メディア社会に生きる
求められる技術と能力は?
高橋潤二郎(慶應大学常任理事)


慶応大学常務理事の高橋潤二郎氏は、「情報化とはなにか」、「マネジメントやマーケティングはどう変わるか」、「知の変化と必要なスキルとは?」の3点を柱に、メディア社会を鮮やかに描きだした。以下、講義の一部を紹介する。
「情報化」とは、3つの観点からのとらえ方がある。第1はエコノミストの視点、第2は未来学者の視点、そして第3がエンジニアの視点である。
エンジニアの視点から見た「情報化社会」とは、IC、AVシステム、光ファイバーによってもたらされたコンピュニケーションネットワークが基本的な社会基盤として認めらた社会をいう。かつて社会基盤とは物質の輸送、エネルギーの輸送であったが、来るメディア社会では情報の伝達が重要な社会基盤として加わる。

また、メディア社会とは、「メディア産業」が技術的にも雇用面でも経済波及効果においても先導産業となる社会である。ここでいうメディア産業とは、メディアネットワーク(MN)を支持し、構築する役割を果たす企業群、MNを維持するための企業群、並びに、MNによってデータや情報、知恵を創造し伝達する企業群である。

このように、あらゆる情報がインタラクティブ(双方向)、マルチメディア(多元的メディア)、オンデマンド(即時的)に交換できるようなメディア社会では、企業や大学などあらゆる組織の体制や経営が根本的に変化するだろう。

では、日本の情報化の進捗はどうか。第1段階の「企業化の時代」は1996年で終わり、現在は第2段階の「産業化並びにライフスタイルの大衆化の時代」が進行中である。この段階は2005年まで続き、2005年から2015年までを「体制化の時代」と見ている。ただ、最近の国の施策目標を信じれば第3期が若干早まる可能性が強い。

いずれにせよ、情報化の進展に伴い、多くの根本的な変革が進むだろう。たとえばマーケティング概念が変わり、マス・マーケティングは終焉を迎える。4P(商品、価格、流通、販売促進)についての概念は次のような変化を遂げる。一例を挙げるならば、商品はコンピーュタのように私的付加価値を加えて完成する半成品が増え、その価格を決めるのは買い手になる。流通においても、ネットワークを介して売り手と買い手がダイレクトに結ばれたり、非常に予測できない動きをする中間市場が間に入ったりする。必然的に広告宣伝も質的に変化する。従来のマスメディア中心の一方的情報伝達から、ネットワークを介して、ユーザーといかに円滑なコンタクツとコミュニケーションを図るかが重要な企業の販売促進戦略になっていくだろう。

また、メディア社会では、時間・空間感覚、遠近感が従来とまったく変わり、「速度」は非常に重要な要素になる。企業経営にとって「クイックレスポンス」と「クイックディシジョン」は不可欠になろう。その中で、情報と物流の速度ギャップをどう埋めていくかが企業経営の課題のひとつになるものと思う。


こうしたメディア社会では5つの能力が求められる。

1.活字だけでなくAV(オーディオ・ビジュアル)を含めた高度な理解力と識字能力
2.機械のオペレーション能力
3.ネットワーク上から必要なデータを取り出し、独自のデータファイルを作成する検索・編纂能力、
4.自分の意見を電子メディア上で、文字、音声、ビジュアルに統合して伝える総合的な創造力と表現力
5.グローバル社会で交流し、コラボレーションする能力


第17期共通講義 第3回講義

テーマ/メディア社会に生きる
講師/高橋潤二郎・慶応義塾大学常任理事

日時/1997年1月24日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)