住民によるまちづくり
〜地域遺伝子探し

後藤春彦(早稲田大学理工学部建築学科助教授)
梶島邦江(聖徳大学短期大学部生活文化学科助教授)




 今回の講師の一人である後藤春彦氏(早稲田大学理工学部建築学科助教授)は、台湾で「まちづくり」の訳語に出会ったことに感銘を受けている。「社区総体営造」。社区とは社会の単位、つまりコミュニティ、営造とは、経営・創造。そして総体とは、総合化、体系化のための方法論で、「まちづくり」とは一部の人のためではなく、そこに暮らす人々のものであるということが表れているという。
 ここでは、「まちづくり」の座標軸と、後藤氏が参画した熊本のある町のまちづくりワークショップについて語っていただく。
 また、梶島邦江氏(聖徳大学短期大学部生活文化学科助教授)からは「子供とまちづくり」という視点で新潟県の事例を紹介いただいた。

地域遺伝子を探す〜まちづくりのエネルギー(後藤春彦氏)
 まちづくりのエネルギーとして必要なのは、「精神的自立性」「持続的循環性」「自力的内発性」である。
 まちづくりというテーマにおいて、自分はどこにいるのか、まちとしてはどう戦略的に動いていくのかを思い描くために、地域を生命体としてとらえ、縄文時代から受け継がれてきた生活の知恵や作法を後世に伝えてきた、多様性のある「地域遺伝子」(まちづくりの設計図)というバトンリレーのバトンをまちづくりの中で探していくことが重要である。
 具体的には、そのまちの「資源(自然、人工、人間)」を「評価(本能、慣習、論理)」し、「主題(風土性、社会性、歴史性)」をみつけ、「計画(保存・保全、育成・修復、創造・開発)」につなげるプロセスをテトラモデルと呼ぶ三角錐の座標軸にあてはめながら、事例を考えている。

まちづくりワークショップ〜
熊本県合志町すずかけ台住宅団地の例

まちづくりワークショップは現在各地で行われおり、様々な手法が導き出されている。こうしたワークショップの重要性というのは、参加者の知恵や経験をいかに創造的に活かせるかということにある。
 ここで取り上げたすずかけ台団地の例では、まず参加者達が自分達のまちを歩き、様々な場所に関する情報を地図に落としていく。次に「まちづくり人生ゲーム」と称し、人生の節目を考えながら、どうすればまちづくりの中で解決できるかをディスカッションする。このプロセスにより、福祉や教育といったソフトにおける課題が見えてくる。こうして抽出した課題を克服するための計画を立て、投票により評価しあう。そしてこの事例の場合、町役場の議場で模擬議会という形でワークショップの成果を外に対して広めた。結果、住民の計画策定力は傍聴した町長・議員や職員の評価を得たうえ、住む人々が自らお金をかけないで取り組むことで実現した計画も幾つか出てきた。
 一方、ワークショップにも課題はある。一過性のイベントで終わらないか、参加者による排除の論理が働かないか、イニシャルコストと成果物のレベルのバランスはとれているか、行政の仕事を放棄させることに繋がらないか等である。



子供とまちづくり〜新潟県石打の例(梶島邦江氏)
 日本ではまだ数少ないが、世界的には子供がまちづくりに参加する動きが出てきた。新潟県石打でそうした試みを行っている。都会では享受できない自然という資源があるにも係わらず、実は子供達は自然に触れていないことを知った大人達がまず驚いたという。高齢者がひとり付き添って子供たちが夜のまちを歩くウオークラリーなどの試みを通じて、次のようなことが見えてきた。

1.「未来のまちづくり人」としての子供を育てていく意義
2.子供を通じて未来のまちを今つくっていると大人が感じれるということの大切さ
3.子供のまちづくりの他の年代に対する強い浸透力
4.子供が何かしていると老人や親たちが自然な形で加わってくるという吸引力
5.そして最後に、大人と子供が共に経験することによって、双方向に刺激しあい、教えあうことの効果、重要性

 このことにより、年長者が一方向に教え込むことで起こる画一化された伝達ではなく、そこには多様性を持った新しい知恵が生まれ、まさに後藤氏のいうところの生命体としての地域遺伝子として伝わっていくものになるのではないかと考えている。このように、まちづくりにとって子供は大変魅力的な存在である。


第18期 環境デザインスクール  第5回講義

テーマ/「市民参加型まちづくり」
講師/後藤春彦(早稲田大学理工学部建築学科助教授)
講師/梶島邦江(聖徳大学短期大学部生活文化学科助教授)   

日時/1997年7月9日
会場/アカデミーヒルズ(アーク森ビル36階)

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