インターネットは地方が元気
サイバーフロンティアへ挑戦

月尾嘉男(東京大学工学部教授)

人口の減少や、若年層の価値観の変化、産業の空洞化、さらには期待される新しい産業分野においても日本は世界に遅れをとっており、かつて国際的な調査で1位となったこともある国際競争力は、現在、約50ヵ国中14位まで低下しているという。こうした状況を打開するひとつの方法として、月尾教授は、地方都市のサイバーフロンティアへの進出を促す。地方都市にとってサイバーフロンティアは救世主になりうるのか。

距離、時間、位置に依存しない新世界
情報ネットワークと情報処理システムが一体となった、新しいインフラストラクチャーが創り出す世界、それがサイバーフロンティアである。
サイバーフロンティアは距離・時間・位置にも依存しない新しい世界であり、それがゆえに大都市も地方も対等な競争ができるわけだ。
たとえば、98年には世界中同一料金で利用できる衛生通信が実現する。また、オープン・コンピュータ・ネットワークによって何時間インターネット使っても使用料は同じになるサービスもスタートした。携帯電話などの携帯端末の普及も目ざましく、日本でも2700万台に達した。これはますます増加する傾向にあり、近年中に携帯端末が固定端末を上回るといわれている。携帯端末の普及によって、現在、オフィスで行われている業務の多くが場所を限定しない形で作業ができるようになる。これはとりもなおさず大都市でも地方でも同じ質の仕事ができることを意味する。
既にインターネットの世界では、情報・サービスも商品も全世界対等に供給されている。インターネットにサイバーショップなどを開設してビジネスを始めるチャンスも均等なのだ。サイバーフロンティアは、まさに地方の可能性を広げるものである。

大都市に先駆け、情報基盤整備に着手する地方都市
しかし、大都市と地方とでは情報インフラの整備速度が異なる。非常に変化のスピードの速い現代では、それが大きな障害になる恐れが出てきた。国は、2000年までに県庁所在地、2005年までには10万人都市、2010年には日本全国に大容量の通信回線を張り巡らす計画を立てているが、地方都市のいくつかは、それでは間に合わないとして、自ら情報インフラ整備に乗り出している。
たとえば、オホーツク地域では産業界と地方自治体などが共同で、昨年10月に26市町村を専用回線で繋いだ。プロバイダーのコストも官民共同で負担しているため、住民は都心と同様、3分間10円でインターネットに接続できる。
また、岐阜県大垣市では、県が支援してソフトピアジャパンを整備し、ソフトウエア産業の誘致に力を入れている。大都市に先駆けてオープンコンピュータネットワークを導入したり、県がマルチメディア時代の人材を養成するために情報系の各種学校まで設立したりしている。
岡山県では「インターネットを使うのは県民の権利である」としてCATV回線をアクセスラインにして非常に安くインターネットを利用できるようにしている。
このほか高知県、大分県においても積極的に情報インフラ整備を進めている。

かつてはすべて大都市が優位にあったが、地方が初めて大都市に先行してサイバーフロンティアへ船出したことは極めて象徴的な出来事といえよう。


第18期 情報デザインスクール第2回講義

テーマ/「インターネットは地方が元気」
講師/月尾嘉男(東京大学工学部教授)

日時/1997年5月26日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)