■ウエアラブルPCの出現とインパクト
移動情報通信の起こす大変革

石井 威望 アカデミーヒルズ研究センター所長/東京大学名誉教授


石井 威望
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98年10月、東証一部に上場したNTTドコモは、時価総額9兆円で、日本を代表する大企業トヨタに次ぐ3位にランキングされた。現在、日本の携帯電話台数は約4200万台。急激な普及が進む携帯電話は、アナログ、デジタルに続く第3世代、マルチメディア対応時代を迎え、その動きをさらに加速させようとしている。移動しながらの情報通信が始まると、「情報空間に質的な変化が起きる」と石井教授は言う。  


●ウエアラブルPCの可能性
情報空間の中で移動しながら情報通信ができるもの=ウエアラブルPCを身につけると何ができ、どのような生活になるのか。石井教授の研究室では、パソコン、通信機器、テレビカメラ、骨伝導マイク、GPSなど、現在あるものを人間が装着して、機能テストを行っている。  ウエアラブルでは両手が空いていることが重要なポイントだ。両手が自由になれば、人類が二足歩行を始めたときのような大変革が起こるかもしれない。たとえば、IBMの音声入力ソフト「ViaVoice」のようなものをウエアラブルへ応用すれば、ハンズフリーは実現する。  また、GPSの実験でも、GPSは3〜4個の衛星の捕捉により場所を測定するが、ビルに囲まれた都心部では空が遮られ、GPSがあまり機能しない。


●人間と新しい情報環境
人間はこれから新しく出現する情報環境や機材にどれくらい適応できるだろうか。  毎年夏に子供たちを集めて、携帯用のデバイスをどのようにマスターするかを実験する「Multi Media Camp」という試みが行われている。何も教えなくても、使用説明書がなくても、子供たちはすぐに新しいメディアツールを使いこなすことができるようになる。子供は新しいメディアツールに対して、極めて高いポテンシャルを持ち、あたかも言葉を覚えるかのようにすぐに慣れてしまうのだ。  では大人の場合はどうだろう。  高知県東部に周辺5町村の在宅介護を担う「中芸介護公社」という組織がある。ここで働く女性16人、男性2人のヘルパーたちは平均年齢37歳。中には熟年世代の女性もいるが、全員がノートパソコンやモバイルツールを業務の中で使いこなし、スケジュール管理、訪問記録、患者の健康管理、データベースの作成などに利用している。  新しいものに最も抵抗がありそうな世代の彼らが、ツールを使いこなせるようになったのにはいくつかの理由がある。  シンプルで使いやすく、わかりやすいインターフェースをつくることにより、操作のハードルを低くしたこと。そして“使うと便利だ”というインセンティブを与えたことである。子供の能力とは同じではないが、このような工夫によって、大人でも十分に新しい情報環境への対応は可能なのである。


●ウエアラブルPC革命
ウエアラブルPCの出現は単に“身につけることができる部品の出現”ということにとどまらない。その出現は、身にまとう衣服の変革ももたらす。社会や産業構造が変わり、和服から洋服へと変わったように、“情報服”が登場するのだ。衣服と情報とのドッキングにより、新しい繊維産業の創出さえあり得る。  そして、人は変化が目で見える形になったときに初めて、歴史が変わるということを実感するのである。  影響は服だけではない。ウエアラブルという新しい条件を加えたときの都市はどうなるのか。建物、教育、医療、法制度など、生活はどう変わるのか。新しい時代の出現を前に、私たちが考えるべき課題は多い。





第21期入塾式・経営情報スクール

テーマ/「ウエアラブルPCの出現とインパクト」
講師/石井 威望(アカデミーヒルズ研究センター所長/東京大学名誉教授)
日時/1998年10月26日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)



石井 威望 講義目録
■第18期 アカデミーヒルズインタビュー
■第26期 '01.4.19
 教育の変革〜今求められる人材像〜
■第24期 '00.6.1
 e-ライフ・ウエアラブルな生活
■第23期 '99.10.18
 ウェアラブルの挑戦
■第22期 '99.4.23
 ウェアラブル万歳!
■第21期 '98.10.26
 ウェラブルPC出現とインパクト
■第20期 '98.4.20
 モバイル社会の躍動
■第18期 '97.4.21
 ネクストジェネレーション
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