|
■工学をおもしろくする 人工物工学への芸術的アプローチ 河口 洋一郎(筑波大学芸術学系 助教授) |
![]() |
|
|
|
私たちは日々、人工物に囲まれ生活している。もともと自然の脅威から人間を守るために創造されたはずの人工物は、いまや公害や環境ホルモンなどのような人間にとっての新たな脅威にもなっている。かつての自然物に対するのと同じ意味で人工物に対する新たな知の結集の必要から提唱されたのが人工物工学だ。日本を代表するCGアーティストの河口氏は、従来の工学的アプローチではカバーしきれないこの分野に、感性的・芸術的なアプローチでせまり、「工学をおもしろくするのが使命」という。
●河口氏の芸術的アプローチ 工学には研究成果としての科学的成果がたくさんある。これらを形象化し、サイバースペースで、一般の人でもダイナミックに生々しく体験できるように蘇らせることがアーティストとしてのアプローチだ。すなわち、シュミレーションできるようなコア技術の成果を形象化し、単なるビジュアライゼーションではなく、より芸術的、能動的、過激かつ文化的に表現すること。さらに文化として強く残るようなもの、国際的に競争して残していけるようなものを表わしていきたいと氏は言う。人工物を知るためには、自然物を体験することが必要であり、仮想世界をつくる時にも現実世界からの影響を受ける。このため氏は、積極的に実世界の秘境に赴き、その体験から新たなアイデアをえている。 現実世界の川のせせらぎやそよ風など、かつては不可能だった芸術表現が、サイバースペースでは実現できる可能性がある。この新しい形象化の世界が工学をおもしろくする。21世紀にはギンギラの工学技術やファッショナブルでピチピチの技術なんて色気のある工学の時代がやってくるかもしれない。 ●人工生命都市と時間軸 氏の次のテーマは都市の未来形について、実際の物質の制約から解き放たれたサイバースペースの中で、自己組織化され、自己増殖していくような人工生命都市、しかも自然に負けないくらいの刺激や混乱を人間に与えるうるようなものを作り上げることだ。人工生命では時間軸の概念が必要だ。過去の人類の表現の歴史で、時間軸の概念が導入されたものはなく、それは今のテクノロジーが登場して初めて実現されたものである。普通の人間の寿命では見ることができなかった生成変化の過程をコンピューターの中で時間の視点を変えることによって見たり、表現することができるようになったのである。CGを始めたのもこのおもしろさがあったからだ。芸術表現はその時代の最先端の状況を表わす。今という時代はコンピューター技術を使うことによって、一番うまく表現することができるのである。 ●ネット社会にも熟成の場が必要 ネット社会の発展はグローバルローカライゼーションをもたらす。いつでも、どこでも、誰でも、気軽に情報を手に入れることができるネット社会では情報の価値がなくなり、均質化がおき、競争力の低下がおこる。独特のものを生み出していくためには、とっておきのものはどこかに隠しておいて熟成させることも必要だ。だが、ネットワークに関わる技術といえども、それが進歩すればするほど最先端技術は、その場に行かなければ体験することができないというのも事実である。最先端技術をその場で熟成していくこと、さらに地域的特性など、その場の持つ意味論を見直し、活かしていくことが21世紀には重要になるだろう。 第20期 情報デザインスクール
テーマ/CGコンテンツとアニメーション |
![]() |