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■経済からみた都市の盛衰過程 〜都市システムの遺伝子は存在する?!〜 川嶋辰彦(学習院大学経済学部教授) |
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都市の盛衰はなぜおこるのか。経済学的に因果関係に関する考察が長い間続けられてきたが、いまだ確たるファクターを見つけだすに理論も方法論も至っていない。そんな中、注目される一つの理論は複雑系の経済学とも密接に関連するアーバン・サイクル仮説だ。この仮説のもとに、日本の都市政策を考える上での示唆に富む講義が繰り広げられた。
●アーバン・サイクル仮説 都市には行政区域としての市部の概念と、機能的都市地域としての都市圏の2つの概念がある。都市圏とは中心市と郊外を含めた全体の地域で、空間的ユニットとして機能的意味を持つ。都市の変遷過程の考察にあたっては、都市内の変遷過程の考察と都市システムの変遷過程の考察の2つのアプローチがある。 人口の集散過程を一種の循環過程とみなしてアプローチすると、人口の空間的再配分動向特性がいっそう明確に見えてくる。このようなアプローチをする代表的な仮説の一つが「アーバン・サイクル仮説」だ。 この仮説の最も基本的なものは1970年代初めにオランダのクラッセン(L.H.Klaassen)らが提唱したもので、どのような文化的、経済的、政治的、地理的な環境を持っていても、大都市圏は基本的に「都市化」→「郊外化」→「逆都市化」→「再都市化」のパターンを繰り返しながらスパイラルのプロセスを通って大きくなったり小さくなったりしていくというものである。 1990年代、Brian ArthurやPaul Krugmanらを中心とする複雑系の経済学が登場し、複雑系の都市経済学者は都市自体が都市の遺伝子を持ち、その遺伝子の命令に従って動く様相があるのではないかという提唱をはじめた。このことは空間的循環論の理論的な裏づけの一助となっている。 ●都市間の人口集中と分散 ところで、人口変動の測定方法には人口増減差によるものと人口増減率によるものがある。このうち人口増減率をratio(=成長比)と見ると、都市間の人口集散過程は大きくは人口集中と人口分散に、さらにそれぞれを加速的集中と減速的集中、加速的分散と減速的分散の段階に分けることができる。これは、アーバン・サイクル仮説の都市間分析への応用にほかならない。 人口分布に関する空間的循環過程の段階・経路を示す道具としてROXY指標*がある。ROXY指標では人口集中は正の値、分散は負の値で示される。また、空間的循環過程の経路は、ROXY指標値による波状グラフや環状グラフでも表わすことができる。 ●実証分析の結果から アーバン・サイクル仮説の実証分析としてオーストラリア、インドネシア、日本、スウェーデン、米国の5カ国間で都市システムの空間的循環過程の国際比較をしてみると、集中化・分散化の段階は、日本およびオーストラリアは米国に15年遅れ、インドネシアは日本に20年遅れ、スウェーデンは米国と日本の間という結果が得られた。 アーバンサイクル仮説とROXY指標に基づいたこの結果から得られる政策的な示唆は、 (1)日本にとって、米国の15年前の失敗した都市政策は、方向性として参考にしないほうがよい (2)後進のために日本の失敗例を記録しておくことは重要である (3)人口の空間的集散過程に内在している潮勢をにらみながら、都市政策を行っていくことが重要である。 ●東京は加速的集中に向かう 現在の東京都市圏は減速的分散から加速的集中に入ろうとしている。クラッセンの仮説に基づく潮勢によれば、次の都市政策は考える余地もなく決まってしまうことになるが、実際は理論上の経路を軸にある程度の変動幅があり、その幅の中でどの方向に都市を導いて行けるかが都市プランナーにとっての重要な使命であり、おもしろさでもある。 クラッセン仮説の大きな潮勢に従えば、東京の都心部の有効利用はもっと積極的に進められるべきだが、それによってマイナスの影響を受ける地域や社会的集団がある場合は、これらに対して社会的許容範囲内で手当てを考えていくことが大切だ。 第20期 環境デザインスクール (共通講義)
テーマ/経済からみた都市の盛衰過程 |
| 川嶋 辰彦 講義目録 |
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■第21期 '99.1.11 Between the Centuries-21世紀への提言 |
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■第20期 '98.6.3 経済から見た都市の衰退過程 |
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■第19期 '97.12.10 都市のライフサイクル |
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