混沌の状況を切り開く
「意味付け」からのマネジメント革新 

妹尾堅一郎(産能大学経営情報学部助教授)

産能大学助教授の妹尾堅一郎氏は「不透明な時代のマネジメントに不可欠なのは、事業の意味づけである」と説く。今までのマネジメント論には聞き慣れない「意味付け/ リオリエンテーション」の重要性を明らかにするために、様々なエピソードを紹介するとともに、塾生にも連想ゲーム的質問が次々に投げかけられ、思考回路の柔軟性が試された。

混沌の時代に必要な「リオリエンテーション」
社会・経済・政治が混迷する中で、企業はリストラクチャリング(構造変革)とリエンジニアリング(機能変革)を進めている。しかし、ここにひとつ大事な視点が抜けている。それはリオリエンテーション(意味変革、再方向づけ)である。混迷の状況では 「なんのための事業か、我々はどこを目指しているのか」という意味付けが不可欠であり、構造・機能変革も「事業の意味」が明確になってこそ、効果が上がる。
仕事の仕方においても、混沌の中では従来の日常実務型やトラブルシュート型、調査 分析型のアプローチだけでは「次の一手」は生まれない。混沌状況における創造的アプローチは「探索学習型アプローチ」である。これは、現実に飛び込み、そこから生まれる反応や波紋から正しい解を見つけていくというアプローチである。

ネットワーク型組織とプロデューサー型リーダー
21世紀の企業組織とリーダーシップはどんな形が有効か。すでに、統率型リーダーに率いられたピラミッド型組織から、調整型リーダーによるフラット型組織への転換が 進んでいるが、その次に来るのは、プロデューサーを中心としたネットワーク型組織である。この形はアーティスティックな世界ではいち早く取り入れられており、映画におけるS・スピルバーグやJ・ルーカスなどはその典型である。ビジネスの場合も同じで 、時代の洞察力と構想力に優れたプロデューサー型のリーダーが、最適な人材と資金、 資材を集めてプロジェクトを組み、時代が要請するモノやコトを生み出す組織が成果を上げるだろう。たとえばビル・ゲイツのやり方がそれである。
プロデューサー型リーダーは、プロジェクトメンバーに「理論」と「気分」と「意義 」を示すことによって「合意形成」を実現し、プロジェクトをその状況にもっとも相応しい方向へ推進させる。

意味付けとマネジメント革新
ある大手企業の常務が企画部門からホームページ制作の提案を受けた。彼は、担当者 に「ところで、君たちは何社にアクセスしてどんなコミュニケーションをとったのか」 と聞いたところ、提案者はひとこともなかったという。「インターネットと騒いでいても所詮、こんなものですよ」と苦笑した彼に、「しかし、今時、ホームページも持たない企業に優秀な学生が取れますかね」と言ったところ、彼は絶句し、ホームページ作成を決断した。つまり、彼はホームページの新しい意味を知り、考えを翻したのである。
「意味」は人によって異なる。どれが正しくどれが間違っているということはない。 これらをぶつけ合い、その状況に相応しい意味付けをすることが大切なのである。
たとえば、米国では「品質管理」とは「不良品の排除」と意味付けた。そのため、検品システムを徹底させればさせるほどコストがアップにつながる結果を招いた。しかし 、日本では「品質管理」を「良品を作り込むシステム」と意味付けて工程管理を徹底するなどの努力をしたため、安い良品を提供でき、世界に冠たる品質王国を築いたのである。
このように、事業活動の様々な意味を、その状況にもっとも相応しく濃淡をつけていくことが次世代のマネジメントの重要な役割なのである。


第17期 経営デザインスクール マネジメント研究科第1回講義

テーマ/「意味付けから始めるマネジメント革新 」
講師/妹尾堅一郎(産能大学経営情報学部助教授)

日時/1996年11月8日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)