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■時代を映すファッションという 「社会現象」 小池千枝(文化服装学院 名誉学院長) |
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平面的な概念をつかむのには強いが、立体的な概念には弱い。日本人の特性である。ヨ
ーロッパではその反対である。立体概念の強さ。これはミロのビーナスの美しさを生み
出した感性である。このように、年間1万人の学生たちの動向を目の当たりにする小池
千枝氏(文化服装学院名誉学院長)は、未来を見通すには歴史的な物の見方が必要であ
ると話す。 そしてファッションを見るにも、歴史的な段階と人間的なあり方というふたつのアプロ ーチが必要であるという。 ●気質で服を着こなす時代 そもそもバランスが取れて美しいだけでなく、格好の悪い人も着れるのが服である。同 じ寸法が着れる人間は、五千人分の11人ほどである。服は身体だけでなく人間性で着 るものといえるのではないか。 「服は体型ではなく気質で着る」という見地から、人間の体型を分類したアメリカのウ イリアム・シェルドンの調査がある。文化人類学・医学・性格診断といった88の項目 による調査が行われた。こうして集めた数字をどう分析するかが問題であるが、シェル ドンは7段階に分類した。外胚葉的、中胚葉的、内胚葉的という3角形の頂点から系統 を3桁の数字に分類するという手法をとった。この調査では多くの被験者の協力が得ら れたこともあり、我々にとっても、大変素晴らしい資料となっている。これをまとめた 「人間の図説」という本の復刻が望まれる。 国内においても現在、観察解剖学の専門家らの応援と被験者として学生たちの協力を得 ながら、日本人の体型の調査を行っており、人間の形態を三次元で表現できないかと考 えている。 ●ファッションの歴史と効用 振り返れば縄文時代の人々は格好の良い服を着ていた。造形・装飾能力が非常に高く、 縄文土器は立体感がある。文化は歌や踊りがあり、性差がなかった。12世紀、貴族達 の着た十二単は大量のシルクを使っている。これが後世につながる養蚕産業を興すこと になった。その後の武家文化の中では、町人は思い思いのファッションで武士を見返す ようにストレスを発散していた。ファッションの効用である。 そして女性が服から足首を見せた100年前から、だんだん丈が短くなって股間までた どりついた今日。21世紀は、どの長さを選んでもいいと思う。男女の着る色の差はな いし、自分の好みで着ればいい。99%が常識であれば1%はファッションでいいので ある。ファッショナブルになることでストレス解消にもなる。また、服づくりにも教条 はなくなってきた。勝手気ままにみえて、それでも時代の流れがある。ゆえにファッシ ョンは、時代背景や社会性を反映するものである。 ●ファッションから読みとる時代感覚 ミロのビーナスは、美しさを立体で捉えており、その造形から様々なことを読みとるこ とが出来る。 様々な日本人デザイナーが活躍しているが、コム・デ・ギャルソンの川久保玲はファッ ションを通じて感覚を問題提起する。最近では、服の必然的なふくらみをデフォルメし て「こぶ」で表現した。着てみたく、触ってみたくなるような造形的な形。ミロのビー ナスにつながっていくような感覚であると思う。 日本の男性社会ではファッションを認められない。ファッションはアートではないが社 会性を持つものである。定期的に様々なファッションを見ていく研究会等があればいい と思う。ディスカッションし、ぜひ感想が聞きたい。街づくりや教育を通じて快適な生 活を考えるときに、ファッションを原点に置いて美意識・思想を高めていって欲しいと 痛切に思う。 第19期
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