■マイクロマシンの現状と今後の活用
21世紀社会に貢献する技術を求めて

藤田 博之 東京大学生産技術研究所第3部教授


SF映画では体内を動き回る超小型機械として描かれるマイクロマシン。実世界ではどのような形で利用され、私たちの社会と生活環境にどのような変化をもたらすのだろうか。「壁紙や床にマイクロマシンを組み込めたら、照度や温度の管理から騒音制御、塵や埃の除去までできるようになるかもしれない」。そんな夢のような未来を実現するマイクロマシン技術の現状とこれからを藤田博之教授にお話しいただいた。


●マイクロマシンとは
マイクロマシンはシリコンチップの製造技術でつくられる数十ミクロンの大きさの機械である。半導体技術のマイクロマシンへの応用メリットは、技術進歩が目覚ましく、量産設備があり、素材自体が軽く、強く、錆びず、ピュアな単結晶であること、また集積化・知能化が容易であることが挙げられる。つくり方は写真製版のように、原図を縮小して焼き付けるという手法で、手でつくることやロボットで組み立てることができない極小機械でも大量に、簡単につくることができる。  マイクロマシンは全体として意味を持つ小さな機械をつくって活用するというより、センサー、プロセッサー、電子回路、マイクロモーター、アクチュエータなどを組み合わせたチップを大きな機械のキーコンポーネントとして使うのが当面のところは有望だ。  その動力には、静電気、熱膨張、風の力、超電導体の力などがあるが、ミクロの大きさゆえに、体積効果よりも面積効果が効くこと、重力より空気の摩擦が支配的なこと、慣性力より粘性抵抗が支配的なこと、表面張力や静電気力、付着力なども重要な要素になることに注意しなければならない。


●マイクロマシンの現状
現在のマイクロマシン技術は、3次元のマイクロ加工、厚さのあるマイクロ加工、シリコン板を組み上げた立体構造のほか、自己構成した3次元マイクロ構造も実現している。  これらの技術を応用して、マイクロ光スイッチ、マイクロモーター、スクラッチ・ドライブ・アクチュエータ(SDA)、超電導運搬システムなどが研究されている。  また、人工せん毛システムのような、センサー電子回路、アクチュエータを集積したサブシステムをマイクロマシーニングで多数同時につくり、協調運動によって一つの仕事をするような自立分散型のマイクロマシンも研究されている。  既に製品化されているものでは、DLP(Digital Light Processing)プロジェクターや静電型のインクジェットプリンターヘッドなどへの応用例がある。


●活用のキーワードは3M
マイクロマシン活用のキーワードはマイクロ化、マルチ化、マイクロエレクトロニクスの集積化の3つのMである。すなわち、小さいものをたくさんつくり、それを動かすためにマイクロエレクトロニクスも一緒につくり込んで使うことが、有効活用につながる。  マイクロマシンは、情報機器、流体、光学、科学研究ツール、細胞や生体高分子の操作など、小型化や電子・光部品との集積化のメリットがあるもの、力を外に出さなくてもよいもの、大きな力を要求されないものへの応用が望ましい。  具体的には、インテリジェント化により実世界とのインターフェースに活用したり、ダウンサイジングと分散化により携帯機器やウエアラブルコンピュータなどに応用することが考えられる。その他にも光信号制御用マイクロマシン、光センシング用マイクロマシンの開発により光通信ネットワークなど、高度情報化への貢献が期待される。  また、微量血液分析、能動カテーテル、聴覚などの感覚器代行、細胞やDNA分子の操作などの医療や福祉、バイオ分野での利用や、環境測定、住環境を快適にする仕組みへのマイクロマシンの活用など、環境適合化への貢献も期待されている。





経営情報スクール

テーマ/「マイクロマシンの現状と今後の活用」
講師/藤田 博之(東京大学生産技術研究所第3部教授)
アドバイザー/廣瀬 通孝(東京大学先端科学技術研究センター教授)
日時/1999年2月22日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



academyhills.com