■インターネットと
   デジタルコンテンツ界最新動向


稲蔭正彦(メディア・スタジオ株式会社代表取締役)


自らも精力的に作品を発表しメディア・アーティストとして活躍する一方、日米でSOHO会社を切り盛りする稲蔭正彦氏。講義では氏の多彩な活動の紹介を通して、インターネットがもたらすデジタルコンテンツ界の新たな動きと展望が語られた。


●デジタルコンテンツを取り巻く日本の状況
日本のデジタルコンテンツ界は今、アニメーションを中心にホットな話題で沸いている。バンダイビジュアルが東京・荻窪にデジタルスタジオ「デジタルエンジン」を 開設し、大友克洋監督の「スチームボーイ」(1999年公開予定)や押井守監督の「G.R.M.」(2000年公開予定)など大規模CG作品の制作がスタート。また、映画「もののけ姫」は1100万人の来場者数を記録、配給収入でもわずか3カ月で、「E.T.」の96億 円を抜く大ヒットを達成した。
ゲーム業界でもアニメーション取り込みの動きが活発だ。バンダイはサンライズやバンダイビジュアル作り、セガの系列会社は東京ムービーを買収、スクエアがハワイにデジタルスタジオを開設するなど、アニメーションプロダクションの系列化が進め られている。 一方、デジタルコンテンツは地域おこしや地域産業の重要な鍵としても位置付けら れている。福岡県のアニメーション基幹産業化への動き、島根県のデジタルアニメーション工房の招へい、大阪市ではユニバーサルスタジオジャパン建設の一環としてアニメーションスタジオの誘致も行われている。また、国土庁も首都圏機能の重要な鍵 としてアニメーションを位置付け、国有地へのアニメーション工房の誘致に動いている。


●メディアとしてのインターネット
インターネットをメディアとして捉えると、その最も基本的なものはホームページ での情報発信である。稲蔭氏が米国に持つ「Cyber Agenz,Inc」は氏個人の作品発表の場であると同時に、他のデジタルアーティストの作品も企画・発表する「Media Ar t Museum」というプロジェクトを運営する。 日米では料金、容量など情報インフラに対する認識にかなりの差異があり(日本の インフラが高コスト)、このため、どのくらいのレベルのインターネット利用環境を ベースに発信情報を制作するかに、日米でかなりの開きが生じている。


●コミュニケーションインフラとしてのインターネット
デジタルコンテンツ制作の現場にとって、コミュニケーションインフラとしてイン ターネットを活用することは、これからのビジネスに様々な可能性をもたらす。 稲蔭氏は1997年米映画「SPAWN」の特撮の一部を受託され、ハリウッド映画SFX初の日本国内での制作を手がけられたが、ここではインターネットがコミュニケーションインフラとして有効に活用された。従来なら人やビデオ、フロッピーなどの物が頻繁 に行き来し、距離や時間などの物理的な制約を受けざるを得なかった制作の現場が、インターネットでMPEGやJPEGデータ、電子メールがやり取りできることにより、物理 的制約が取り除かれ、どこにいても映像制作ができるようになったのである。日本の デジタルコンテンツのレベルは低くはないので、通信インフラがプロダクションレベ ルで整備されれば、日本での本格的な映像制作の可能性が出てくる。


●二極化するプロダクション
ハリウッドの映画業界は、デジタルエフェクトが20カット以下の小規模映画か、200カット以上の大規模映画に二極化しつつあり、制作会社もこのどちらかに照準を合 わせたビジネスモデルにする必要がある。
映画の世界では2〜3年越しのプロジェクトは当り前だが、映像の技術革新は速いので、3年後を予測した会社作りや大規模設備投資は難しい。こういう変化の激しい過渡期には大会社を作り、維持していくよりもSOHOプロダクションを束ねて、それぞれの個性を生かしたプロジェクト運営を行ったほうが、面白いものができ、発展性もあるのではないか。




第19期情報デザインスクール

テーマ/デジタルアニメーションの世界 〜ハリウッドの裏側〜
講師/稲蔭正彦(メディア・スタジオ株式会社代表取締役)
   浜野保樹(メディア教育開発センター助教授)
日時/1997年11月10日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


academyhills.com