■サイバースペースがもたらす
           社会変革

〜サイバービジネス最前線〜

月尾 嘉男(東京大学大学院工学系研究科教授)


月尾 嘉男
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 ●サイバースペースがもたらす社会変革
 米国のゴア副大統領は上院議員時代に著わした『Earth in the balance』(邦訳『地球の掟』)の中で、21世紀の主要な話題は「環境」と「情報」 であると提唱した。この見通し通り、いま世界では「環境」と「情報」が主要課題 としてクローズアップされている。東京大学工学部の月尾嘉男教授は、構造改革を 余儀なくされている日本の飛躍の源泉は「情報」というキーワードにあると講演し た。



●社会変化に対応できない日本の社会システム
 日本社会は、いま大きく変化しつつある。人口の減少や経済成長の低迷などが示 すような右肩上がりから右肩下がりへの変化、東京、大阪、名古屋の三大都市圏集 中から地方分散への変化、会社や仕事が主要な価値ではなくなり、開発よりも保全 が重視されるという価値観の変化などである。

一方、世界でも冷戦構造が終了して以後、21世紀における最大の力は「武力」では なく「魅力(attractiveness)」であると言われはじめた。いかに魅力ある地域、国 家であるかが、地域の安全を守る最大の要因になる。スイスのシンクタンクによる 世界46カ国の経済的魅力番付で、日本の順位は93年の6位から96年には23位に急落し た。新しい社会に対する改革ができない政府に対する評価の低さ、電力料金で米国 の数倍、通信費で米国の数10倍という、国際比較では高すぎて役に立 たない社会基盤、国際社会への対応の遅れ、情報社会における生産性の低さなど、 日本の魅力のなさは、社会の変化に社会の構造がうまく対応できていないことに原 因がある。


●フロンティアが閉塞状況を打開する
 社会変化に対応できない日本の閉塞状況を打開するには、これまで外圧が効果が あったが、当分、政治的な外圧は期待できない。しかし、従来の外圧に相当する効 果をもつものとしてフロンティアがある。歴史を回顧してみると、フロンティアで は社会の構造を変える新しい哲学原理が発見され、行き詰まった産業社会を打開す る新しい経済活動が発展し、固定した社会秩序を壊し、新しい社会秩序が形成され てきた。  21世紀のフロンティアは、情報処理技術と情報通信技術が一体となって世界中に シームレスな世界を作り出す「サイバースペース」、人間の心や脳の解明から開拓 される「インナースペース」、ナノやピコなどの極小単位の技術から開拓される「 マイクロスペース」の3つと予測される。


●サイバースペースのビジネス
 サイバースペースは確実に到来している。現在、インターネットに接続されるホ ストコンピューターの数は全世界で1600万台を突破、さらに末端では3億台以上の端 末装置がネットワークにつながっていると予測される。  サイバースペースの経済の特徴は、距離、時間、場所に依存しない経済が誕生す ることである。例えばNTTのOCN回線サービスは、通信距離に関係なく均一料金で利 用でき、時間についても定額料金制が採用されている。現在は6Mb/sの通信速度で98 万円/月と高いが、2005年には1万2千円にまで引き下げられることが目標になっている。また、PHSや携帯電話の普及とそれを通信回線とする端末の普及は場所に依存しない経済を実現する。

サイバースペースにおけるビジネスの実例として、電子新聞は日本では約80紙、世 界では2300紙の新聞がサービスを行っているが、これを利用すれば世界中どこにい ても情報格差がなくなり、エネルギー消費も紙に比べ1日あたり1/20に削減される という。
また、例えば洋書の
「Barnes andNoble」(http:/www.barnesandnoble.com/)や「amazon.com」(http://www.amazon.com/)、最新流行のネクタイを販売している「Wildties」(http://www.wildties.com/)のような有名なサイトをはじめ、全世界で数十万にのぼるインターネットの仮想店舗を利用すれば、距離や場所には関係なく世界中の品物を手にいれることができるのである。


●サイバースペースのビジネス
 サイバースペースのビジネスの特徴は、従来の大都市に限定された企業立地が世 界規模で分散可能になること、大企業中心社会が変わって新規ビジネスが出現する こと、これから出現する規制のない社会を先取りして実現しているということであ る。このためサイバースペースのビジネスと従来のビジネスの力関係に逆転がおこ れば、社会、政治、経済のしくみ、さらには国土構造にまで変化をもたらしうるの である。サイバースペースは単にビジネスだけでなく、社会全体に大変革をもたら すものとしてこれからは認識することが重要である。




テーマ/サイバービジネス最前線
講師/月尾 嘉男(東京大学大学院工学系研究科教授)
日時/1997年12月8日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)

月尾 嘉男 講義目録
■第19期 アカデミーヒルズインタビュー
■第26期 '01.4.26
 21世紀の先端技術
■第23期 '99.10.6
 情報通信産業は経済再生のエンジン
■第19期 '97.12.8
 サイバースペースがもたらす社会革命
■第18期 '97.5.26
 インターネットは地方が元気

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