■不動産特定共同事業法の活用と課題
魅力ある投資商品をつくるために

佐藤 一雄 株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長


佐藤 一雄
講義一覧▼


不動産特定共同事業法による事業が各地で進められている。スタート当初より規制は緩和されたものの、約款の問題や税制など解決しなければならない課題は多い。なかでも、機関投資家に対して、株や債券と同様に投資できる魅力的な商品にしていくことは、同事業の発展を図るうえで大きな課題である。事業者の側で、制度の整備に努めてきた佐藤一雄氏に、現状と課題を解説していただいた。


●本業と不動産の財務分離へ
企業が財務体質を強化するために不動産の証券化が行われている。資産処分によって手に入った資金で借り入れを返済すれば、財務体質が強化されるというのだ。しかし、それで本当に企業の評価が上がり、資金調達がしやすくなるのかは、慎重に検討してみなければわからない。コーポレイト・ファイナンスと不動産の証券化によるファイナンスの比較は、不動産シンジケーション協議会でも重要な検討課題だと考えている。  ダイエーは、店舗を建てるたびに土地を購入した。土地が値上がりして利益を生むと、その利益を元手にして新たに土地を購入して店舗を増やすというサイクルを繰り返しながら、事業を拡大してきた。しかし、現在の状況では、不動産が企業の重荷になっている。  本来、不動産の収益と事業の収益は別ものである。不動産証券化や不動産特定共同事業は、本来の事業の財務と不動産の財務を分けることが可能になる。そういう形で、特定共同事業やSPCが使われる可能性があるだろう。


●任意組合型と匿名組合型
不動産特定共同事業の要件は、 ・特定事業契約に基づくこと ・不動産取引であること ・そこから生じた利益の分配であること ・それを業としていること の4点である。特定共同事業契約には、任意組合契約と匿名組合契約、賃貸共有にかかわる契約の3タイプがある。このうち、主流となるのは、任意組合契約と匿名組合契約である。  任意組合型は、まさに出資者がタテヨコに繋がり、全員で事業を進めるものだ。投資する不動産は、共有持分権を所有するという形で投資家が所有する。  匿名組合型の特徴は、投資家同士の連絡がないことだ。業者と投資家が1対1の契約を結び、不動産は営業者が所有する。投資家は、不動産から上がる収益を受ける債権的な権利だけを持っている。  不動産の定義は、原則として宅建業法と同じである。対象となる不動産は、客観的に見て一体性を有しなければならない。スタート当初は、ビルであれば1棟しか特定できなかったが、同一敷地内であれば複数でもよいという具合に緩和された。1口当たりの出資額も緩和され、1998年11月時点では、現物出資は100万円、金銭出資は1000万円である。契約は何十年であってもよく、期限を定めない契約も可能である。  不動産特定共同事業法は、日本国内にいる投資家に受益権を売った場合に適用される。問題は海外の不動産を日本国内に売る場合だが、これも同法の適用の対象となる。


●譲渡・流通性の強化が課題
これからの大きな問題としては、譲渡性や流通性が挙げられる。現在は、出資家が共有持分権などを第三者に譲渡するのが難しく、販売した業者にいったん売り戻した後に、それを次の出資家に売らなければならない。この仕組みを変え、もっと売りやすくしなければならない。現在の特定共同事業法でも、情報開示の定めがあるが、売りやすくするためには、もっと詳細な情報開示が必要だろう。  また、特定共同事業法の特徴である約款にも問題があり、特定共同事業法をわかりにくくさせている。これから改善が必要な部分である。


●課税に関する問題も山積
現在(1998年11月)、特定共同事業法による許可業者は55社であり、さまざまな形態で事業化が進められている。  任意組合型で再開発に使い、地主と一緒にビルを建設した例がある。完成後、1階を所有する地主と8階を所有する地主ができたとして、1階にはテナントがついたが、8階にはテナントがつかない、ということがあり得る。そうした利益の差を防ぐために、この事例では、全部の家賃収入をプール計算して分配しようとした。税務署は、特定共同事業ならよいが、単なる契約でプール分配するとテナントのつかなかった8階の所有者への分配は贈与の恐れがある、と言う。だが、この違いは徹底されていない。  個人にマンション投資を勧めた事例もある。金銭出資型のマンション投資で、債権としての事業に投資家は投資した。匿名組合に出資し、そこから金銭の分配を受けるというもので、不動産から上がった収益の分配であるが、不動産を所有しているのは営業者である。この場合、不動産税制が適用になるのか、それ以外の税制が適用になるのかが今のところ明解になっていない。  新しい商品が登場すると、必ず起こるのが税金の問題だ。適用するのは不動産の税制なのか証券の税制なのか、利益をどの段階で認識するのかなど、解決しなければならない問題が多い。  現在進行している事業の中には、そうした問題について関係機関の回答が得られないまま、見切り発車している事業もある。これは早急に整備を要する部分である。


●長期事業にも投資しやすく
機関投資家は最近、株や債券だけに投資するのではなく、不動産にも投資したい意向を示している。ただし、従来のような形の不動産投資ではなく、株や証券と同様に考えられる不動産投資を探している。  特定共同事業法による区画整理事業に投資するにしても、事業の収益が出るまで2年を要するのであれば、2年ものの債券と比較したうえで利益が多そうであれば投資する、というのが現在の動きだ。実験的な投資の段階ともいえる。  マンションや建売事業は、せいぜい事業期間が2年だから、先が見えやすく投資もしやすいだろう。しかし、事業期間が長い開発事業は期間が延びやすく、建築工事費がかさんだり、期間中に工事費が高騰する可能性がある。その結果、予想された収益が得られないリスクも考えなければならない。  不動産特定共同事業は、どういう商品でなければいけないという制約はないが、特定共同事業法によって商品を供給する側としては、これまで流動性の高い株や債券に投資してきた機関投資家に対し、期間の長い事業について投資しやすい仕組みを考えなければならないだろう。





環境デザインスクール不動産証券化講座第2回

テーマ/「不動産特定共同事業法の活用と課題」
講師/佐藤 一雄(株式会社サタスインテグレイト代表取締役社長)
日時/1998年11月24日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



佐藤 一雄 講義目録
■第23期 '99.4.27
いまなぜ証券化なのか
■第23期 '99.5.11
 不動産証券化とはなにか
■第23期 '99.5.18
 不動産価格-このとらえようのないもの
■第23期 '99.6.1
 動き始めた一般投資家向け商品
■第23期 '99.8.31
 規制緩和と環境整備が不可欠
■第21期 '98.11.10
 いまなぜ証券化なのか
■第21期 '98.11.24
 不動産特定共同事業法の活用と課題
■第21期 '99.2.9
 不動産投資インデックス

academyhills.com