■時代の先を読み取るファッション
〜ファッションからの21世紀への指針〜

小池 千枝(文化服装学院名誉学院長)


小池 千枝
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近頃、デザイナーを志す学生の動向が変わってきた。50年にわたり学生達を指導し、多くの世界的デザイナーを育ててきた小池千枝氏(文化服装学院名誉学院長)はいう。大学で専門知識を身につけた大卒の志願者が増えているというのだ。また建築家からデザイナーへの転向も多いという。その背景は何か?ファッションの本質とは?これらの考察を通して、現代の危機と21世紀への課題が見えてきた。


●ファッションの根本は社会学
ファッションではものを作り、それを消費者に買ってもらえなくては意味がない。消費者が何を考え、行動しているか、その動向を日常生活の中からくみ取っていくという意味でファッションの根本は社会学である。次の時代、次の変化を読み取れなくてはファッションは成り立たない。それには専門的な知識や技術に加え、様々な方面の雑学が必要だ。基本には教育を、そして様々な方向への好奇心を持つことがファッションには不可欠なのである。こうした意味でファッションはまさに最高学歴の人が目指すべきものと言えよう。
ところで教育とは単に学校に行くことではなく、それに関わることを意味し、幼児期のそれが非常に大事だ。例えば、高田賢三は姉の見る雑誌からファッションに身近にふれていたし、山本耀司は母が洋装店を営んでいたなど、日本を代表するデザイナー達も幼児期に服への刷り込みがあったのだ。教育問題がクローズアップされるいま、小さい時からの教育とその中身は21世紀の日本をも左右する重要事である。



●建築とファッション
ファッションと建築の思想は同じだ。コルビジェの建築を見てみよう。どこから見ても顔があり、角度によって表情が異なるのは服とまったく同じ思想である。また、素材が重要である点も同じだ。
さらに、建築とファッションは人間の空間を創るという点で同じである。建築家の仕事はちょっと離れた人間の空間、すなわち人間の行動力と生活意識などを有する空間を創ることであり、ファッションは人間のもっと身近な空間である服を創ることである。人間により身近であるという点では、ファッションの方が建築より人間性を考えているかもしれない。例えば、暑さ寒さを防ぐために建築では冷暖房設備を考えるが、これらは人に対して様々な健康被害をもたらす危険性もあるのだ。



●21世紀のファッション要素
ファッションも建築も変わり続けていかなければならないが、その変化は良い方向、快適な生活を創造する方向へ導いていかなくてはならない。着てみてホッとする服が、本当の服だということも若い人に解ってほしい。
自然がこれからの重要なキーワード。高田賢三は70年代にすでにコットン素材に取り組んでいたが、コットンは皮膚の弱い現代人にとって良質の素材であると同時に、環境問題が深刻になってきた今日、シルクやウールなどととも、土に還る素材であるということが非常に重要である。また暑さ寒さなどの自然をコントロールしていくことがファッション本来の役目であることも忘れてはならない。 最後に、好奇心や遊びの中から自分の可能性を発見し、個性を膨らませ、人とは違う何かを創ることもファッションの大切なポイントである。




第20期 情報デザインスクール

テーマ/時代の先を読み取るファッション
講師/小池 千枝(文化服装学院 名誉学院長)
日時/1998年7月27日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


小池 千枝 講義目録
■第23期 アカデミーヒルズインタビュー
■第24期 '00.7.27
 高田賢三の世界
■第23期 '00.1.27
 都市を包容するファッション
■第22期 '99.7.29
 手を動かす、脳を動かす
■第21期 '99.1.11
 Between the Centuries-21世紀への提言
■第20期 '98.7.27
 時代の先を読み取るファッション
 〜ファッションから21世紀への指針〜
■第19期 '98.2.2
 時代の先を読み取るファッション
 〜時代を映すファッションという社会現象〜

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