■都市のライフサイクル
〜アーバンダイナミズムの考察〜

川嶋辰彦(学習院大学経済学部教授)


川嶋 辰彦
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都市は、経済・社会的に時間の推移で変化していく。本講義において川嶋辰彦氏(学習 院大学経済学部教授)は、都市の盛衰つまりアーバンダイナミズムを考察するにあたっ て、都市システムが示す諸現象をアーバン・スペイシャル・サイクルズと呼ばれる循環過程のあらわれととらえる。ここでは、都市圏の人口変動(集中と分散)という現象を、都市システムのライフサ イクル仮説として知られるクラッセンの仮説にあてはめて考えてみた。


●クラッセン仮説〜空間(都市)サイクル
経済循環について、技術革新(50年)・建設(20年)・設備投資(約10年)・在 庫投資(約3年)といった視点からサイクルを示す説がいくつかある。他方、アーバン ダイナミズム(都市の誕生・成長・熟成・衰退・滅亡といった現象)をとらえるのに、 地理的、経済的、政治的、文化的システムの差違とかかわりなく一つのサイクルとして 見ることができる、とするオランダのクラッセンの仮説がある。 この説は当初、洋の東西の様々な都市の現象を一般化することはできないとする多くの批判 を浴びたが、1960年代に大都市人口の純減現象のみられた米国の後、ヨーロッパでも大都 市人口の純減現象があらわれたこともあり、現在では評価の声も高い。
クラッセンは、人口の集中化現象と分散化現象を面的な拡がりを持った経済社会活動の発現結果として とらえ、都市間の人口の集中と分散の過程、つまり空間的な循環を都市システムのライフサイク ルとみる。
空間的循環過程(都市間変化)には、4つの段階がある。加速的集中化段階、減速的集 中化段階、加速的分散化段階、減速的分散化段階である。
具体的な事例に適用して数量的に分析するための道具としてROXY指標を用いると、都市がどの段階にある のかを検証することが出来る。このROXY指標値により、都市システムのライフサイクルを波状グ ラフの形又は環状グラフの形で表現することが可能となり、グラフの形態を考察することにより、都市間の人口の集中と分散の過程を視覚的・直感的に理解することも可能となる。


●都市間分析結果の国際比較と政策的インプリケーション
ここに、最近行ったひとつの実証分析結果がある。インドネシア、日本、オーストラリア、スウェーデン、 米国の5カ国の人口時系列データ(各国の人口規模上位約30都市)をもとに、各国で見られる都市システムのライフサイクル過程を波状及び環状グ ラフ時系列であらわしたものである。これにより、各国の都市システムにおける 集中化・分散化過程の段階を相対的に比較することができる。ROXY指標値は、都市システムのライフサイクルで見ると、日本とオースト ラリアは米国に15年遅れ、インドネシアは日本に20年遅れ、スウェーデンは米国と 日本の中間にあることを示している。
このような都市間の人口変動現象があらわすものから、我々は何を学ぶことが出来るか? まず、米国は都市システムが辿るライフサイクル過程の最先端を歩んでいることに照らし、米国の過去の政策において失敗 した都市政策に学ぶことはできないだろうか。もちろん成功例を学ぶこともできるが、失敗 例の記録は極めて価値がある。したがって、今後の政策の選択肢が厳しくなればなるほ ど、失敗例をきちんとドキュメンテートしておく必要がある。 ところで、都市政策者たちにはクラッセンの仮説が正しいとすると、一体何が出来るか?「都市システムに寄せてはかえす空間的循環 過程の大きな基本的うねり」を逃れることはできないが、このうねりが有する「余地」の中で、都市システムをどうオペレートして行くかと言う点に都市政策者達の務めがあり 、腕の見せ所がある。




第19期 都市計画

テーマ/経済からみた都市の盛衰過程
講師/川嶋辰彦(学習院大学経済学部教授)
日時/1997年12月10日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)


川嶋 辰彦 講義目録
■第21期 '99.1.11
Between the Centuries-21世紀への提言
■第20期 '98.6.3
経済から見た都市の衰退過程
■第19期 '97.12.10
都市のライフサイクル

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