地域活性化のキーポイント
〜空港コミュニティー〜

戸沼幸市(早稲田大学理工学部教授)



民間人が現在のように、飛行機を日常的な移動手段として活用するようになったのは 、1970年代以降のことと言われている。そして昨今、地方の飛行場は様変わりを見せ始めている。地方が国際化に熱心になり、直接海外とつながる「グローカル(ローカ ル+グローバル)な時代」が訪れようとしている。 そこで展開される「空港コミュニティー」。空港という地域の玄関口の果たす役割の重要性について、早稲田大学理工学部教授の戸沼幸市氏の講義を以下にまとめた。


航空機の発達とコミュニティ観の変化
1903年にライト兄弟が空を飛んでから、1世紀を迎えようとする現在、手ぶらで世界各地を行き来することのできる時代になった。日本人は特段にモビリティの高い国民で、学生の卒業旅行を含み、1990年代に入って海外へ渡航する日本人の数は、年 間1千万人を超えている。
歴史の変遷の中で特筆すべきこととして、戦争と航空機産業の発達は切り放せない。 航空機の技術進歩はもとより戦闘機を操縦したパイロットが民間機に移ってきたことなどがある。
また、飛行機に関する用語やルールなどは船のそれを踏襲している。左舷から乗り降りする、パーサー、キャプテン等の呼称がそうである。そして、船の港と街が密接なコ ミュニティを形成してきたように、空港もまた街づくりのコアになりつつある。 1980年以降、空港は世界的にハブ化の傾向が見られるようになった。例えば自国の生産手段の少ない韓国では、金浦空港に3千メートル級の滑走路3本を整備してハブ 化に力を入れ、国際経済との結びつきを強化している。 マスクメロン状に地球を覆う情報ネットワークや交通網によって、地球がひとつのコ ミュニティーとなりつつある21世紀。そこに生きる60億の人間がどうつながりあって生きていくのかを考えなければならない。そうした中で空港の役割は格段に大きくなっている。

空港コミュニティ
社会学には「空港コミュニティー」という言葉はないと言われるが、空港における安全性や信頼性といった瞬間瞬間を管理しケアする空港システムは、一時的ではあるが運命共同体的なコミュニティーを形成する。
そこには、地域による個性や使う人々のスタイルによって様々なレベルの機能がある 。航空機の発着場所という機能だけでなく、ビジネスサポートのためのユーティリティ、地域の人々の集まるショッピングセンター(仙台)、ホテル併設(千歳)、丸一日過 ごしても十分楽しいアミューズメントセンター(シンガポール)等が例として上げられる。

空港とコミュニティ
地方都市では、鉄道から車社会へという流れを象徴して郊外の大型商業施設に人が流れ、駅前商店街はたいてい不振。地球がひとつのコミュニティー化するこれからは、空港が地域コミュニティーの核として活性化する可能性が高い。多くの人が行き来するという経済的なバックボーンあってこその活用となろうが、空港はホスピタリティのある地元の顔になれないだろうか? 羽田などは、跡地の活用も含めて臨空タウンとしての活性化に地元の商工会議所が熱心に取り組もうとしている。 これからの地域社会における活性化のキーポイントとして、空港の果たす役割に注目すべきである。


第18期 環境デザインスクール  第2回講義

日時/1997年5月14日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)
テーマ/「空港コミュニティー」

講師/戸沼幸市(早稲田大学理工学部教授)

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