|
■20期特別講演・モバイル社会の躍動
〜フットワークとネフットワーク〜 石井威望(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授) |
![]() 石井 威望 講義一覧▼ |
|
|
|
「現代は、プリントジェネレーションとテレビジェネレーション、そしてネットジ
ェネレーションという3つの異なる環境で育った人々が、さまざまな問題を抱えなが
ら生きている時代だ」と石井教授は話す。そして、この3世代が同席している講義会
場を舞台に、 さまざまなデモンストレーションを行い、簡単なモバイル・ギア(PHS
+小型パソコン等)だけでも、新しいコミュニケーションスタイルが可能になること
を証明してみせた 。
●一方方向から双方向へ 従来の講義は一方方向の情報伝達だったが、ネットワーク社会は空間を超えてパラ レルでオープンな授業が可能になる。たとえば、皆さんが今、それぞれモバイル・ギ アを持っていれば、講義を聞きながら質問や意見をチャットで話し合うこともできる し、ここに存在していなくても議論に参加できるようになる(会場のスクリーンで実 際にチャットをモニター)。 こうしたことが当たり前と思う世代が現実に育っている。『デジタルチルドレン』 はそうしたネットワーク社会に生まれた子供たちについて書かれた本である。デジタ ルチルドレンが社会に出てきた時、本格的なネットワーク社会となるだろう。 ●移動体通信普及率は世界一 デスクトップの前に座って世界とコミュニケーションするイメージも、移動体通信 の急速な普及で大きく変わった。いつでもどこでもネットワークに繋がる世界が来て いる。日本の移動体通信の人口当たりの普及率は28%で、人口比と伸び率で世界一で ある。たった32kbpsのPHSや携帯電話と小型パソコンを繋ぐだけで、インターラクテ ィブなコミュニケーションができる時代になっている。 東芝では、MPEG4の技術を使ってリアルタイムに動画を電送する技術を開発中だ( 実演)。この技術を使って、PHSと結んで動画情報を圧縮して送ることも射程距離に 入っている。大がかりな装置ではなく、ごく安価なギアと接合するだけで、こうした 画期的なことができるようになることがポイントだ。 ●個人もビルも情報通信と接続 たとえば、一見、おもちゃのように見える「ドラエホン」だが、通信している子供 の所在確認ができる機能(今、どこにいるのサービス)まで持っている。また、位置 情報という観点からは、デジタルカメラとGPSを融合して、撮影したデータを既存の 地図情報に自動的に落とし込む技術開発も進んでいるという(妹尾氏が実演)。位置 が特定しにくい災害地の被災状況を確認したり、アマゾンの植生調査、さらにエリア マーケティングなどビジネスにも応用できそうである。さまざまな技術が融合するこ とによって、都市問題の解決やビジネスにも新しい可能性が次々に生まれている。 個々がモバイル・ギアを通じてネットワークに接続できるだけでなく、都市装置と してのビルに新たな情報通信インフラを設置する実験も行われている。たとえばこの アーク森ビルは三田の慶應義塾大学の研究室と無線で結ばれている。4棟のビルの屋 上を中継して電波を飛ばし、リアルタイムに音声・画像を電送している(実演)。ネ ットワーク社会ではマルチ(有線+無線)な情報通信インフラを備えたビルが常識に なるだろう。 ●ネットの中の自己確認 ネットワーク社会ならではの問題も起こっている。移動体通信を使ってどこでも情 報の授受ができるモバイル社会になると、物理的な位置確認も必要であるし、「ネッ トワークのどこに自分が存在しているのか、自分とは何者か」というそれまでの社会 では考えられない疑問も発生する。 現実に、未知の人々とも抵抗なく会話するネットゼネレーションは、その中で無意 識のうちに「自分がどこにいるのか、自分は何者であるのか」という自己確認を行っ ている。モバイル・ギアの普及によってそうした確認作業にも新しい方法が生まれそ うだ。 ネットワーク社会を考えるとき、ネットワークとリアルな社会をどう繋げてゆくか もポイントになる。そのためにはコミュニケーションチャネルは多いほうがいい。デ ジタルとアナログ、無線と有線、ネットワークとフットワークなど、コミュニケーシ ョン手段はマルチチャネルであるべきであり、相互に絡み合って利用できるような形 が望ましい 。 第20期 情報デザインスクール
テーマ/「モバイル社会の躍動」 |
![]() |