マルチメディアとアニメーション
「アニメーションの制作の現状と動向」

徳永元嘉(ウオルトディズニーアニメーション ジャパン/エグゼクティブプロデューサー)

日本で制作されるアニメーションのクオリティの高さは、世界でも評価されている。それには、手塚治、宮崎駿、押井守、大友克洋らの名だたるクリエイターを輩出していることだけでなく、制作の現場を支える優秀なアニメーター達の存在が大きいといわれている。
今回は、日本の有数のアニメ制作会社/東京ムービーで十数年に渡って「ルパン三世」を始めとする数々のアニメーション制作を手掛け、1991年にウオルトディズニーアニメーション・ジャパンに入社、ディズニー作品のビデオ制作にあたっている徳永元嘉氏(エグゼクティブプロデューサー)を講師に迎え、浜野保樹氏(放送教育開発センター助教授)のナビゲイトにより、業界の動向についてその見識を伺った。

日本のアニメ業界の現状
現在、ほとんどの作品が原画までは日本で制作され、その後の動画撮影にいたるまでの工程は海外(中国、タイ、フィリピン、ベトナム等)で制作されている。これは、以前に較べてテレビのアニメ制作コストが抑えられたため、乱立した小さな制作会社が安いコストで受注を請負い始めたことに流れを発している。
一方、アニメのキャラクターの活用が出版社やマーチャンダイズを巻き込んだ大きなビジネスになっており、日本ではゲーム会社がアニメ制作会社を傘下に治め、キャラクターごと抑さえるやり方が主流となっている。しかし、後述するように制作にあたる人材の育成やクオリティの維持といった面で、国内では各プロダクションとも模索中といった現状がある。

ウオルトディズニー社の思想と特徴
コストの問題から海外への依存度が高くなっている日本の現状は十数年前のアメリカと同じである。しかし、人を育てるという視点に立ち、ウオルトディズニー社は、10年という年月をかけて、一貫して自社で制作するという流れに変えた。
また、制作にあたってデジタル技術を駆使しているが、それをフィルムに焼き付けて保存する方法をとっている。あくまでもフィルムクオリティにこだわるのは、フィルムならば劣化してもデジタル技術で補正が利くことが実証されているからである。
ウオルトディズニーアニメーション・ジャパンは、これからアメリカで売れるものを考えていきたいと考えている。これまでにも、アメリカ国内での受賞経験等実績を積んで信頼を得ており、仕事の幅が広がってきている。

制作技術の動向と可能性/業界の展望
アニメーションの制作工程は従来から変わらず、日米でも基本的に流れはほぼ同じであるが、今後デジタル技術の導入が進むことにより小人数で制作にあたれるようになり、スピードアップも進むだろう。また、遠隔地(海外も含む)との共同作業が容易・的確に進むようになれば、プロダクションの小人数化と分散立地がさらに進む可能性が高い。
しかし、技術や制作方式だけの問題ではなく、作品のクオリティの維持にかかわる人材という点においては、今や日本主導といった考え方は通用しなくなりつつある。
韓国では、国策としてアニメのデジタル制作に取り組み始めており、学校の専攻への導入やイベントの開催にも力を入れている。ところが日本ではアニメーション専門校を卒業すると、制作の優秀な人材は収入の安定のためゲーム制作会社に流れてしまう。
コンテンツを産み出せる人材が少なくなっている現状や、制作コストが削減されていく中で、アニメーターの育成もままならない状況を考えると、国内における今後の人材教育に問われる課題は大きい。


第17期 情報デザインスクール 第7回講義

テーマ/「マルチメディアとアニメーション」
講師/徳永元嘉(ウオルトディズニーアニメーション ジャパン/エグゼクティブプロデューサー)、浜野保樹(放送教育開発センター/助教授)

日時/1997年2月17日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)

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