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■志を掲げ、 情報産業の真ん中へ切り込む ソフトバンクの理念・ビジョン・戦略 孫 正義 ソフトバンク株式会社代表取締役社長 |
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今、もっとも世界がその行動を注目している人物、ソフトバンクの孫社長を迎え、その理念、ビジョン、戦略をうかがった。非常に早い時点でデジタル情報サービス産業、なかんずくインターネットの可能性に着目し、サイバースペースでのビジネスの先駆者として国際的に活躍する孫社長。その行動力の原点は「社会を変える」という強い志(こころざし)と情熱にある。
●始めに「志」ありき ベンチャーを問わず、あらゆるビジネスに大切なのは「志(こころざし)=理念」であり、それを実現したいというひたむきな「情熱」である。 まず、理念があり、ビジョンがあり、それを実現するために戦略がある。理念やビジョンのない戦略は成功しない。金も人も集まって来ないからだ。理念に共鳴し、ビジョンを共有して初めて人やモノや金が集まってくる。これが一番大事なことだ。 ソフトバンクの理念は『テクノロジーを活用することによって、人類の知恵と知識を共有し、創造的で幸せな社会を実現する』ことである。そして、『あらゆるシーンがインターネットにつながる』というビジョンを描いている。 ビジョンを実現するソフトバンクの戦略は次の4つである。 1.デジタル情報サービス産業で 世界ナンバーワン 2.サイバースペースに集中 3.群戦略 4.企業価値創造経営 この中で、我々が中心に据えている戦略は「企業価値創造経営」だ。 ●企業価値とは何か では「企業価値」とは何か。それを測る指標は何か。僕は「企業価値とは将来のキャッシュフローのシグマ」と考えている。 たとえば鶏が10羽いるとしよう。どの鶏がもっとも価値が高いのか。賢い人ならば、今年産んだ卵の数だけで鶏の価値を決めはしない。一番価値の高い鶏は、今後死ぬまでに産む卵の総数がもっとも多い鶏だからだ。 米国の先進的経営者はEVA(経済的付加価値=税引き後の純営業利益−資本コスト額)を重視している。我々はすでにこの指標を実際の経営に取り入れ、それをさらに発展させている。なぜなら、EVAは過去の業績を示すものであって、「未来」という視点が抜けているからだ。インターネット産業の進化スピードを考えると、過去の業績だけの指標では企業の真の価値は捉えられない。 企業の価値を測る上で、現在もっとも進んでいる指標は、理論MVA(理論企業付加価値=理論時価総額−株式資本)をエクイティで除したものである。平易にいえば「株主から預かったものをどれだけ増やしたか」を示すモノサシであり、我々はこのモノサシで経営している。こうした企業は日本ではおそらくソフトバンクだけであり、米国でも数少ない。ちなみに、この指標による企業ランキングで、ソフトバンクは日本第3位である。 実際の株価は現在15位だが、このギャップは市場がソフトバンクの実力をまだ十分に理解していないためと僕は捉えている。 ●ソフトバンクの企業価値 ソフトバンクは米国のインターネット産業の多くのキーカンパニーの株式を所有している。僕は、たとえば100%所有の会社を3社持つより、30%所有の会社を10社持つ方法をとった。そのほうがリスクヘッジでき、よりダイナミックに成長できると考えたからである。 当社の所有している株式は、上場済みの株式だけで時価総額1兆5000億円を超えており、未公開株を含めれば2兆円に達するだろう。これはソフトバンクの時価総額8000億円を上回る。ちなみに99年1月時点での当社のインターネット関連株式の含み益は1兆6000億円弱で、日本第2位である。 ●サイバースペースに狙い 17年前、僕は3つのトレンドを予測し、断言した。第1は「すべての産業の中で情報産業が1番になる」、第2は「大型コンピュータはニッチ(隙間)産業になり、パソコンがメーンになる」、第3は「ハード主体からソフト中心になる」。 このトレンドを確信していたからこそ、最初からすべての産業のど真ん中を狙っていく戦略をとったのだ。つまり「情報産業」の「パソコン」の「ソフト」を狙って企業価値を最大限に高める戦略をとったわけである。 また、オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションソフトでは後者を選んだ。OSはいずれ1社独占となり、日本企業ではその1社になることは難しいからだ。 ただ、アプリケーションソフトも流行歌のようなもので、ヒットはしてもヒットを継続することはできない。そこで、利幅は薄くても、広く、長く儲けることができ、リスクもヘッジできる「流通」という中立的インフラを押さえる戦略をとった。 ●歴史からのアプローチ ビジネスの成功に欠かせないことは「大きな流れを読む」ことだ。 近世から現代に至る歴史は大別して3つのステージに分かれる。