■住民と考えた街づくり
〜地域遺伝子を重視し、内発的発展型で

後藤 春彦(早稲田大学理工学部建築学科 教授)


後藤 春彦
講義一覧▼


「これからの街づくりは、住民が計画の担い手にならなければならない」と提言する後藤教授。ご自身がプロジェクトに携わり成功を収めた、熊本県宮原町、千葉県浦安市、熊本県合志町でのワークショップ例を紹介しながら、住民参加型の街づくりと、具体的に計画を進めていくうえで有効な手法とされるワークショップの問題点などについて解説していただいた。


●これからは「内発発展型」
これからの街づくりは大規模に都市を改造する方法ではなく、小さな単位を手づくりで行う“修復型の街づくり”が中心になる。その際に重要なのは、住民と一緒に街づくりを進めていけるかどうかだ。住民一人一人のニーズをいかに拾い上げ、潜在する住民の能力を引き出すかが問題である。これまで行政が街づくりを担ってきたが、これからは住民が進める街づくりを行政がサポートする形になるだろう。そうすることで、街の ランニングコストを引き下げることもできる。
また、これからの街づくりは「内発的発展型」である。それには次の6つの特長がある。・生態的な特長を共有する地域単位で発展する。・発展の物差しは経済成長ではなく人間成長であり、住民の潜在能力をいかに顕在化できたかが問われる。・自然環境と人間の共生を目指す。・生産→消費→分解→還元→生産、と連鎖する循環型であること。・地域の歴史的なストックなど“地域遺伝子”を重視する。・発展の担い手は住民であり、個々の能力と個性を活かす参加型あるいは学習型街づくりであること。



●結果として生まれる風景
住民参加型の街づくりとは、自然や風土、歴史など身近な地域の資源を活かしながら、参加・体験・発見型の学習方法を用いて、生活上必要な習慣・技能など自律的な基礎を養うと共に、総合的な街づくりの結果として、社会像や生活像の表現でもある風景を創出することである。現代は、マス・コミュニケーションではなく、パーソナルなコミュニケーションが重視される時代である。そうした状況の中で、住民参加型の街づくりでは、地縁・血縁に縛られた共同体から、“知縁共同体”への変化が生まれ、“顔見知りコミュニケーション”が重要になってきている。
また、具体的な街づくりの方法として、住民によるワークショップに期待が寄せられているが、まだ発展途上段階であり、いくつかの問題が残されている。
第一は自律性の問題だ。市民自身が行動規範を持てるかどうかが重要だ。第二は、ある目的に応じて参加する「目的参加」という形が保証されなければならない。第三は、作業の空間的な受け皿として、街の中に拠点的な場所が必要であることだ。



●ワークショップ活用の要点
住民参加による街づくりを進めるうえで、ワークショップは大きな可能性がある。しかし、万能薬でない。ワークショップの活用を誤らないために、次の5つポイントを挙げておきたい。

1.ワークショップはあくまでツールであり、ゴールではないことを理解する。
2.参加しない人の意見を切り捨てない。そのためには情報公開が必要。
3.コストと効果の関係をキチンと外部から評価してもらう。
4.目的参加であり、作業が終われば組織が改組される柔軟な組織であること。
5.最終的に風景をつくり、成果を住民が共有する。そうすることで次の街づくりの 段階を迎えることができる




第20期 都市計画

テーマ/住民と考えた街づくり
講師/後藤 春彦(早稲田大学理工学部建築学科 教授)
日時/1998年7月15日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


後藤 春彦 講義目録
■第20期 '98.7.15
 住民と考えた街づくり
■第19期 '98.2.18
 まちづくりは人づくり
■第18期 '97.7.9
 住民によるまちづくり
 〜地域遺伝子さがし〜

academyhills.com