|
■艶やかな都市計画を目指して 都市計画の組み立て方 伊藤 滋(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授) |
![]() 伊藤 滋 講義一覧▼ |
|
|
|
理想的な都市を創る夢を抱いて都市計画の世界に入ったものの、法制度に縛られた実務に直面して幻滅することは少なくない。都市計画の大家である伊藤滋塾長もまた「僕も学生時代、法制度の授業はつまらなくてよくさぼった」と告白する。「しかし、夢だけでも法制度だけでも都市計画の全体像は掴めない。幸い、都市マスタープランという道具もできた。艶やかで夢多き都市計画を目指してほしい」と語った。
●都市マスタープランの意義 理想的な都市をつくる仕事と、法規制に基づいて細かな相隣関係を調整する作業では、同じ都市計画でも随分開きがあるように感じるだろう。しかし、両方を理解しなければ都市計画の全体像はつかめなし、都市計画の仕事が進まないのが現実だ。皆さんには、法制度の成り立ちや意義を考え、都市計画の原点である人と人との関わりというヒューマンな視点と夢とを忘れないように、と望みたい。 また、「都市マスタープラン」という道具ができたことによって、都市計画は住民に一歩近づいた。住民自ら街の将来像を考えるこの制度を生かすには、一般の人に興味が持てるような、艶やかで夢多き都市計画を実現していかなければならない。住民ひとりひとりが都市計画に興味を持てば、家を建てる時にも、相隣関係や環境に対する視点を持って建てるようになるだろう。そうすれば街は自ずと変わっていくはずだ。 ●土地利用の整理から将来計画へ 都市マスタープランができる前は、都道府県が人口の推移や企業の立地動向などを基にして計数的に定める「整備・開発・保全の方針」が都市計画の基本だった。 これに沿って、開発を進める市街化区域と開発を抑制する市街化調整区域に線引され、市街化区域は地域・地区制に基づいて12の用途地域に色分けされている。用途地域の決定や変更には現状の相隣関係が重視されるため、現状維持的な色彩が濃い。この方法は、混乱した土地利用を整理するには有効だが、街の将来像を描き、実現に向けて誘導するには不向きだ。また、どうしても「専門家が舞台で踊り、住民はそれを見ているだけ」という構図になってしまう。 そこで、もっとも住民に近い市町村が住民の意見を聞いて「都市マスタープラン」を策定する制度ができた。住民が参加して街の将来の姿を描くところに今までとは大きな違いがある。「住民が舞台で踊り、専門家は裏方となって支える」という新しい構図ができたのである。 どちらかといえば無味乾燥な匂いのする「整備・開発・保全の方針」の地図の上に、もっと人間的で多様性のある「都市マスタープラン」が描かれる形で、これからの都市計画が進んでいく。 ●マスタープランを生かせ これからは、住民の意思を反映させた都市マスタープランに沿って用途地域を決めたり、変更したりするべきだ。ただ、残念ながら都市マスタープランはまだ十分に機能していない。人材不足や住民参加システム不在といった状況でスタートしたため、お役所独特の事なかれ主義の都市マスタープランをつくっているところが大半だ。住民はその存在さえも知らないケースが少なくない。 しかし、都市マスタープランは必要に応じて何度でも作り直すことができる。眠っている都市マスタープランを住民が叩き起こし、「わが町の将来はこれでいいのか」と、喧々諤々、議論してもらいたい。そのためにも、都市計画は専門家だけのものであってはならなし、一般市民が魅力を感じるものにしなくてはいけない。 第20期 都市デザインスクール
テーマ/都市計画の組み立て方 |
![]() |