第1ステージは農業革命による農耕社会。第2は産業革命による工業社会。第3は情報革命による情報社会である。 情報産業の進化にも4つのステージがある。第1ステージはテレビや印刷機械などのメーカーが活躍する「アナログ情報テクノロジー」の時代。第2ステージはテレビ局や新聞社、映画会社などが主役の「アナログ情報サービス」の時代。第3ステージはコンピュータ・ハードやコンピュータ・ソフトのメーカーが活躍する「デジタル情報テクノロジー」の時代。そして、第4ステージは「デジタル情報サービス」の時代だ。 第2ステージのトップ10の企業価値の合計は第1ステージより大きく、第3ステージのそれは第1と第2を足した以上に大きくなる。そして第4ステージは第1〜3ステージの合計を上回るだろう。 また、第1ステージのトップ10メーカーは第3ステージとは重ならない。第2ステージのトップ10企業が第4ステージにまた登場することもおそらくないだろう。 大きなパラダイムシフトによって、第4ステージのトップ10企業の大半がニューフェースで占められるものと思う。 第1ステージのトップ10には日本企業がかなり入っていたが、第3、第4ステージのトップ10に日本企業が入る可能性は残念ながら皆無である。 そこで我々は米国の企業になって戦い、トップを狙うことにした。企業名の「日本ソフトバンク」から「日本」の2文字を外したのはそんな背景がある。 インターネット産業の発展段階にも7段階の流れがある。すなわち「ハードウエア→アクセス→ソフトウエア→サービス→メディア→Eコマース」であり、この順で企業価値が高まっていく。株式投資をするにせよ、ビジネスを考えるにせよ、こうした大小の流れを押さえてタイミングよく実行することが不可欠である。 ●ゼロ(0)と無限大(∞) インターネットの特徴は「0」(ゼロ)と「∞」(無限大)で表される。これらの特徴をもっともよく理解し、ビジネスモデルに表した企業が勝利者になる。 その特徴とは、タイムラグゼロ、情報劣化もゼロ、変動費もゼロ(1人に伝達するのも1000万人に伝達するのも費用は変わらない)ということだ。また、インターネットユーザーは無限大、切り口も無限大、コミュニティも無限大なのである。 しかし、一方で、現在のインターネット関連産業は過熱しすぎており、危険だという声がある。確かにインターネット関連株はいったん下がるかもしれない。しかし、10年単位で考えた場合、インターネット業界の時価総額はパソコン業界のそれと並び、追い越すことは間違いない。 今までも自動車、テレビ、電話といった産業が伸びたのは、我々の生活にとって非常に便利だったからだ。インターネットもしかり。否、これら以上の恩恵を人類にもたらすものだ。こうした産業が伸びないはずがない。本質を捉え、10年タームで考えれば、答えは実にシンプルである。 ●ネット産業に占める位置 ソフトバンクは今、インターネット産業に属する企業価値総額の約7.5%を所有している。同産業の株主としては世界最大だ。しかも、各ジャンルのキーカンパニーを押さえている。なぜ、それができたかといえば、当社は成長企業を発見する力、ファイナンス力、マネジメント力に優れているからである。 2〜3年中にこの比率を10%まで高めたい。業界のキーカンパニーを中心に40%の企業の株式の25%を持てば達成できる。こうした群戦略によってリスクヘッジを図ることもできる。すでに上場、非上場を合わせれば約100社の筆頭株主か、それに近い存在になっている。 ●世界のトップを狙う キーカンパニーを所有することによって、まず、EYEBALLトラフィックで世界第1位になる。EYEBALLトラフィックとはテレビの視聴率に相当するものだ。そして群戦略でリスクヘッジとシナジー効果を高める。 我々が株式の20〜35%しか所有しないのは戦略的なものだ。我々がシナジーインベストメントカンパニーに移行したのは、進化スピードの速いインターネット産業において、51%以上を所有してコントロールすることは効率が悪いと判断したからである。今後、こうしたWeb型組織がもっとも強くなることを自ら証明していきたい。 今までソフトバンクの企業戦略についてお話ししてきたが、あくまでもこれらは方法論である。我々が成功したのは理念であり、ビジョンなのだ。 ベンチャーを目指すすべての人々に「すべては夢から始まる」と言いたい。そして、その夢が社会全体、人類全体を変えるようなものであれば、それは「志」になる。志こそ多くの人を動かすものだ。志を共有する仲間の繋がりは、ある意味で家族より強い。命を捧げてもいいと思えるような志を持つことができる人生は素晴らしい。 そういう人生、そういう企業、そういう仲間を選んでほしいと切に願う。 経営情報スクール イノベーション企業戦略コース 一橋大学経営フォーラム
テーマ/「ソフトバンクの企業戦略と経営理念」 |
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