■外資系ファンドの
     日本不動産買い

現場から見た不動産証券化の課題

廣田 潔  株式会社大都市開発部部長
橋本 嘉寛 メリルリンチ証券会社東京支店ヴァイスプレジデント・
シニアアナリスト



バブル崩壊後の一時期、日本の不動産を購入しようとする外資の動きが目立った。しかし、現在は、不動産そのものの取得から、不良債権の購入へと方向を転換している。外資はどのようなスタンスで日本の不動産に投資しようとしているのか……。 昨年、モルガン・スタンレー社に50棟・1200戸のマンションをバルク売りした、大京の廣田氏に外資の投資パターンとバルク売り成功の理由を解説していただいた。また、メリルリンチ証券会社の橋本氏には、今年春から本格化した不良債権処理にふれながら、企業の格付けとの関連性など、広範な問題について話していただいた。

◇廣田 潔氏
●規模の大きさが成功要因
大京は1997年秋、在庫マンション3000戸を抱え、外資へのバルク売りを考えた。その後、1800戸については国内の投資家に売ることができ、モルガン・スタンレー社にバルク売りしたのは50棟・1200戸だった。簿価は約350億円である。  モルガン・スタンレー社へのバルク売りが成功した理由の一つは、取引のサイズが大きかったことだろう。実際の取引は、彼らが設立した日本法人との間で行われたが、アメリカの取引慣習に沿った取引でなければならなかった。アメリカ型の取引は、デュー・デリジェンス(物件調査手続き)などで非常にコストがかかる。そのため、まずサイズが大きくなければ取引にならなかった。  買った不動産は必ず売却する、という彼らの投資パターンに、我々のマンションが向いていたことも理由だと考えられる。外資の投資期間は長くても7、8年で、せいぜい5年だ。6年後には売ることが決まっていて、その際に売りやすいことが重要視される。出口戦略が明確でなければ投資しない。  バブル崩壊後に始まった外資による日本の不動産買いでは、外人用高級賃貸マンションが注目された。しかし、日本の物件を日本の市場で売るのなら、売りやすいほうがいい。ならば、外人用高級賃貸マンションにこだわらずに、むしろ一般ユーザーに売りやすいもののほうが投資しやすいのではないか……。そう気がついて、大京の在庫マンションに対してオファーがあったのだと思う。


●統一されたスペックも鍵に
大京のマンションのスペックが統一されていたことも大きな理由として挙げられる。同じ年に建っていれば、似通ったスペックで建てられていたし、築年数もだいたい5年程度だった。一定レベルのゼネコンが施工し、賃貸や管理は当社の子会社が一貫して行っていた。  そのため、将来の大修繕の時期や費用などが見えやすい。また、デュー・デリジェンスや値付けを決定するために、膨大な資料を求められたが、これも対応することができた。  モルガン・スタンレー社が預かる資金のほとんどは、企業年金である。企業年金の運用については、リスクを低くすることが求められるし、さまざまな規制もある。戦略性を高く持たなければ、やっていけない。そうした彼らの投資条件に対して、我々のマンションが応えられたことが取引の成功に繋がった。  我々の取引以降は、生の不動産の取引はあまり聞かない。外資は当時、日本の景気は間もなく底を打ち、回復するだろうと考えて、投資意欲は高かった。しかし、見込みに反し、下げ止まらない状況が続いているなか、生の不動産に投資できないでいる。また、外資自身の不動産以外のポートフォリオが、だいぶ傷んでいることも原因と考えられる。  現在は、ディスカウント率を高めて不良債権を買っている。外資の不動産買いは“ラストリゾート”として期待されたが、線が細くなっているのが現状だ。


◇橋本嘉寛氏
●99年はリストラが本格化
1999年は「不動産叩き売り」の年になるだろう。  今、債券が売られると金利が上がる。金利が上がると円が強くなり、輸出企業の業績が悪化し、株式や不動産などの資産が売られる。これは経済学的に見て、面白い現象ともいえる。  本来は債券市場が一致指標で、株価が先行指標と言われてきた。しかし、現在の弱気のマーケットでは、債券市場が先行指標で株価が後を追っている。また、債券が売られると資金調達コストが上昇し、企業の喉元にナイフを突きつけて、リストラを要求する動きになるのではないかと思う。  しかし、90年代の初め、米国の30年国債の利率が7.5%から9.0%に上がった。その時点で景気は悪かったが、リストラの本格化で5年後に株価が本格的に上昇を始めた。市場が弱いときは、債券市場が先に上昇することを示したわけだ。結果として、経済の回復の兆候が最初に債券市場に現れたともいえる。  今年の年初来の日本の動きも、アメリカの例に似ている。今年の前半は売りのクライマックスだが、どこかで信用収縮が信用創造に変わる時期になると思う。  今年の重要なスケジュールは2つある。一つは3月末の銀行への公的資金注入である。それにより、悪い不動産はどんどん売られる。もう一つは4月1日の日本版RTCの設立だ。長銀、日債銀の不良資産を購入し、その後、資金回収のために不動産を売却する。  共同債権買取機構の動きにも注目したい。昨年春まで共同債権買取機構は、債権の3割程度の額で購入してきたが、昨年の秋になると、10%とか3%の買取額に下がり、一方で買取量はどんどん増えている。  不良債権を株式マーケットから見た場合、買取額が下がったということより、値段がついて動きはじめたということを評価すべきだ。


●資産売却で格付けはアップ
さらに注目したいのは、健全な不動産の動きだ。昨年11月に東京三菱銀行は、本店ビルを売却したが、一昨年まで企業が不動産を売るのはタブーだった。一昨年の11月に安田信託銀行が本店ビルを売却したときは、その後に預金者の解約をいくらか招いた。それなのに東京三菱銀行の本店売却の決定で、東京三菱銀行の株価は逆に上昇している。現在は不動産を売れば株が上がる時代である。  また、98年から、株価が下がると会社が殺されかねない時代になった。また、今やクレジット・レーティングが下がるのは大変な問題だ。格付けと社債の対国債スプレッドの関係では、レーティングがシングルAからトリプルBに落ちると、金利を3%上乗せしないと借りられない。クレジット・レートを上げたければ株価を上げねばならない。そのためには不動産を売れ、という時代になったのだ。  これから優良不動産に投資するうえで、商業施設にも注目している。オフィスビルだけが脚光を浴びているが、現在でも過剰供給ぎみなのに、2002年に大型ビルが次々に竣工する。また、テナントが安いビルに移動するのに伴い、賃料が下がる恐れもあり、問題が多い。  それに対して商業施設は、まず、賃貸契約期間が長く、証券化しやすいのが特徴だ。ただし、商業施設は活気ある施設でなければならない。そのためには、運営者にはこれまで以上にマネージメント能力が求められるだろう。





環境デザインスクール不動産証券化講座第4回

テーマ/「外資系ファンドの日本不動産買い」
講師/廣田 潔(株式会社大京都市開発部部長)
橋本 嘉寛(メリルリンチ証券会社東京支店ヴァイスプレジデント・シニアアナリスト)
アドバイザー/佐藤 一雄(株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長) 日時/1999年1月12日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



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