動産ファイナンスの資金供給者には、時代ごとのスター選手がいた。初めは、銀行・生保の不動産担保融資であり、最新のスター選手はエクイティーREITである。 年金基金がスター選手として登場したのは、1973年の「退職者所得安定法」の制定以降である。同法により、年金基金の運用に関する受託責任の範囲と情報開示に関するルールができ、それに従って不動産に資金を投入する年金基金が現れた。 しかし、1989年からその翌年にかけ、米国は大変な不況に見舞われた。この時に米国は大きな決断をした。多額の税金を使って銀行や生保の不良債権を処理するのだから、失敗した者を大いに罰してやろうと動いたのだ。極めて厳しい自己資本規制のルールが生まれ、基本的に銀行や生保が不動産に融資できないようにしてしまった。その結果、1990年から1993年の初めまで、不動産にはまったく資金が流れなくなってしまった。 そうした閉塞した状況の中から、不動産市場に資金を流す新しいシステムが誕生した。それが、エクイティーREITやCMBSという不動産証券市場だ。 ●REITに移行した土地 エクイティーREITは、一般の投資家が専門家の経営する不動産投資に投資して安定した収入を得る仕組みであり、2つの理由で注目された。一つは、借金で苦しむ不動産ディベロッパーにとっての逃げ道としてである。「自分が所有している不動産は12%で回っているが、これをREITで上場すると、12%のうちの6%か7%を配当すればいい。これなら借金を返済できる」と考えたのである。2つ目は、ソルベンシー・マージン規制法に対応しながら保険会社が資金の流動化を図る手段としてである。 REITは、1992年から1993年ごろに急激に伸長する。その結果、不動産の所有形態は、家族会社からプロの雇われ経営者のいる企業、すなわちREITへと変わっていった。 1980年初めには、マンハッタンの中の326万坪を36家族で所有していたように、米国では家族会社が広大な土地を所有していた。こうした家族会社である不動産会社の土地が、プロフェッショナルなマネージャーにどんどん吸い上げられていった。 この動きが拡大した最大の理由は、UPREIT(Umbrella Partnership REIT)によって、不動産売却に伴う連邦税の課税を繰り延べできるからだ。不動産をREITにすると、簿価が低い場合にはキャピタルゲインが出て、課税対象となる。それに対してUPREITでは、株式として処理することにより、株式を売却したときのキャピタルゲインに対して課税される。この繰り延べ措置によって、REITは急激に伸びた。 ●CMBS化を進めるウォール街 CMBSも今や20兆、30兆円の市場に成長した。商業用不動産を担保とし、複数の貸付債権をまとめて証券化したこの商品の種類は多様だ。なかでもウォール街による融資のCMBS化が最も盛んで、1990年、1991年のクレジットクランチの間に急激に成長した。 ウォール街のつくったCMBSの優れた点は、融資が焦げついたときに、真っ先に飛び出していって処理に当たるサービサーのシステムを初めから債券に組み込んだことだ。サービサーとなる会社をあらかじめ設立しておき、そこに最も劣後している債券を持たせた。さらに融資を受けた不動産の所有者が管理運営をギブアップしたときには、サービサーとなる会社に管理運営を任せなければならないというルールをあらかじめローンドキュメントに定めている。 これが米国におけるCMBSの素晴らしい点である。 ●日米のシステム差異 日本の住宅金融公庫のような制度がない米国では、一般の金融機関が住宅を購入する人に対して融資を行っている。政府はそうした融資を保証しているが、それによって融資を証券化商品として市場で売却することができ、金融機関のバランスシートは、きれいで軽くなっている。民から民への資金の流れを、政府が保証することによって支えるというのが、米国の仕組みだ。 政府が民から資金を吸い上げて、民にばらまくという日本のシステムとは、根本的に哲学が異なる。これがCMBSというシステムが米国で成長した理由の一つだ。 環境デザインスクール不動産証券化講座第5回
テーマ/「米国の不動産市場のメカニズム」 |
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