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■起業家の昨今 〜ベンチャー企業の実態と成功の要素 斉藤 聖美(株式会社ポンデュガール代表取締役) |
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92年にコンサルタントのベンチャー企業、ポンデュガールを立ち上げ、2つのインターネットプロバイダー企業の立ち上げを成功させた斉藤聖美氏を招き、失敗談を含めて生々しいベンチャー企業の実態をうかがった。「ノウハウとは失敗の積み重ねである」という斉藤氏は、日米のベンチャー企業のビジネス環境の違いも交えながら、実体験に基づくベンチャーの厳しさと喜びを語った。
●ベンチャー企業の落とし穴 ベンチャー企業を立ち上げる時、陥りやすいのは舞い上がって客観的な視点を失うことである。私にもそうした失敗の経験がある。 会社設立にあたり、日米のビジネスの架け橋となる仕事をしたいと考えていたので、仏語の橋の名称を現在の社名にした。しかし、業務内容がわからない社名だったので、女性を派遣するいかがわしい会社と間違われて苦労している。 ベンチャーはある程度舞い上がらないと始められない部分もあるが、やはり客観的な視点、冷静な視点を失わないようにしなければならない。 また、合理的であるべきビジネスの決断に感情を交えて失敗することも、ベンチャー企業にありがちな失敗である。冷徹なビジネス感覚は、ひとつの失敗が命とりになるベンチャービジネスとって特に重要である。 友人同志でサークル感覚で始めたベンチャー起業が失敗する原因のひとつは、誰が決断し、最終的に責任をとるのかリーダーがはっきりしていない点にあることが多い。小さい企業であっても命令系統は一系統にしておかないと下も働きにくく、決断にも時間がかかって失敗する。 ●ベンチャーは金と人との戦い ベンチャー企業を立ち上げる時、まず不可欠なのは夢とガッツとエネルギーであるが、それだけでは成功は覚束ない。 私が一番苦労したのは、資金繰りと人材の確保だった。大企業と比べ、資金と人材に恵まれないベンチャーがこの壁を乗り越えていくには知恵を使うしかない。 人材の確保については、マイノリティーを活用した。主婦、学生、外国人を雇ったが、彼らは他社でのビジネスの経験がない分、素直に仕事に取り組んでくれたため、かえってやりやすかった。 資金繰りについては「出すものはできるだけ遅く、入るものはできるだけ早く」が原則である。たとえばインターネットプロバイダービジネスでは、前払いしてくれた顧客には割安にサービスを提供するという手法をとった。 また、経費を少なくするために、オフィス家具なども中古品を貰ったり、会議室代わりにカラオケボックスを使ったりもした。雑誌の広告料金とインターネット使用料を相殺するなどバーター取引も活用した。 ●成功の条件とベンチャーの喜び ベンチャー企業を成功に導く要素として、夢実現への情熱と、経営能力、的確なアドバイスをしてくれる外部ブレイン(人的ネットワーク)、そしてパソコンと英語のスキルを挙げておきたい。パソコンは何人もの従業員に匹敵する武器であるし、英語は米国のビジネスを取り入れる上で有利である。実際に、今でも、米国のビジネスのアイディアを日本でのビジネスに生かすことは有効だからだ。 また、ベンチャーの強みを最大限生かす組織にしなければならない。ベンチャーの強みは常識に縛られない発想と、それに基づいて即断即決し実行できることだ。この強みを最大限生かす組織形態、つまり、権限と責任の所在がはっきりした組織をつくる必要がある。 ベンチャー企業は苦労も多いが、一方で大企業のサラリーマンにはない喜びもある。ベンチャー企業を立ち上げて感じたのは、ほんのちょっとした成功が大きな喜びをもたらすことだった。また、スタッフそれぞれが企業の成長に深く関わるため、成功は自分のことのようにうれしい。スタッフと成功の喜びを心から分かち合える点も、大企業のサラリーマンではなかなか味わえないことではないかと思う。 また、ベンチャー企業では全員がオールラウンドプレーヤーにならざるを得ず、必然的に権限委譲も必要になる。その中で急成長したスタッフもいた。ある主婦は最初、英語もパソコンもできなかったが、仕事の中で英語が使えるようになり、スキルアップしていった。権限委譲は勇気がいるが、権限委譲は人間の潜在能力を引き出すものであることを彼女から学んだ。 ●日米のビジネス環境感覚比較 日本でもベンチャー企業が増えており、マスコミなども取り上げるようになったが、ベンチャー企業を巡る日本の環境は米国と比べてまだまだ厳しいものがある。2つ目のベンチャー企業を立ち上げる際、日米のベンチャーキャピタルの考え方の違いを痛感した。 私たちは、米国式にエクジットプランを提出したが、日本のベンチャーキャピタルにはことごとくNOといわれた。彼らの常識からすれば、会社を設立する段階でエクジットプランなどを考えるなどとんでもないことで、すべてを犠牲にする心構えでなくては支援できないと考えているようだ。 しかし、米国の場合は、事業を始める際、合理的なビジョンの一貫としてエクジットプランも必要であると考える。 日本であえてエクジットプランというならば、「株式の上場」であり、上場を目指すといわないと資金は出ない。しかし、現実には、「上場」以外に「事業(企業)の売却」や「撤退」の可能性もあることを忘れてはいけない。 この中でもっとも難しいのは「撤退」である。どこで損切りしなければならないかを見極める冷静な判断力と、撤退する勇気が必要である。 第20期 経営デザインスクール
テーマ/起業家の昨今 |
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